XL750 TRANSALPは本格的アドベンチャースタイルが特徴的なバイクです。だからオフロード志向が強いバイクだと思われている方もいらっしゃるかもしれません。
でも実はオンロードを走ったときの楽しさが格別。
今回はそんなXL750 TRANSALPの素晴らしさを知っていただくため、ベテランライダーにワインディングなどを含めたオンロードを走っていただくことにしました。
目指したのはデュアルパーパス
XL750 TRANSALPはホンダのデュアルパーパスモデルXLの名前を受け継いでいることからも分かるように、オンロードでも高い性能を発揮していて、なおかつオフロードを走る走破性もあわせ持っているバイクです。
フレームがオンロードバイクによく採用されるダイヤモンドタイプになっているのも、ハンドリングや軽さを重視しているからです。
そんな車体にフロント21インチ、リア18インチのタイヤを装着して、しなやかな動きのサスペンションを組み合わせた結果、ロードスポーツとはまったく違った楽しさが生まれています。
バイクの楽しさを知り尽くしたベテラン
谷さんは49歳です。
20歳で大型2輪免許を取得し、以来オン、オフ問わず様々なバイクライフを楽しんできました。
レースにも積極的に参加していて、最近ではアマチュアレースでクラス優勝を果たしたという腕前の持ち主。
そんな谷さん、XL750 TRANSALPは今回が初体験。
「実車を見てみるとアフリカツインほど本気のオフローダーという感じではないですね。ストリート向きのバイクだという印象を受けました。1980年代のテイストが漂うカラーリングもいいですね。全体的にシャープでとてもかっこいいバイクだと思います。」
と第一印象を語ってくれました。
車体は大きく見えたものの足つきが良いとのコメントも。
「173cm 58kg の自分でも足がべったり着くことに驚きました。ハンドル高さもちょうど良いから長距離ツーリングも疲れなそうな感じです。」
乗っていて楽しくなるエンジン
興味津々だったのは270度クランクを採用した2気筒エンジンです。
「下からトルクがありますね。低回転だとギクシャクしてしまうかと思ったら、回転を落としてもすごくスムーズで扱いやすい。エンジンの特性もあるんだろうけど電子制御スロットルのマネージメントとかが緻密にされているんでしょうね。」
トランザルプにはスポーツ、スタンダード、レイン、グラベル、ユーザーという5つのライディングモードがありますが、今回はワインディング中心の試乗ということでスポーツモードのみ。
移動中もスポーツモードのままでしたが、扱いにくさなどはまったく感じなかったということでした。
谷さんはしばらくの間、低中速だけ使って走っていました。
それでも十分すぎるくらい軽快に走ることができたからです。
でもせっかくだから回してみようとスロットルを大きく開けたら、今までとは別な楽しさが感じられました。
「7,000回転から上は気持ちいいですね。シャープな感じで排気音もエキサイティング。自分が知っているツインとはまったく別物です。凄いエンジンですね」
クイックシフターは今回が初体験。
「初めはクラッチを握ってしまっていたんですが、操作方法を教えていただいたあとはシフターをフル活用していました。今回はタイトなコーナーの連続しているワインディングも走ったんですけど、こういう場所はシフトチェンジが忙しいからクイックシフターはほんとうにありがたいです。これから自分が乗るバイクすべてに装着したいくらいです。」
ハンドリングの素晴らしさに感動
エンジンに関してはべた褒めだったわけですが、もっと楽しかったのはハンドリングでした。
アドベンチャーバイク的なルックスからは想像もできないほどワインディングが楽しいバイクだったのです。
「すごく素直なハンドリングで、難しい操作をしなくても行きたい方向に自然に曲がっていくようなバイクでした。17インチのバイクとフィーリングが違って、バンクさせるのが気持ちいい。21インチフロントタイヤのおかげなんでしょうね。」
ヒラヒラとした軽快感はオフロードバイク的なのですが、トランザルプはオンロードを考えた車体になっているのがポイント。
「サスはよく動くけど余分な動きがありませんね。ブレーキが凄くよく効くのに、フロントフォークがしっかり踏ん張って余計なノーズダイブもしないから、安心してコーナーの奥まで突っ込んでいくことができます。」
クネクネとタイトなコーナーが続くワインディングはトランザルプの独断場です。
「急な下り坂で、しかも曲がりこんだヘアピンとかはスポーツバイクだとハンドルに体重がかかってしまって思うように走れないじゃないですか。でもトランザルプはまったく影響を受けない。どんなコーナーでも自由自在に走ることができます。」
オフロードを考慮しながらもオンロード性能を重視したタイヤも十分な性能を発揮してくれました。
「オフロードタイヤみたいな感じがしたからワインディングでキチンとグリップしてくれるのか最初は心配だったんです。でもまったく問題ありません。色々なコーナーを攻めたけど不安な挙動が出たり滑ったことなんて一回もありませんでした。ワインディングはこれで十分。オフロードタイヤのようなタイヤノイズもしません。」
ワインディングでのトランザルプの走りに谷さんは相当に満足した様子でした。
オフロードバイクはワインディングでもロードバイクとは違った楽しさがあります。
デュアルパーパスというコンセプトによってオフロードバイクとオンロードバイクの良いところを抽出。
1台にまとめてしまったのがトランザルプというバイク。
だから他にはないコーナーリングの楽しさが生まれているのです。
「ストリートで使いやすいしツーリングでの快適性も確保されている。いざというときはオフロードだって走ることができるなんて、ストリートではパーフェクトなバイクかもしれませんね。」
ベテランライダーを感動させたXL750 TRANSALP。
そのオンロード性能をぜひ皆さんも体験してみてください。
【文/後藤武(外部ライター)】