ツーリングをしていると、気温の変化や疲れなどで、思いがけずにバランスを崩してしまうこともあるかもしれません。
今回は不意な「立ちゴケ」が起こりやすい“6つのシチュエーション”をご紹介します。
あらかじめ「立ちゴケしやすいシーン」を把握しておこう
免許を取得してバイクに乗れるようになると、色々なところへツーリングに出かけてみたくなると思います。
ツーリングは楽しいものですが、当然ながらバイクは前後2つのタイヤで走る乗り物ですから、ちょっとしたことでバランスを崩して転倒してしまう恐れがある場合もあります。
そう、いわゆる「立ちゴケ」です。
今回は、不意に起こりやすい立ちゴケ転倒を減らせるように、ツーリング先で起こりやすい「立ちゴケシーン」を6つご紹介します。
これを事前に把握しておくことで、立ちゴケのリスクを大幅に減らすことができますので、6つのシチュエーションをひとつずつ見ていきましょう。
①乗降時:乗り降りするときは身体のバランスを崩しやすい
まず、不意な立ちゴケで意外に多いケースは、バイクを乗り降りするときの「乗降時」が挙げられます。
例えば、休憩を終えて再出発するときや、長距離を走った後に思いのほか身体が疲れていた場合など、予想外にフラッとバランスを崩してそのまま転倒してしまうケースがあります。
だたバイクへ乗り降りするだけでも、実は立ちゴケのリスクって結構侮れないんです。
バイクの教習所では、サイドスタンドをはらってから跨って乗車するように教わるケースも多いようですが、一般公道では少し傾いた場所にバイクを停車させていたり、砂地など足場の悪い所で乗り降りする場合も出てくることがありますから、サイドスタンドは掛けたまま跨り、発進の準備ができてからサイドスタンドをはらった方が、乗降時の立ちゴケのリスクを軽減できる場合もあります。
乗降時の立ちゴケはビギナーライダーに限らず、バイクに乗り慣れたベテランライダーでも充分起こりうるウッカリミスなので、常に意識してバイクを乗り降りするとよいでしょう。
②発進直後のエンスト:ラフなクラッチ操作は転倒のリスクの元
続いて、転倒のリスクが多いケースが「発進直後の不意なエンスト(エンジンストール)」による立ちゴケです。
このケースが起こりやすい原因は、発進時のラフな半クラッチ操作やアクセル操作などによって、エンジンが突然ストールしてしまい、バランスを崩して転倒してしまうこと。
近年では、シリンダー内に送り出すガソリンの供給もECUでコンピューター管理されたフューエル・インジェクション・システムの車両が主流になっていますから、キャブレター仕様のバイクに比べると、エンジンが充分に温まっていない状態などで起こりやすい突然のエンジンストールは少なくなりましたが、それでも丁寧な半クラッチ操作やアクセル操作はライダーが行う必要があります。
無事に走り出せたとしても直ぐには気を抜かずに、しっかりとスピードやバランスが保てる状態になるまで、エンストによる発進直後の転倒リスクがあることを覚えておきましょう。
③パニックブレーキ:急停止の際に起こりやすい「握りゴケ」
続いて立ちゴケの危険性が多いのは、急停止しなければならない場合の「パニックブレーキ」時に起こる転倒、いわゆる『握りゴケ』です。
これは、自転車や障害物、人などが急に飛び出してきたものを避けるために、慌ててフロントブレーキを強く握ってしまうと起こりやすいもので、タイヤがロックして滑ってしまうことでバランスを崩して転倒してしまうケースです。
近年のバイクは、ブレーキを強くかけすぎてもタイヤがロックしない「ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)」や、前後ブレーキを同時に効かせてくれる「コンビブレーキ」が搭載されているバイクが主流になっていますので、握りゴケによる不意な転倒は少なくなったと言われていますが、急制動が必要になるケースが起こらないとは限りません。
想定外の強いブレーキ操作、パニックブレーキは立ちゴケも誘発しやすいことを知っておきましょう。
④砂利道などの路面:タイヤも足も滑りやすい不安定な場所では細心の注意を!
次に立ちゴケしやすいシチュエーションは、砂利道や砂地などの不安定な場所を走行しなければならない時に、タイヤごと滑って転倒してしまうケースです。
オンロードタイヤで不安定な路面の場所に入ることは、そもそもあまりオススメしませんが、ツーリングをしていると工事や駐車場/駐輪場など全てのシチュエーションが舗装整備されたアスファルトであるとは限りません。
とはいえ、砂利道や砂地に入ったからといって直ぐに滑って転倒してしまうわけではなく、進むスピードが速すぎたり、極端なハンドル操作による転倒が最も多いと言えます。
このような場所を走行しなければならない場合は、両足を着きながらで構いませんので、ゆっくりとアクセルを回しつつ、二輪二足でやり過ごすように通過しましょう。
⑤長い下り坂や坂道発進:平坦な道ではない斜面では繊細なクラッチワークで対応
立ちゴケが起こりやすいのは平地だけとは限りません。
例えば坂道発進をしなければならない登り坂の場合は、ラフな半クラッチ操作やアクセルワークで不意にエンジンがストールしてしまうことで、平地よりも発進直後の転倒が起こりやすくなります。
また、アクセルを回さなくても勝手に進んでしまうような「長い下り坂」などで強くフロントブレーキを握ってしまうと、バランスを崩しやすく、先ほど解説した握りゴケが平地よりも起こりやすい場合があります。
このように、長い下り坂や上り坂を走行する場合は、常に気をつけるようにしましょう。
⑥狭い道などでのUターン:広くて安全な場所以外ではUターンしないことが賢明
立ちゴケが最も起こりやすいシチュエーションと言えるのが「Uターン」をしなければならないケースでしょう。
バイクのUターンは、ライダーの体格や足の着き具合、そのバイクの重さやハンドル切れ角、道の幅やシチュエーションなどで大きく異なるので、バイクに乗り慣れたベテランライダーでも本当に気を使うものです。
「多分、大丈夫でしょ!」っと、油断してUターンしようとすると立ちゴケしてしまうケースが最も多いんです。
できることならば、Uターンはしない方が無難なのですが、進んだ道が行き止まりで戻る必要があることもあります。Uターンするのが不安な場合は、いっそのこと一度バイクから降りて車体を押しながら方向転換を行ったが賢明です。
いかかでしたか?
今回は、ツーリング先で立ちゴケしやすい6つのシチュエーションをご紹介しました。
不意に起こりうる危ういシーンを事前に把握しておくことで、可能な限りのリスクを減らすことができます。
せっかくのツーリングですから、安全で楽しい運転を心がけたいですね。
【文:岩瀬孝昌(外部ライター)】