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伊藤真一のロングラン研究所(CBR650R編)

今回のロングラン研究所は、56design代表で元MotoGPライダーの中野真矢さんをゲストにお迎えしてお送りします。

中野さんが今乗ってみたいホンダ車としてあげていただいた「CBR650R」を伊藤さんと2人でチェックしました!

大型車ビギナーには650はちょうど良いサイズ

伊藤真一(いとうしんいち):1966年、宮城県生まれ。88年ジュニアから国際A級に昇格と同時にHRCワークスチームに抜擢される。以降、WGP500クラスの参戦や、全日本ロードレース選手権、鈴鹿8耐で長年活躍。2024年も監督としてAstemo Honda Dream SI Racingを率いてJSB1000、ST1000クラスなどに参戦!当研究所の主席研究員。中野真矢(なかのしんや):1977年、千葉県生まれ。97年にヤマハファクトリーライダーとなり、98年に全日本GP250ccクラスを制覇。99年からは世界GPフル参戦を開始。引退の前年の2008年より、アパレルほか上質なバイクライフを提案する56designを主宰。また12年からはレーシングチーム、56RACINGの活動をスタートさせている。

中野:じつはロングラン研究所に出るのは、2度目なんです。10数年前のことで、そのときは岡田(忠之)さんが企画を担当されてました。伊藤さんも岡田さんも、自分が漠然とプロライダーになりたいと思っていた、ミニバイクレースをしていた子供だったころのヒーローなので、一緒に地元の千葉を走ることができるのはとても嬉しいですね。ただ岡田さんと一緒のときは、もうちょっと楽しいツーリング企画でしたよね? 今回もそうかな、と思っていたのですが、乗り始めから伊藤さんはいろいろ車両の特徴をチェックしていて、今は結構ガチなインプレッション企画になっているんだなと、思わずビビってしまいました(苦笑)。

伊藤:その辺は、自分と岡田さんとの性格やキャラクターの違いからかな(笑)。今回ゲストとして参加してくださって、乗ってみたいホンダ車としてCBR650Rをピックアップした理由がとても興味深いんだけど。

中野:ロードレースのキャリアが長い伊藤さんが一緒ということで、最初はCBR1000RR-Rに久しぶりに乗ってみようかな? と思いました。ただ自分も歳を重ね、最近はちょっと楽な方向に行きたくなっていることもあり、スーパースポーツよりライディングポジション的に楽な、CBR650Rを試してみたくなり、選ばせていただきました。

伊藤:前号のロングランでは、兄弟モデルでネイキッドのCB650Rを取り上げました。販売店の方の話によると、大型免許を取ったばかりの初心者の人は、初めての大型車にこれを選ぶ人が多いそうです。

中野:大型免許とって、いきなりスーパースポーツの1000ccとか選ぶよりはその方が良いですね。大型車の扱い方を、学ぶにはちょうど良いサイズ感だと思います。たまたま数年前ヨーロッパに行っていたとき、この型がイタリア・ミラノのEICMAでデビューした年だったのですが、ブースのまわりに多くの人が集まって、とても注目されていました。リーマンショック以降、ミドルクラスは並列2気筒車が各メーカーの主流となりましたが、このCBR650Rのような4気筒車を求める人は少なくないのでしょう。

伊藤:以前乗ったCB650Rに比べると、このCBR650Rの4気筒は制御のマップの違いなのか、若干吹け残りがするような気がしました。始動直後も、ちょっとスロットル開けるとフォーンと吹け上がっていく感じで、スロットルのツキが結構良いなと思いました。前にCBR650Rに乗ったときと、イメージ違いましたね。

2人が考えるスロットルの「ツキ」の大事さとは

中野:最初はアクセルの戻りが少し渋いのかと思ってしまいました。

伊藤:マップ制御がCBとCBRでは違うと思ったけど、もしかすると寒い気候だから、コールドスタートなどの補正がかかっているのかもしれない。あとモデルチェンジするたびに良くはなっているけど、650の4気筒はちょっと回転にフリクション感あるけど、それは感じなかった?

中野:伊藤さんは見る目が厳しいですね…。それは感じなかったです。確かにCB400SFの4気筒エンジンに比べると、あれほど滑らかではないと思いますが…。伊藤さんはスロットルのツキの話をされましたが、僕もツキ過ぎるバイクは好きじゃないですね。キャブレター時代の、一番良いツキ…あれが欲しいと思ってしまいます。

伊藤:自分は違和感を覚えるのですけど、トーン! とツキがある感じじゃないと、乗れないというライダーもいますね。ホンダは基本開け始めのところを25%カットしているから、前に出過ぎる感じはないですけど。

中野:ツキ過ぎるバイクは、レインモードが一番良いと感じてしまったりします(苦笑)。ヨーロッパの方は、ウイリーとかやりやすいスロットルのツキを好むのかもしれないですが、僕にはその良さが全然わからないです。

伊藤:レーサーの場合でもツキ過ぎると、一番速度が落ちるシケインで開け始めのときにズルッ! っと滑ってしまいますね。

中野:速度が落ちるところからの開け始めは、公道車もレーサーもどちらも一番重要ですね。開け始めをカットするのは、絶対良いと思います。スロットルの設定で元気の良さを演出するとか、ユーザーの方のわかりやすさを大事にするのもあるのでしょうが、そこにこだわって迎合するのもどうかと僕は思います。安全に楽しむ、そのことが一番大事ですから。

予想したとおり、期待したとおりの完成度!

中野:兎にも角にも、伊藤さんと地元を一緒に走れたことが一番嬉しかったですが(笑)、今日乗せていただいたCBR650Rは、乗る前に思っていた期待を裏切らない仕上がりでした。足着き性が良くて取り回ししやすく、走りもとても軽快です。前傾がスーパースポーツほどキツくないのは、ロングツーリングに使うときのことを考えると、とても良いですね。トップブリッジの下にセパレートハンドルが取り付けられているのですが、ハンドルの握る位置がそれほど低くはないので、ライディングポジションに窮屈さがないのはとても良くできているなと思いました。あと気に入ったのは搭載しているのが、4気筒エンジンであることです。ホンダは長年4気筒の名車を数多く作ってきましたが、CBR650Rのエキゾーストパイプのデザインは、ヨンフォアことCB400Fに似ていて、ホンダ4気筒の伝統を意識させてくれます。

伊藤:排気系の造り込みには、コストをかけているのが非常に良いですね。個人的は、カウルのデザインも格好良いのがとても気に入っています。

中野:今回は今自分が乗りたいホンダ車としてCBR650Rを取り上げましたが、伊藤さんが僕に乗ってほしいホンダ車ということで、X-ADVを一緒に走らせました。X-ADVについては次回詳しく語りますが、X-ADVがいい意味で予想を裏切られた、とすると、CBR650Rは本当に予想どおり、期待したどおりという仕上がりでしたね。

伊藤:X-ADVは自分がとても気に入っている1台なので、中野さんに乗ってもらって率直な感想を語っていただき、それを聞いてみたいなと思ってセレクトしました。中野さんからX-ADVについてどのようなコメントがいただけるか、ぜひ次回のロングラン研究所を楽しみにしてください。

PHOTO:南 孝幸 まとめ:宮﨑 健太郎
*当記事は月刊『オートバイ』(2024年3月号)の内容を編集・再構成したものです。

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