キャンプツーリングやロングツーリングなどでバイクにたくさんの荷物を積載する場合、どのくらいの大きさや重さのものなら大丈夫なのでしょうか?
今回はバイクの「積載制限」について解説します!
バイクの荷物積載は『積めるだけ積んでOKではない』
バイクでツーリングを楽しむライダーには、たくさんの荷物を積載して走っている人を見かけますよね。
特に、ロングツーリングやキャンプツーリングなどでは、たくさんの荷物をバイクに積載することが多くなるかと思います。
そんな時にふと「バイクってどれくらい荷物を積んで走っても大丈夫なの?」というギモンが思い浮かんだことがあるかもしれません。
ツーリングに持っていきたい荷物の量は人それぞれ異なるとは思いますが、クルマのようにたくさんの荷物を載せられるスペースが備わっていないバイクは、ツーリングバッグやパニアケースなどを使って積載するか、ドローコードなどで荷物を括りつけて運ぶことになると思います。
しかしながら、バイクの荷物は積めるだけ積んでもOKと言うわけではなく、道路交通法で定められた「荷物の積載制限」と言うものがあります。
そこで今回は、バイクに荷物を積む時の「注意点」や「過積載」について解説します。
バイクの荷物積載には「長さ」「高さ」「重さ」の制限がある
そもそもバイクは、車種やカテゴリーごとにデザインも大きく違いますし、荷物を積む場所の形状もかなり異なります。
同じ荷物の大きさや量だったとしても、車種によって積みやすいデザイン形状になっていたり、積載するのにちょっと工夫が必要になる場合もあるので「こうやって積載するのが正解!」という明確な方法がそもそも定まっていません。
だからと言って、なんとなく曖昧に「落ちなければ大丈夫でしょ⁉︎」とたくさんの荷物を積んでしまうと、落下の原因や落下物による二次被害にも繋がりますから注意が必要です。
それでは、バイクの車体にはどれくらいの大きさの荷物を積載することができるか、まずは道路交通法に記載されている「積載物の制限」を見てみましょう。
【積載物は、次に掲げる制限を超えることとなるような方法で積載しないこと】
- 長さ 自動車の長さにその長さの十分の一の長さを加えたもの(大型自動二輪車及び普通自動二輪車にあつては、その乗車装置又は積載装置の長さに〇・三メートルを加えたもの)
- 幅 自動車の幅(大型自動二輪車及び普通自動二輪車にあつては、その乗車装置又は積載装置の幅に〇・三メートルを加えたもの)
- 高さ 三・八メートル(大型自動二輪車、普通自動二輪車及び小型特殊自動車にあつては二メートル、三輪の普通自動車並びにその他の普通自動車で車体及び原動機の大きさを基準として内閣府令で定めるものにあつては二・五メートル、その他の自動車で公安委員会が道路又は交通の状況により支障がないと認めて定めるものにあつては三・八メートル以上四・一メートルを超えない範囲内において公安委員会が定める高さ)からその自動車の積載をする場所の高さを減じたもの
- 自動車の車体の前後から自動車の長さの十分の一の長さ(大型自動二輪車及び普通自動二輪車にあつては、その乗車装置又は積載装置の前後から〇・三メートル)を超えてはみ出さないこと。
- 自動車の車体の左右からはみ出さないこと(大型自動二輪車及び普通自動二輪車にあつては、その乗車装置又は積載装置の左右から〇・一五メートルを超えてはみ出さないこと。)
引用:道路交通法施行令第二十二条
……と、こんな感じで道路交通法の「施行令 第二十二条」にこのように定義されています。
あまり聞き慣れない「乗車装置」や「積載装置」などの用語が出てきますし、このままだとちょっとわかりにくいですよね。
乗車装置とは?
そもそもバイクの“乗車装置”とは、法律の条文によると「シート」や「ステップ」のこと、とされています。
ライダーやパッセンジャーが乗車するための装置ということでステップまで含まれていますが、今回説明する荷物の積載に関しては「リアフェンダーまわりの形状やリアシート全体」と考えておいてください。
積載装置とは?
