ツーリング先などでの突然の雨に備えておきたいのが『レインウェア』ですが、他のライディングギアと同様に“バイク用”を選んだ方がいい理由をご存知ですか?
日本の年間降水量は十数年前と比べると約2倍にも増えている⁉︎
ライダーにとってちょっと憂鬱になるのが、雨が降りやすくなる梅雨時期の季節。
次のツーリングを楽しみにしつつ週間天気予報を見てみると、カレンダーは連日のように曇りや雨マークだらけで、予定を立てるのも迷ってしまうこともありますよね……。
特に近年の日本は、梅雨時期に限らず一年を通して雨が降りやすい日が多くなっているような気もします。
一説には、地球温暖化の影響で海面温度や地球全体の気温が上昇し、昔よりも大気中に含まれる水蒸気量が増加しているためと言われています。

気象庁 公式ホームページより引用 https://www.jma.go.jp/jma/menu/menureport.html
また雨季に長期間の雨をもたらす“梅雨前線”の位置も、かつてより北上傾向にあり「日本列島が“亜熱帯化”してきている」とも言われています。
その1つのエビデンスとして、上の写真は気象庁が発表している「年間ごとの大雨発生回数」をグラフ化したものを見てみましょう。1975年の統計開始から2025年までで、1時間の降水量50mm以上の大雨が降った回数を統計した結果、過去50年間で徐々に右肩上がりになっているのが見てとれます。
もちろん雨や天候の変化は自然現状なので、年度や地域によってもバラつきはありますが、1980年頃から比較して激しい雨が降る回数が「おおむね2倍程度に増加してきている」という結果も発表されているんです。
広範囲を移動するツーリング時はいつ雨に降られてもおかしくない⁉︎
日本列島が昔よりも雨が降りやすくなってきているのは統計データからもわかりましたが、その分、かつてよりも急速に技術の発展が進んだことで、天候の移り変わりや雨の予測が立てやすくなっている事もあります。
気象衛星の“アメダス”や“ひまわり”などの観測データによる各地の天気予報の精度や正確さが向上しているのも確かです。さらにピンポイントで数分先までの雨雲の動きなども予測できる便利な「天気アプリ」なども登場したことで、雨雲をなるべく避けてツーリングを楽しむ、ということもスマホひとつでリアルタイムで確認できるようになりました。
しかしながら、天気の移り変わりは自然現象なので絶対に確証がもてる方法は残念ながらありません。
天気予報を事前にしっかり確認してツーリングに出発しても、突発的に発生するゲリラ豪雨の予測がつかない場合もありますし、多県をまたぐような広範囲を移動するツーリングや、山岳道路などの高低差のあるエリアを走る場合は、局地的に雨に降られてしまうケースもあります。
特に近年頻発するゲリラ豪雨は、バイクで移動中に短時間降られただけでも全身ビショ濡れになってしまうほどの大雨が降ることも……。
そのような場合に備えて、ライダーは“いつ雨に降られても対応できるように”ツーリングでは天気予報に違わずレインウェアを持って出掛けるようにするのが理想的です。
レインウェアも“バイク用”を選ぶべき?専用品ならではの5つの機能性
バイクツーリングを趣味とするライダーなら、一着は持っておきたい「レインウェア」ですが、やはり他のライディングギア同様に「バイク専用のレインウェア」を選ぶのをおすすめします。
近年は一般的なレインウェアでも高性能で低価格なものが発売されていますし、使用頻度も他のライディングギアと比べれば低いので「わざわざバイク用を選ばなくてもいいのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、バイク専用のレインウェアはライダーにとって5つの利点があるんです。
①ライディングウェアの上から着ることを前提としたサイズ感
一般的な雨具とバイク専用のレインウェアの違いの一つに、まず“着用サイズ感”の違いがあります。
メーカーや種類にもよりますが、モーターサイクル用のレインウェアは、プロテクターも装備されたライディングウェアの上から着ることを前提に作られていますので、一般的なレインウェアに比べると採寸もやや大きめに作られているものが多いです。
例えば、ライディングジャケットがLサイズを着ている方は、レインウェアもLサイズを選べば丁度いいサイズで着られるように、ある程度の余裕を含んでサイジングされているものがほとんどです。
ですから、本来の適したサイズに合わせれば、ウェアの上からでもゆとりを持って着用でき、手や足の裾などが長すぎてしまうこともありません。
そして、レインパンツは急な雨でも素早く着られるように、ライディングブーツを脱がなくてもそのまま履けるようにファスナー開閉やベルクロ着脱ができるようになっているのが一般的です。
また、種類によっては走行風によるバタつきを軽減してくれるアジャスターやベルクロ機能が備わっているレインウェアもあります。
