HondaGO BIKE LAB

伊藤真一のロングラン研究所 X-ADV 編

前回に続き、ゲストに元MotoGPライダーの中野真矢さんをお迎え!
今回は伊藤さんがぜひ中野さんに乗って、評価してもらいたいとお勧めするX-ADVを取り上げます。

はたして中野さんは、どんな感想をくれるのでしょうか?

最初期のDCTは正直好みでは…と感じていた中野さん。
今回試乗したX-ADVのDCTの進化に大満足した理由とは?

伊藤真一(いとうしんいち):1966年、宮城県生まれ。88年ジュニアから国際A級に昇格と同時にHRCワークスチームに抜擢される。以降、WGP500クラスの参戦や、全日本ロードレース選手権、鈴鹿8耐で長年活躍。2024年も監督として「Astemo HondaDreamSIRacing」を率いてJSB1000クラス、ST1000クラスなどに参戦! 当研究所の主席研究員。中野真矢(なかのしんや):1977年、千葉県生まれ。97年にヤマハファクトリーライダーとなり、98年に全日本GP250㏄クラスを制覇。99年からは世界GPフル参戦を開始。引退の前年の08年より、アパレルほか上質なバイクライフを提案する「56design」を主宰。また12年からはレーシングチーム、56RACINGの活動をスタートさせている。

伊藤:中野さんにX-ADVを乗ってもらいたいと考えた理由ですが、自分はこのモデルはとても出来が良いと評価しているので、中野さんはどういう視点で、どう評価してくれるのか、素直に聞いてみたいと思いました。

中野:乗ったことなかったので、今回の試乗を楽しみにしていました。ジャンル的にはかなりユニークなモデルですが、変速機はDCTのみの設定なんですね!

伊藤:エンジンや車体は、NC系のプラットフォームを使ってます。DCTを採用してるモデル、中野さんは好きですか?

中野:DCT搭載車は初期のNC系から、結構いろんな機種に乗ってますよ。正直、最初期のDCTはあまり好みではありませんでした。イメージとは違うギアを選んでいる感じ…ここは4速じゃなくて2速だろ! みたいな…。でも今回X-ADVを乗ってみて改めて思ったのですが、最初期のDCTに比べると今のDCTは制御が良くなってますね。ライダーのイメージどおりというか、ライダーをフォローしてくれる感じでシフトチェンジしてくれます。すごい進化だと思いました。

伊藤:DCT仕様とMT仕様が両方用意されている場合、自分はMTを選びたい方なんですが、X-ADVにもしもMT仕様があったとしても、多分選ばないんじゃないかなと思うほどX-ADVのDCTの出来は良いですね。4つのライディングモードが選べますが、どのモードのシフトスケジュールも非常に適切で、違和感なく走りを楽しめます。

小径ホイールのネガティブ面を感じさせることのない、
X-ADVの高度にまとまったハンドリングの魅力とは?

伊藤:ライディングモードはすべて試しました?

中野:はい、いろいろ変えて試しましたが、基本的にはスタンダードを選べばOKという印象でした。

伊藤:自分はスポーツモードの活き活きしたフィーリングも好きですね。中野さん結構良いペースで、かなり寝かせてコーナーを走らせてましたね。

中野:足を前に出すスクーター的なライディングポジションですが、思いのほかワインディングで走りを楽しめるモデルですね。今日は寒くてタイヤの状態が気になるコンディションでしたが、タイヤが温まると気持ち良くコーナーを走れました。エンジンも低中速トルクがあるので、立ち上がり加速がとても良いです。そしてツインの鼓動感も、ちゃんとあります。パワーデリバリーはスクーター的な穏やかさを想像していたのですが、この鼓動感があるところがX-ADVの魅力ですね。

伊藤:同型エンジンのNC750系よりも、X-ADVの方が鼓動感がありますね。アフリカツインの小型版みたいなフィーリングです。

中野:ホイールが小径ですが、走らせていてあまり小径であることを意識させないですね。

伊藤:ホイールが小径になったことで、車体の印象が重心的に合っている気がします。リアのホイールトラベル量と、シート下のトランク容量をともに確保するための小径ホイールですが、舗装路よりグリップが落ちるオフロードを走らせても、ホイールが小径であることのネガを感じさせない。

中野:シート下のトランク容量は、どれくらいあるのですか?

