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伊藤真一のロングラン研究所(CL250 編)

CL250は人気モデルのレブル250をベースに、生み出された最新のスクランブラー。実は伊藤さん、今回のテストに用いたCL250とまったく同じ、オレンジ色の燃料タンクのCL250を購入済みなのです! しかし、メインで乗るのは伊藤さんの奥様ということで、本格的にCL250に乗るのは今回が初、とのこと。

果たしてその評価は!?

機能部品としてのニーグリップラバーに感動

1966年、宮城県生まれ。88年ジュニアから国際A級に昇格と同時にHRCワークスチームに抜擢される。以降、WGP500クラスの参戦や、全日本ロードレース選手権、鈴鹿8耐で長年活躍。2023年も監督としてAstemo Honda Dream SI Racingを率いてJSB1000、ST1000クラスなどに参戦! 当研究所の主席研究員。

CL250は、日常の「足」として購入しました。ただ忙しくて自分が乗る時間はほとんどないので、ウチのカミさんの専用車に今はなっていますね(苦笑)。その前に所有していたレブル250も気軽に乗れる1台として非常に気に入っていましたが、スタイリング的にはCLの方が好みで、それも購入の理由のひとつです。オレンジのカラーリングを選んだのは、このデザインに一番合っているかな、と思ったからですね。

スクランブラーのCLのライディングポジションはアップライトで、自分の体格にはすごく合っています。ハンドルの高さやステップの位置も、自分にはとても自然で違和感がないです。ただ体格が小さい方には、ハンドルがちょっと広くて、体から遠く感じるかもしれないですね。

シート高は790mmですが、身長160cmのウチのカミさんにはちょっと高いみたいで、どうしてもシート高下げたいからリアショック換えて欲しい、と言われているんです。この試乗車に前に乗った人も、同じように感じたからなのかもしれませんが、リアショックのイニシャルが最弱の「1」の位置になっていました。標準は最弱からひとつ上の「2」なのですが、試乗当初はそのことに気付かずそのまま乗っていました。

その状態ですと車体が尻下がりになってしまうので、なんかおかしいな、と違和感を覚えつつしばらく走ってました。ジオメトリー的にフロント側が押されなくなるため、フロントフォークが動かなくなり、路面の大きなギャップを拾うと衝撃が多くなってしまいます。リアが下がっていることに気付いて、リアのイニシャルを標準の「2」に調整したら、劇的にハンドリングが良くなりましたね。

尻下がりだったときのコーナリング性能はクルーザーであるレブル250のような印象だったのですが、標準に戻したらよりスポーティになりました。もし足つきのためにリア側を下げるのであれば、フロント側の高さもちゃんと調整しないと、CL250本来の走りの性能をスポイルしますね。車高を変えるのであれば、そのあたりを考えて真面目にセッティングしないとダメだと思いました。

燃料タンクの両側に貼られているニーグリップラバーですが、これはスクランブラーらしさを演出するための、飾り的なパーツなのかと思っていました。ライディングにおいてニーグリップは大事! と力説する人は多いようですが、左右方向のホールドに関しては自分はあまり重視していません。それよりもシートと燃料タンクの間の、前後方向のホールドの方がすごく大事です。

ただCL250はフロント19インチタイヤでその操作の重さがあり、何をするにもハンドルから…というイメージがあって、ハンドルを切って操作しようとしてハンドルを持つ手に力が入りがちです。ハンドルをこじってしまう乗り方にならないように、下半身でのホールドを意識した方が良いでしょう。その際にニーグリップラバーがとても機能するので、そのことに感心しました。いわゆるファッション的なものではなく、ちゃんと走りのためのパーツとして機能しています。

ブレーキについてはリア側はとても効きが良く、コントロール性も優れています。リア6、フロント4くらいの割合で使っていました。フロント側も指一本でコントロールできるくらい使い勝手が良いですが、レバーアジャスターがないので手の小さい女性はレバーが遠く感じるのでは? と思いました。オプションのアジャスター付きレバーを購入すれば良いのでしょうが、女性ユーザーのことを考慮して、標準装備にして欲しいところですね。

古き良き時代の雰囲気が最新のCLにはある

250cc単気筒エンジンは、低中速寄りにパワーを出すカムプロフィールを採用しています。近年のホンダ製単気筒の例に漏れず、CLのエンジンはとてもよく回り、吹け上がりが気持ちいいです。高速道路では80km/hを越える速度域で振動を感じますけれど、カウルがなくて風を上体でもろに受けるCLは高速域を楽しむモデルではありませんから、この設定で良いと思いました。

トラクションコントロールなどの電子制御は与えられていませんが、ないことに不満を感じることはまったくありませんでしたね。細かいところで非常に気に入ったのは、ミラーがとても見やすいところです。取り付けるハンドルの高さと、ミラーのステー形状が絶妙で、後方が良く見えて安全だと感じました。燃料タンクは12リットルですが、燃費は良さそうなのでツーリング用途にも使えるでしょう。

今回の試乗では一般道をメインに走り込みましたが、その間このCLに「昔のテイスト」みたいなものを感じましたね。1978年にデビューした、23インチフロントタイヤを採用するオフロード車のXL250Sに、昔乗っていたときのことを思い出しながらCLで走っていました。当時のバイクは現代のものほど、装備などは豪華ではありませんでした。でも自転車の延長線の乗り物的というか、今のバイクよりも気軽に接することができたような気がします。

オンロードバイクでもオフロードに気軽に入ったりして、それでパターンとバイク倒してしまっても、倒したショックで寝込みそうになることはなく、あ、ゴメン! で済む感じ。変な言い方かもしれませんが、CLは本当に「バイク」っぽいですね。バイクってこうだったよな、というイメージですかね? 古く良き時代のバイク…そんな感じです。実は玄人向けのバイクなのかもしれませんね。

このCLを開発したのは若い人と聞いてますが、昔の時代をリアルタイムで体験していないのに、良いところを押さえているな、と感心しました。バイアスタイヤじゃないのに、乗っていてバイアスタイヤのバイクの感じがありますね。走らせていて、すごく楽しいです。カミさんはシート高いから嫌と言ってたけど、自分はこれが良い、と言い続けてCLを買ったわけですが、今回の試乗で思ったとおりの良い出来と確認することができました(笑)。

 

PHOTO:南 孝幸 まとめ:宮﨑 健太郎
*当記事は月刊『オートバイ』(2023年11月号)の内容を編集・再構成したものです。

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