もうひとつの“積載装置”とは、主に「荷台(キャリア)」のことを指しています。
リアキャリアなどが装備されていない車種でも、パニアケースやトップケース、サドルバッグなどのオプションパーツを取り付けたものは、ステーも含めて「積載装置」としてみなして大丈夫です。
また、道路運送車両の保安基準では「物品積載装置は、堅ろうで、かつ、安全、確実に物品を積載できる構造であること」と定義されているため、しっかりと頑丈で、物品の落下の心配がなく積載できるものであれば、その形状や種類を問わず積載装置と考えて問題なさそうです。
こちらは、Honda「CB650R(積載装置が装備されていないノーマル状態)」の乗車装置から積載可能な寸法を、道路交通法に明記されている「長さ」「幅」「高さ」の制限からイメージ化してみた写真です。
- 積載物の長さは乗車装置または積載装置からプラス30cmまで
- 積載物の幅は乗車装置または積載装置からプラス30cmまで(前後30cm、左右15cmを超えないこと)
- 積載物の高さは積載した時に地上から2mまで
- 積載物の最大重量は60㎏まで(50cc原付一種は30kgまで)
これらの積載制限などを守らずに公道を走行すると「積載物大きさ制限超過違反」や「乗車積載方法違反」などの道路交通法違反になってしまいますので注意が必要です。
また、バイクの荷物の積載制限には、50〜125ccまでの原付二種、250〜400ccまでの軽&普通二輪、400cc以上の大型バイクでは全て同じ積載制限が適応されます。
50cc以下の原付一種と、それ以上の排気量で若干の違いがありますが、異なるのは荷物の重さ制限だけで、50cc以下は30kgまで、それ以上の排気量は60kgまでとされています。
特に横幅に関しては、積載物が乗車装置や積載装置からはみ出してもよい幅が30cmと決まっていますが、積載方法を見ると「左右15cmを超えない事」となっています。ただし、積載物の幅のはみ出しが両側合計30cm以内に収まっていても、例えばキャリアから左5cm、右25cmオーバーのように偏って積んでいたらNGと言う決まりになっています。
「……あれ?思っていた以上に運べる荷物のサイズが小さいなぁ……」と思った方も多いかもしれませんが、ご安心ください。
ちょっとわかりにくいのですが、シートバックやパニアケースなどを追加装着すれば、これらは「積載装置(物品積載装置)」とみなされるということ。先のイメージ図で示した寸法はバッグやケースそのものの大きさを指しているワケではありません。つまり、シートバックやパニアケース(サイドバッグなども含む)などを何も装着しない状態で荷物を積載すると、この寸法までの制限が適応されると言うことになります。
純正オプションパーツや各メーカーのツーリングバッグでも、車体から片側15cm以上の幅があるサイドバッグはたくさん出ています。しかし、これらは積載物ではなく積載装置と考えて問題ないので、正規品として市販されているツーリングバッグやパニアケースなら安心して積載することができます。
また、純正で大型キャリアなどが備わっている車種(例:CT125・ハンターカブ)は、積載装置となるリアキャリアから計った数値の距離までOKになるので、キャリアなどが装着されていない車種に比べて、より大きな荷物が積載可能になります。
ちなみに、カスタムでオプションパーツなどを装着し、バイクのサイズが一定範囲を超えると、本来であれば「構造変更」という手続きが必要になるのですが、パニアケースやサイドバック、トップケースなどは「車体まわりや手荷物を運搬するための部品」に該当する『指定部品』になります。
この“指定部品”に該当するものは、装着時の車体の「長さ」「幅」「高さ」「重量」などが一定範囲の基準値以上に増加しても、構造変更手続きは不要であり、車検が必要な排気量モデルでも問題なくそのまま検査を通過することができます。
※車体のフレームなどに溶接やリベットなどで「恒久的な取付け方法を行なった場合」は構造変更手続きが必要になります。
荷物の多いキャンプツーリングは車種に合ったシートバッグやパニアケースを
リアキャリアなどの積載装置が装着されていないバイクの場合でも、シートバッグやサイドバッグなどが「積載装置」扱いとなりますから、特に荷物の多いキャンプツーリングではこれらの「物品積載装置」の装着をおすすめします。
当然ですが、Honda純正アクセサリーパーツとしてラインアップされているリアキャリアやパニアケースなどの積載装置は、メーカーの厳しいテストや法的な基準もクリアしているので安心です。荷物の積みすぎで「うっかり過積載」をすることがありません。
いかがでしたか?
バイクはクルマほどたくさんの荷物を運べない乗り物ですが、自由にどこへでも出掛けられる気軽さや、走る楽しさが詰まった乗り物です。
たくさんの荷物の積載が必要になるキャンプツーリングやロングツーリングでは、過積載に注意しつつ、自分に必要な荷物を吟味して、楽しいバイク旅に出掛けてくださいね!
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【文:岩瀬孝昌(外部ライター)】