伊藤:22L容量で、フルフェイスヘルメットが入りますね。

中野:それは大きいですね! スクーター的なユーティリティ性の高さもあるので、旅に使うのも良いですね。トップケースを装着すれば、最高のツーリング用マシンになりそう。

伊藤:日本一周旅行に使うにも良いかもしれない。X-ADVは最初に試乗したとき、乗った瞬間からこれは良い! と思った1台でしたね。NC系のプラットフォームを使ってますが、X-ADV専用設計かと思うくらい低重心な車体のバランスが良いです。自分はオフロードの専門家ではないので、そういう感想になるのかもしれないですけど、オフロードを走らせているときはNC750Xやトランザルプよりも、X-ADVの方が楽しいくらいです。コンセプトがユニークだから、スタイリングの奇抜さを狙ったモデルと思われがちかと思いますが、走りの品質についても真面目に作り込まれているモデルです。確かにフロントマスクの顔つきやスタイリングが個性的なので、乗る人を限定しているところはあるでしょうね。

中野:でも食わず嫌いをせずに乗ってみれば、その良さをわかってもらえると思います。びっくりするくらい、スポーツモデルとしてのパッケージが良いです。乗ってもらわないと、言っていることを信じてもらえないかもしれませんが。良い意味で、試乗前に抱いていたイメージを裏切られた、という感じです。スクーター的なイージーライディングもできて、しっかりスポーティな走りも楽しめる。質感も良いし、高級感もあって大人の方にぴったりなモデルだと思いました。ライディングモードを選べて、ユーザーモードで好みの設定ができたりと、飽きがこないモデルですね。ホイールはキャストにしても性能的には何の問題もないでしょうが、アドベンチャーらしさを向上させるためにチューブレスのスポークホイールを採用している。こういう遊び心というかこだわりは、趣味のバイク作りには非常に大事なことですよね。今回は地元の千葉を半日ほど走りましたけど、もっと長い距離、もっと長い時間、もっといろんなシチュエーションの道を走らせてみたいと思いました。走り足りない、という気分です(笑)。

伊藤:じつはX-ADVを地元の後輩に強烈に勧めて、1台購入させましたよ。自分にも1台欲しいモデルなのですが、今はチーム運営などの仕事が忙しいので、今の自分にはX-ADVのポテンシャルをフルに使って遊ぶ時間が作れないんです…。そのことがとても残念です(苦笑)。自分だけの思い込みではなく、中野さんもX-ADVを高く評価してくれたことがとても嬉しいです。

【特別対談】伊藤真一×中野真矢

優等生的と評されることも多いホンダのバイク作りですが、じつは、かつてない製品作りに果敢にトライする冒険心を持った型破りなところがホンダの魅力だったりするのです。

新分野を開拓する、ホンダの「自動化」へのチャレンジ

中野:今回試乗したX-ADVにも採用されているDCTですが、2輪の分野で精力的にDCTに取り組んでいるのはホンダくらいですよね? 商品性が高いかどうかわからないし、売れるか売れないかわからない新ジャンルに、挑戦するのはとてもホンダらしいなと思いました。

伊藤:2010年のVFR1200Fが世界初採用だったけど、それから10年以上経ちました。今日のDCTの進化は素晴らしいです。センサー技術や制御技術を磨き上げることで、違和感のないフィーリングを実現している。そこまで随分時間かかったと思うかどうかは、人それぞれでしょうけど…。

中野:最適なギアを考えて選んで、人が操作することこそがバイクの楽しさという考えもありますが、DCTのようにお任せで気ままに走りを楽しめるというのもアリだと思います。初期のころは思ったように減速しないので、スーッと空走して怖く感じる場面もありましたが、現在のDCTではそういうことはないですね。

伊藤:これからホンダはクラッチを自動制御化した、E-Clutchを採用したモデルを市場に投入しますけど、これもどのような評価を受けるのか注目しています。クラッチとミッションの機構は従来のものと同じなので、高価になってしまうDCTよりも、幅広い価格帯の製品に展開することが可能でしょう。

中野:E-Clutchはライダーによるレバー操作でも、制御任せでも走行できるというところが良いですね。積極的に自分で操作したい人にも、なるべく操作の手間を省きたい人にも、どちらの希望にも合うわけですから。

伊藤:自分はE-Clutchの開発には関わっていませんが、だいぶ前にテストしている場に居合わせたことがあり、ちょっとだけE-Clutch試作車に乗せてもらったことがあります。開発途中のものでしたが、非常に出来は良かったですよ。

中野:昨秋のEICMAでCB650RとCBR650RのE-Clutch採用モデルが公開されましたが、どんな使用感なのか早く試してみたいですね! バイクの楽しさにはいろいろな種類ありますが、新技術に触れることにはいつも、格別な喜びがありますから。

PHOTO:南 孝幸 まとめ:宮﨑 健太郎
*当記事は月刊『オートバイ』(2024年4月号)の内容を編集・再構成したものです。

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