(伊藤真一さんプロフィール)
1966年、宮城県生まれ。1988年ジュニアから国際A級に昇格と同時にHRC ワークスチームに抜擢される。以降、WGP500 クラスの参戦や、全日本ロードレース選手権、鈴鹿8耐で長年活躍。2026年も監督として「Astemo Pro Honda SI Racing」を率いてJSB1000クラス、ST1000クラスなどに参戦! 当研究所の主席研究員。
今回のロングランは、久々の比較試乗方式でお送りします。先月号でも取り上げたCB1000F SE、そしてCB750 ホーネットの2台を乗り比べ、それぞれの大型ネイキッドの走りの特性について、伊藤さんに深掘りチェックをしていただきました!
伊藤さんも感心しきりエンジンと操安の好バランス

昨年7月号の「識者激推しバイク BEST 3」では、CB750ホーネットを1位に選ばせていただきました。バイクの魅力はいろいろありますが、走らせて楽しいのが何より一番大事だと思います。ホーネットはエンジンと操安のバランスが、非常に良いです。
搭載される並列2気筒は、「ホントにナナハン?」と思うくらいパワー感があり、低中速域の実用トルク感も、高回転域までの回り方もとても軽快です。公道用量産モデルとしてはかなりチューニング度が高いエンジンですが、それでいて気難しさがない扱いやすいエンジンキャラクターに仕上がっているところに、感心させられました。
ホーネットの操安の良さについては、ステアリングヘッドパイプとシート位置の関係が効いているのだと思います。適度に高い位置に座っているので、運動性が出せるライディングポジションになっています。
ホーネットはスタイリング的にはストリートファイターですが、ハンドリングについてはまさにこれが基本!という印象です。コーナーで、ブレーキをどれくらい使って入るとか、ブレーキを残すとか残さないとか、切り返しに逆操舵使うかどうかとか、ステップ荷重をどうするかとか、走らせていてすごく勉強になるバイクです。
一般にストリートファイターは濃い目の味付けの個性的なハンドリングをもつモデルが多いですが、ホーネットはそのハンドリングに奇抜さはありません。左から右へ車体を切り返すとき、ちょうど良い感じで自分の意志に沿って車体がついてきてくれます。
ブレーキをかけたときや、スロットルを開けてトラクションをかけたときも、ホーネットは車体の動きがすごくわかりやすいです。リアタイヤが160と割と細めなサイズなことも、ホーネットの軽快な走りの印象に大きく影響していると思いました。走らせていることが楽しく、ライディングを満喫できるのがホーネット最大の魅力です。
同じネイキッドカテゴリーでも明確に異なるキャラクター

ストリートファイター的なホーネットに対し、CB1000F SEのスタイリングはネオレトロ的です。CB1000Fは、その外観に合った走りのキャラクターに仕上がっていると、比較試乗して明確にわかりました。
ホーネットのステアリングヘッドパイプとシートの位置関係に比べ、CB1000Fの方は座っている位置が低いのがわかります。それゆえに何が起きるかというと、左に曲がるとき一旦右にステアリングが切れます。感覚としては、70年代車や80年代車のそれに近いですね。
CB1000FのベースとなったCB1000ホーネットは、750のホーネットに近いハンドリングの味付けになっています。一方CB1000Fは、リアショックに専用リンクを採用するなどして、ホーネットと明らかに違うハンドリングに仕上げています。自分としては、ホーネットのハンドリングは非常に好ましいものに感じられましたが、70年代、80年代のバイクが好きな人にとっては、CB1000Fのハンドリングの方が好ましく思えるのではないか、とも思いました。
このあたりのハンドリングの仕上がりの違いは、それぞれのモデルにユーザーが期待するハンドリングを与えるという、開発者の意図が上手くいっているといえるのでしょう。
スーパースポーツのCBR1000RR(SC77)用エンジンをベースに使っていることもあり、シフト操作時のミッションのタッチ感などは、ナナハンのホーネットよりCB1000Fの方が明らかに上でした。サスペンションの作動感とか、そういった細かなところの上質感についても、やはり価格帯の違いもあってCB1000Fのほうが上だと思いました。
ただ750のホーネットは装備のグレード的にはCB1000Fに劣ると感じても、パッケージやバランスの良さといいますか、走らせているときの気持ち良さから、そのことに不満を覚えることは皆無でした。バイクの良し悪しは排気量の大小、価格の上下で決まるものではないということを、再認識されられました。
E-Clutch 仕様の試乗を今から楽しみにしています!

取材後日、750のホーネットのE-Clutch仕様が発売されることを聞きました。1000㏄クラスのモデルに比べると、750㏄クラスのモデルは大型初心者や女性ユーザーに選ばれることも多いでしょうから、そういう人たちにとってはEクラッチは魅力的な装備になると思います。またEクラッチは一般的なクラッチ操作もできるように設計されていますから、クラッチ操作を楽しみたい人も違和感なく使えるのが良いですね。
今までEクラッチ採用車で試乗の機会があった中ではCB650Rが最大排気量でしたが、ナナハンのホーネットの場合はスロットル・バイ・ワイヤとEクラッチの組み合わせがどのような仕上がりになっているのか、非常に興味深いです。今年のロングラン連載できっと試す機会があると思うので、試乗を楽しみにしています。
優れた750版ホーネットの唯一気になるところは?
自分の場合ですけれど、大型免許を持っているから排気量の大きいモデルを購入したい…という感覚は全くないですね。排気量は750㏄もあれば十分で、公道を走る分には速さに不満を覚えることはないと思います。750のホーネットは本当に走らせていて楽しいので、1台購入して手元に置いておいても良いかな、と思わせるものがありました。
ひとつ残念に思うのは、CB750ホーネットに用意されているブラックとシルバーのカラーリングは、どちらも地味な印象なことです。ビビッドで明るい印象のカラーリングがあっても良いと思います。1機種に対して無尽蔵に色のバリエーションを増やせるわけではないことは十分理解しているつもりですが、カラーリングが理由で750のホーネットが選ばれないということがあるのならば、それは非常にもったいないことだと思いました。
まとめ:宮崎 健太郎/写真:南 孝幸 *当記事は月刊『オートバイ』(2026年5月号)の内容を編集・再構成したものです。
















