高校生のバイク利用を抑止する「三ない運動」という言葉も近年はあまり聞かれなくなってきましたが、現在では実際のところどうなっているのでしょうか? 埼玉県の教育委員会が行なっている「高校生の自動二輪車等交通安全講習」を取材してその真意を確かめてみました。今回は交通安全講習会で行われた<実技 前編>をご紹介します。
<開催概要>令和3年度 高校生の自動二輪車等交通安全講習(埼玉南部) 日時:2021年7月26日 会場:レインボーモータースクール和光(埼玉県和光市) 主催:埼玉県教育委員会 共催:一般社団法人 埼玉県指定自動車講習所協会 後援:埼玉県警察本部/一般財団法人 埼玉県交通安全協会/埼玉県二輪車普及安全協会/埼玉県高等学校安全教育研究会/埼玉県交通安全対策協議会/ホンダモーターサイクルジャパン
高校生にバイクを安全に運転するための技術と知識を指導
かつて埼玉県の教育委員会は、県内の高校生にバイクを「取らせない」「乗せない」「買わせない」のいわゆる『三ない運動』を行なっていました。
しかし、バイクの高性能化や時代の流れもあり、2018年に全国に先駆けてこの制度を廃止。
方針転換を行い、積極的に高校生への交通安全教育を行う方針に切り替えました。
そんな埼玉県の教育委員会が主催する「高校生の自動二輪車等交通安全講習」が2021年7月26日にレインボーモータースクール和光にて行われました。
この「高校生の自動二輪車等交通安全講習」とは、主に原付免許や普通自動二輪免許を取得した生徒を対象とした『交通安全講習会』で、通学などで安全にバイクで走るための技術と知識を学べる講習会。
2018年度以降、定期的に行われている講習会で、今回で4度目の開催となりました。
参加者の高校生は基本的に自分のバイクで自主的に参加し、教習所だけでは上達しきれなかったバイクの扱い方や、法規走行などを見直せる絶好の機会とも言えます。
学校によってはバイクの免許を取得するために、この講習を義務付けしている高校もあるそうです。
教習所の講習とは何が違う?高校生が自主的に講習会に参加するワケ
バイクの教習所は基本的に安全面も考慮して「路上教習がない」ので、免許を取得した高校生が実際に公道を走ってみて「やっぱりもっと安全で上手な走り方を教わりたい」と受講する生徒も多いようです。
この日は夏休みが始まったばかりの炎天下の中、20名を超える生徒が集まりました。
開講式では主催者の埼玉県の教育委員会の方や、レインボーモータースクールの講員、埼玉県警の白バイ隊員も集い、注意事項やカリキュラムの説明が行われた後、いよいよ実技講習に入りました。
まずはしっかりと準備体操から。
バイクは上半身より下半身を使って操る乗り物。
屈伸や柔軟体操を念入りにおこないます。
続いてバイクに乗る前の車両点検。
事前にチェックしておけば回避できたと思われる故障や事故などは、主にヒューマンエラーであることが多いので、ここは念入りに。
覚えやすいように「豚と燃料」(ブレーキ、タイヤ、灯火類、燃料)の4箇所をチェックするといい、と教えてくれました。
次に、バイクの運転に大事なのは複数あるけれど、特に大事な3つを指導。
まずは「目線」。そして「上半身はリラックス」「下半身でバイクを操る」の3つがポイント。
特に、バイクに乗っている時の周囲からの情報認識は、8〜9割くらい「眼」からの情報が大事になってきます。
車種によって異なるライディングポジションでも、バイクを上手に操るコツは基本的に同じなんですね。
以上のポイントを押さえて、いよいよ6つの実技カリキュラムに入ります。
埼玉県警の現役白バイ隊員から教わる「6つ」の安全走行カリキュラム
実技講習で行われたカリキュラムは「一本橋」「Uターン」「千鳥走行」「パイロンスラローム」「急制動」「コーナリング」の6つ。
いずれも教習所で教わったことがありそうな内容ですが、決定的に違うところは、指導員が教習所の先生ではなく、埼玉県警の現役白バイ隊員から教われるところ。
日々トレーニングやパトロールに従事し、公道での安全走行を熟知した白バイ隊員のテクニックは「さすが」の一言!
その技術の目の当たりにして、参加した高校生たちも『目からウロコ』で心機一転だったでしょうね!
次回は、交通安全講習の「実技<後編>」をご紹介します。
【文:岩瀬孝昌(外部ライター)】