来シーズンに向けて英気を養っている岡崎さん。エキゾーストノートに包まれたサーキットを離れ、クロスカブ110で風の囁きに満ちたアウトドアを満喫しています。
●まとめ:高橋 剛 ●写真:楠堂亜希 *当記事は(株)内外出版社ヤングマシン掲載記事(2023年2月号)の内容を編集・再構成したものです。
性能を主張しすぎないから、自分らしさを楽しめる!
グランピング、はやってますね。自分は詳しく分かっていないんですが、「かなりゴージャスなキャンプ」という感じでしょうか?
語源は「グラマラス+キャンプ」とのことで、テント設営の必要がなく、エアコンや冷蔵庫が完備されていたり、豪華なお食事が用意されたりと、かなり快適にアウトドア体験ができるらしいですね。
……私は、いいかな……。
グランピングを否定はしません。それはそれで楽しいと思うし、気軽に、そしてリッチにアウトドアを味わえるのは、いいことだと思います。
でも、自分もキャンプしますが、準備が面倒だったり食事するのが大変だったり暑かったり寒かったり……と、ダイレクトに自然を感じられるから好きなんです。
バイクも同じですよね。わざわざ雨風にさらされて夏暑く冬寒い乗り物に乗るわけですから、便利すぎなくてもいいんです。あまり手厚いバイクに乗ると、「自分でなんとかするから」と言いたくなります。
な~んてことを、クロスカブ110のメーターを眺めながら考えました。めちゃくちゃシンプルなアナログスピードメーターが、今や感動的です。クロスカブ110は50と違い下部に液晶が追加されていますが、それでもシンプル。
自分はここに、リアルアウトドア感を感じました。自分が好きなキャンプと同じで、モノはシンプルで、それほど手助けしてくれません。それだけ、自分でなんとかしなくちゃいけなかったり、考えたりします。
メーターがアナログだからって「なんとかしなくちゃ」なんてことはありません。でも、あえてアナログにしているところに、深いメッセージを感じ取ってしまったんです。
アウトドアと言いつつIH家電をコンセントにつなぐだけ、ではありません。火を起こすところから楽しむ感覚。焚き火にかけた飯ごうでご飯を炊き、じっくりと味わうような……。
クロスカブ110、かなりポリシーのあるバイクに思えてきました。
思えば、バイクってとかく走りのパフォーマンスに寄りがちです。例えば「オフロード」となると、サスペンションストロークの長い脚長にして、シート高をかなり上げて、足着き性を犠牲にしてでも悪路走破性を高める、といった具合に。エンジンも「できるだけ速く走るために」と性能を上げようとしますよね。
オフロードライディングを極めるなら、それでいいのかもしれません。「ライバルに勝つ」といったコンペティション目線で言えば、間違いなく走りを高めるべきでしょう。
でも、自分はオフロードにそこまでを求めません。自然の中に分け入って、気持ちいい景色を眺められれば十分。逆に、バイクがそこそこのレベルでいてくれた方が、純粋にアウトドアを楽しめるような気がします。
クロスカブ110は、そんな自分の「アウトドア観」にピッタリなんですよね。性能を主張しすぎるバイクじゃないから、気軽に付き合えます。バイクとしてのパフォーマンスが手の内にあって、移動手段であることに徹してくれる分、アウトドアライフがメインになるんです。
自分ならクロスカブ110に荷物をたっぷり積み込んで、キャンプに行きたくなります。グランピングではなくて、自分でテントを張るキャンプ。夜は寒さに震えながら、静かで賑やかな冬の星空を眺める……なんて、最高じゃないですか?
こう言うと、「バイクとしての面白さはないのか」と思われてしまいそうですが、そんなことはありません。
オンロードは軽快です。コーナーの進入でフロントブレーキをかけ、フロントサスペンションを縮めると、フロントタイヤからのインフォメーションがしっかり伝わってきます。だからコーナリングは安心!
オフロードでフロントタイヤやリアタイヤが滑っても、車重が軽いこととパワーが過剰ではないことで、ちっとも怖くありませんでした。バイクの限界を越えたとしても、自分がそこに追いつける範囲だから、いろいろチャレンジしたくなるんです。これだけでも十分に「ライディングが楽しい」と言えると思うんですよね。
もちろんさらに先、「攻める」という領域に足を踏み入れようとすると、いろいろと欲が出てきます。でもそれは、クロスカブ110の守備範囲ではありません。もっと手前の領域で、心に余裕を持ちながら、ライディングよりもアウトドアでできること、アウトドアで感じられること、アウトドアにいることを全力で楽しむ。クロスカブ110、本当に深いバイクです。
クロスカブ110:SHIZUKAの評価
1)スタイリング:コンセプトがそのまま形になったかのような気持ちよさ。今回試乗したグリーンは、自然に溶け込めるカラーです。
2)スポーツ性:スポーツの雰囲気はあるけど、スポーツしようとする前に限界を迎えちゃうかわいらしさ。持ち味はトコトコです。
3)ツーリング:荷物をたくさん積んで、ご近所のキャンプ場に行く。それだけでかなりアウトドアムードを味わえそうです。
4)街乗り:ガシャガシャした感じがなく発進停止もスムーズ。加速にもたつきはないし、フロントも安心感が高く、不安なし!
5)コストパフォーマンス:内容と装備といろんな可能性を考えれば、「とりあえず買っておいてもいいんじゃない?」と思っちゃいますね。