1966年、宮城県生まれ。1988年ジュニアから国際A級に昇格と同時にHRCワークスチームに抜擢される。以降、WGP500クラスの参戦や、全日本ロードレース選手権、鈴鹿8耐で長年活躍。2026年も監督として「Astemo Pro Honda SI Racing」を率いてJSB1000クラス、ST1000クラスなどに参戦! 当研究所の主席研究員。
2020年公開の「CB-Fコンセプト」から始まった、新型ネイキッドプロジェクトが製品として具現化したのが、話題のCB1000Fだ。今回はヘッドライトカウルなどを備える、SEバージョンをピックアップ! はたして伊藤さんは、その走りをどのように評価したのでしょうか?
CB1000ホーネットとの走りのキャラクターの違いに興味がありますね
ヘッドライトカウルを見て思わずイメージしたのは…

以前ホーネット1000にこの連載と違う企画で乗ったときに、その走りに非常に関心しました。ですから、同じプラットフォームを使ったCB1000FのSEを今回取り上げると聞いたときは、ホーネットとどう違うのかとても楽しみにしていました。
SEはヘッドライトカウルが付いていることがスタンダードとの最大の外観の違いですが、パッと見て思ったのは80年代のCB750ホライゾンを思い出しました。輸出用のCB1100Fにも同じようなカウル付きモデルがありましたが、国内販売されていたホライゾンの方が身近だったので、そう思ったのかもしれません。
カウルとしての防風効果については、自分の身長ですと風の巻き込みをちょっと感じてしまいました。小柄な方ですと、ちょうど良い風防効果が得られると思います。大きなカウルに比べ、小さなカウルは防風効果を満遍なく引き出す角度の設計が非常に難しいです。個人的にネイキッドに関しては、この手のカウルがないモデルが好みです。ただCB1000Fの四角いメーターが外観的に好みでない方にとっては、このカウルはメーターを上手く隠すことにもなりますし、カウル付きのネイキッドのスタイリングが好きな方にとっては、SEの全体的なスタイリングの方がスタンダードよりも魅力的に映るのではと思いました。
シートレール部は変更されていますが、それ以外は大きく変わっていないということで、元になったホーネットとそんなに変わらないハンドリングを試乗前にはイメージしてました。ただ、実際に走ってみると、その印象は大きく違いました。メインフレームの骨格的に、ステアリングヘッドパイプとエンジンの距離が近いので、重心の高さがホーネットのストリートファイター的なハンドリングに大きく影響していました。でも同じメインフレームを使っているCB1000F SEは、同じように重心は高いはずなのにハンドリングがホーネットとは全然違っているのです。この感覚の差はそれぞれのモデルのライディングポジションの違いが、ハンドリングの印象の差を生み出していると思いました。
速度域の変化によって表情を変えるセッティング

ホーネットは前寄りに乗って、乗り手がエンジンを抱え込んで走っているようなライディングポジションになります。一方CB1000F SEはハンドルがホーネットより高くなっている分、乗り手が重心から離れたライディングポジションになります。この人間と車両の重心の距離の違いが、CB1000F SEとホーネットのハンドリングの違いになっています。
CBはホーネットのようなハンドリングではない味付けを強く意識して作ったのでしょう。CBはとにかく、乗り心地がすごく良いです。特にリア側は微小ストロークのところがすごく良く、乗り心地の良さに大きく貢献しています。ハンドリングについては6:4でリア側の作動と吸収性が効いていて、ホーネットに比べるとリア側の寄与度が高い印象でした。
ただCBは車体のピッチを抑えたせいか、リアタイヤのグリップが離れる、浮きやすい印象もありました。ブレーキに関してもABSの介入も早く感じられ、ここまで制動力を落としても大丈夫かなと思いました。ただ試乗した日は気温が10℃以下という寒いコンディションだったため、タイヤのグリップに関する印象については、そのことも考慮しないといけないと思います。
どんなスピードレンジでもエンジン、ハンドリングの印象が変わらないホーネットに対し、CBの方はスピードレンジが高いときと低いときで、キャラクターが大きく変わることも印象的でした。試乗前に、CBに乗った方の話を聞いたのですが、ほとんどの人は非常に乗りやすいというコメントをしていました。CBは確かに、街乗りくらいのペースですとその扱いやすさが非常に光ります。スロットル開度でいうと、30%くらいまでの領域ですね。スロットルのツキについても、開け始めのところは本当に上手く設定されていて、このあたりを評して乗りやすいと皆さん語るのだなと納得しました。
このあたりは意図してそう設定したのだと思いますが、CBは街中を走っているときと、街中よりスピードレンジが上がったところでは、かなりスロットルのツキが変わります。2000~3000回転の上からは、スロットルにドンツキが出るようになります。ベースとなったSC77やホーネットと異なり、回転を上げるに連れ鼓動感を出すということで、エンジンのフリクション感が増す印象になります。自分はSC77やホーネットのようにカーン! と回るエンジンキャラクターの方が好みなのですけれど、CBの味付けを好む人はこの鼓動感こそ良いと評価するであろうことは理解できます。
万人が使える高性能を巧みに具現化することに成功

1000㏄のスーパースポーツ用のエンジンを、スロットル開度とそのツキを1:1にしちゃうと、乗れる人は極めて限られると思います。その観点ではCBの設定は、絞るところはちゃんと絞っていながら、鼓動感と大排気量車ならではのパワー感を上手く引き出せるようになっていると思いました。世界各国のスーパーバイクレースで勝利するために作られたエンジンを、多くの人が公道で楽しめるようにすることって、それはすごく難しいことであることを知ってもらいたいですね。
ライディングモードの設定についても、CBに関心しました。ラインアップされているモデルの中には、スポーツモードが「ちょっとやり過ぎじゃね?」と感じる例もあったりしますが、このCBについては過剰演出感のない、ちょうど良いスポーツモードに設定されていました。1~2速がローレシオなためか、6軸IMUによるウイリーコントロールが入っているにも関わらず、低いギアでは前輪が浮き気味になったりしますね。このあたりもあえてそうしているのか、パワー感の演出を感じられました。
CBならではの魅力ではありませんが、試乗中の撮影場所移動で使ったHonda RoadSyncのナビゲーションは非常に便利でしたね。大きなデジタルメーターを装備しているので、マップを図示した方がわかりやすいのかなと思いましたが、あと何メートルで右、左と的確に必要十分な情報を表示してくれるので、迷うことなく撮影班の車両と合流することができました。マップを図示されるとそれを凝視してしまうので、ライディング中に大事な視線をそこに集中させないという意味では、ホンダの安全に対する確固たる意思を感じさせられました。
ホーネットとCB、両車のどちらかを購入対象として比較する人はそんなにいないかと思います。ただ同じプラットフォームを使いながら、それぞれが求める要求を満たすモデルに仕上がっているということは、過去のホーネットの試乗と今回のCBの試乗で、しっかり確認することができたと思います。
TEXT:宮﨑健太郎 PHOTO:南 孝幸
*当記事は月刊『オートバイ』(2026年4月号)の内容を編集・再構成したものです。


