②持ち運びを考慮したコンパクト設計
バイク用のレインウェアは、基本的に“持ち運びすることを想定”しているので、コンパクトに収納できるようになっているものが多いです。
例えば、Hondaでラインアップされている「3レイヤーレインスーツ」は、収納袋に入れると写真のようにかなり小さくなります。体感的には500mlのペットボトルくらいの大きさになり、非常にコンパクトに作られています。
バイクツーリングは出発前から雨が降っている場合などを除き、基本的にレインウェアはツーリングバッグなどに入れて持ち運び、雨が降ったら使うものなので、収納袋に入れた状態のサイズは小さい方が理想です。
これは筆者の経験談ですが、収納サイズが大きいと荷物としてカサ張るので「今日は持って行かなくてもいいか……」とだんだんレインウェアを持ち運ばなくなることもありました。
レインウェアは頻繁に使うものではないからこそ、持ち運ぶ時のコンパクトさが重要なのです。
③長時間の雨の移動でも快適に着られる高い防水性能と透湿性能
そして3つ目は、レインウェアの一番肝心な部分でもある「防水性能」と「透湿性能」です。
”防水性能”は別名『耐水圧(たいすいあつ)』とも呼ばれ、水濡れに対する生地の耐水性能を表す数値を、mm/㎠、もしくはkPa(キロパスカル)の単位で表され、数値が高いほど水の浸透を防げます。
『透湿性(とうしつせい)』とは、レインウェアの内側から外側へ水分を逃してくれる値で、数値が高ければ内部でかいた汗や蒸れを上手に逃してくれるので快適に着用できることができます。
もちろん、スペック的な数値以外にもレイヤー構造や生地そのものの耐久性などもあるので、一概には言えませんが、2つの数値が高いのが理想的なのは確かです。
例えば、Hondaでラインアップされている「3レイヤーレインスーツ」は、耐水圧:20,000mm/cm2、透湿性:8,000g/m2/24hで、数値的にも高く、かなり安心感のあるレインウェアと言えます。
バイク専用のレインウェアは雨が降っている間は基本的にずっと着用していることになるので、この「防水性能」と「透湿性能」が高いことが望ましく、長時間でも快適に着ていられるための重要な機能なのです。
④ライディングの動きを妨げない立体裁断と快適性能
当然ながら、バイク用のレインウェアは“バイクに跨って着用”するものなので、ライディングポジションをとった時に生地が突っ張ってしまったり、身体の動きを妨げるほど窮屈な着心地になってしまってはいけません。
種類にもよりますが、バイク用のレインウェアはライディングの動きを妨げないように、あらかじめ立体裁断の3D構造になっていたり、ハンドルを握る腕や、足を曲げる部分ではゆとりを持たせているものもあります。
また、近年のレインウェアには、昔では考えられないほど伸縮性のあるナイロン素材が開発され、身体の動きに合わせて自由に伸び縮みしてくれるものまで登場しています。
レインウェアは他のライディングギアと比べて着る機会が少ないかもしれませんが、予めバイク用を選んでおくことで、いざ雨に降られた時の快適性や安全性が“後から分かる”ものなのです。
⑤リフレクターやアジャスターなどの安全性や機能性
最後の5つ目は、バイク用レインウェアに備わっている、リフレクターやアジャスターなどの「機能面」です。
種類にもよりますが、バイク用のレインウェアには走行風によるバタつきを抑えてフィット感を高めてくれるアジャスター機能が備わっているのが多いです。
特に雨が降っている高速道路を走っている時は、一般道よりも強い走行風を浴びていので、レインウェアがバタつき、高い風圧を受けていることに加えて、中に着たジャケットやバイクの車体などと擦れ合ったりして破損しやすくなります。
バイク専用のアジャスター機能が備わっていることで、フィット感を自在に調整できるので、走行風を受けても快適に着用することができます。
また、雨が降っている時は日中でも暗くなくことが多いので、被視認性を高めるために「リフレクター」が備わっているレインウェアが理想です。
後続車のヘッドライトがリフレクターに反射することで、ツーリングの帰りに暗い夜道を走ることになっても安全性が向上します。
レインウェアはツーリングライダーにとって一年中使える必需品
いかがでしたか?
バイクツーリングで予期せぬ雨に降られた場合は、基本的にライダーはどこかで雨宿りするか、レインウェアを着て走るしか方法がないのが現状です。
レインウェアは雨が降らなければ、たまにしか使わないものかもしれませんが、ツーリングやバイクライフを快適にするためには必須のアイテム。「レインウェアは濡れなければなんでもいいかなぁ……」と思っているライダーにこそ、バイク用のものを着用してみることをおすすめします。
レインウェアは「梅雨時期に限らず1年中使うもの」と思って、この機会に是非お気に入りのレイングッズを見つけてみてくださいね!
【文:岩瀬孝昌(外部ライター)】