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ベテランライダーが『CBR650R E-Clutch』に乗って感じた楽しさ

バイク経験が豊富なライダーなら、クラッチ操作をするのはごく自然なことになっていることでしょう。
積極的に走らせたいと考えるライダーの場合、クラッチ操作は常に自分でやりたいと思っているかもしれません。
そんなベテランライダーがHonda E-Clutchが搭載されたバイクに乗ったらどんな印象を持つのか。
実際にレポートしてみることにしました。

ベテランはクラッチ操作を苦にしていない

まずはライダーである私、後藤のプロフィールをお伝えしておきましょう。
40年バイクに乗り続けていて、ワインディングやツーリング、アマチュアレース参戦など様々な楽しみ方をしています。

今までクラッチ操作をするバイクに乗っていて不便だと感じたことはありませんし、どちらかというとバイクはすべて自分で操作したい派。

HondaのDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)は普通のマニュアル車とは違った楽しさがあるので気に入っていますが、スクーターは自分で操作できる部分が少ないので、あまり好きではありません。

どんなときもスムーズな発進と変速

さっそくHonda E-Clutch搭載車『CBR650R E-Clutch』を走らせてみることにします。

まずはスタートから。
Honda E-Clutchの場合、特別な操作はまったく必要ありません。
クラッチレバーを握らずシフトペダルを踏み込むだけなんですが、分かっていても使い慣れたクラッチレバーに触れずローギアにするのは、わずかながら緊張します。

スロットル開けるとアイドリングから少し回転が上がったところから半クラッチ状態になり、駆動力が伝わるのが分かります。
このときのフィーリングはとても自然で違和感は皆無。

滑りすぎてパワーがロスしている感じもなければ、早いタイミングで完全につながってしまい回転が落ち込むようなこともありません。
そしていつ完全にクラッチがつながったのか分からないほどにスムーズです。

シフトアップはクイックシフターと同様にシフトペダルをかき上げるだけ。
ただしHonda E-Clutchの場合、半クラッチによる緻密な制御が行われるので、さらに変速のショックが少なくなります。

シフトダウンも同様にシフトペダルを操作するだけ。
CBR650Rの場合、TBW(スロットルバイワイヤシステム)が装備されていないので、シフトダウンのショックは半クラッチで調整されます。

試乗時は雨でしたが、コーナリング中のシフトダウンでも姿勢が乱れることもありませんし、高回転からのシフトダウンでもショックがありませんでした。
こうなるともう少しペースを上げてみたくなります。

Honda E-Clutchではシフトアップやシフトダウンの設定を変えることができるのも面白いところ。
雨だというのに何度もコーナーを楽しんでしまったほどでした。

ツーリングやストリートで差が出る

Honda E-Clutchを「スタートと停止する時のみクラッチ操作が不要なクイックシフター」とイメージしている人がいるかもしれません。
実はこれ、大きな間違い。

クイックシフターの場合(車両によって制御の緻密さなどは異なりますが)、決まった条件下でのみスムーズな変速が可能です。
たとえば加速しているときのシフトアップなら問題はありません。
シフトダウンに対応しているクィックシフターであれば、減速時のシフトダウンもスムーズに行えることでしょう。

でもストリートやツーリングで変速するのは、そういうときだけではありません。
例えば高いギアでクルージングしているとき、そこから追い越しをするとなったら加速時にシフトダウンするケースもあります。

逆に減速時、シフトダウンで回転が上がりすぎてエンジンブレーキが強くかかりすぎたようなときは、スロットルを閉じたままシフトアップするケースもあります。
そんなときでもHonda E-Clutchは対応してくれるのです。

今回はわざと意地悪をして6速低回転で走っている状態からスロットルを全開にし、立て続けに2速までシフトダウンしてみましたが、まったくショックがありませんでした。

またレッドゾーン近辺まで回してからスロットルをオフにしてシフトアップもしてみました。
こういった操作をした場合はクイックシフターだと対応することができません。

ところがHonda E-Clutchでは完璧に作動してくれて、スコンと気持ちよく変速ができます。
もちろんショックもほとんどありませんでした。

また、クイックシフターでは低いギアで低速の場合、スムーズな変速が難しい場合があります。

そんなときでもクラッチ操作でショックを低減しくれるのがこのシステムの素晴らしいところ。
あらゆるシチュエーションで完璧な制御を実現しているのです。

クラッチのつながり方も調整できるのもありがたい点です。
ダイレクトな感覚を重視したいのであればハード。
優しくつなげたい場合はソフトを選ぶことができます。

クラッチは頻繁に作動するものなので、自分好みのフィーリングにセッティングしたら、さらに快適に走ることができそうです。

Uターンではどうなのか

ベテランライダーなど、バイクの操作に慣れた人たちはUターンで半クラッチを使うというケースも少なくありません。
実際にHonda E-Clutchが作動している状態でのUターンにもトライしてみました。

通常のUターンで微妙な速度調整をするときはスロットルよりも半クラッチを使うので、クラッチ操作を自分でしないとタイトなUターンをする場合の難易度は若干上がります。
ただ、低回転時の半クラッチを微妙に調整してくれるので、一般的なATのバイクに比べたらやりやすいことは確かです。

クラッチ操作をしながらのUターンなら、MTのバイクと何も変わりありません。
低速でハンドルをフルロックさせた状態でのUターンでは微妙なクラッチ操作を繰り返しますが、まったく違和感はなし。

そこからバイクを起こして加速に移り、すぐにシフトアップをしてもHonda E-Clutchはすでに復帰していて、クラッチ操作をせずにスムーズなシフトアップをすることができました。

実は私、けっこうUターンが好きです。
バイクを微妙に操作して、上手に操るということに喜びを感じてしまうのです。
そんな私ですが、実は今回の試乗ではけっこうな割合でクラッチを使わず、Honda E-Clutchを作動させた状態でUターンをしていました。

超低速でハンドルをフルロックさせたUターンだったらクラッチレバーを使いますが、実際にバイクを転回させなければいけないときって、そこまで小回りをしなければいけないことばかりではありません。単にバイクの向きを変えるだけだったら、Honda E-Clutchの優しい半クラッチ操作がとても便利だということに気がついたからです。

車体の大きなバイクで支えるのが不安になるようなときでも、クラッチ操作から開放されればハンドルのグリップをシッカリと握ってバイクを保持することもできるでしょう。

スポーツ走行でのHonda E-Clutch

スポーティーにバイクを走らせたいライダーにとってもHonda E-Clutchは大きな武器になります。

ビッグバイクでワインディングを走る場合、回転をレッドゾーンまで上げて走るようなことは少ないと思います。
回転を抑えめにして走っていることがほとんどではないでしょうか?
タイトな峠道などでは、逆に回転を落として走ることだって多いはずです。

そんな走り方で回転数が低い時でも、クラッチを使わずショックのない変速ができてしまうのは本当にありがたいもの。
スロットルやステアリングなどバイクの操作に専念することができるようになるからです。

Honda E-Clutchは実際に乗るととても便利でスマートな技術であることが分かります。
そしてバイクを操作する楽しみがなくなった感じはまったく受けませんでした。
むしろ楽しさが増しているのです。
今回はテストコースを試乗しただけでしたが、色々なところへ出かけていくと、さらにありがたさが身にしみそう。

 

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【文/後藤武(外部ライター)】

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