バイクの重量は軽量な250ccクラスでも150kgからそれ以上。しかもそれが時速100kmとかで走る訳ですが・・・そんなバイクが、手でレバーを握るだけで止まるのって不思議に思ったことありません?
知っておきたいブレーキのこと
手でブレーキレバーを握るだけで時速100kmで走るバイクでも減速・停止させることができるブレーキですが、これって考えてみるとけっこう不思議じゃないですか?
今回はそんなバイクのブレーキについて、ちょっとフォーカスします。
まず現代の主流になっているのは上の写真の『油圧式ディスクブレーキ』という仕組み。これがどういうものか?というと、やっていることはけっこうシンプルだったりします。
写真の銀色の円盤の部分を『ディスクローター』と言うのですが……
そのディスクローターをブレーキパッドという部品で、強烈なパワーで押さえつけ、その摩擦の抵抗を制動力にしているだけ。
つまりブレーキレバーを握るという操作は、最終的にブレーキパッドがディスクローターを挟む力に変換されている、っていうことになります。
だけど、それだけで重たいバイクが止まるなんて、あまりにも謎ですよね・・・?
レバーを握る力は何十倍にも増幅されている
今回はブレーキのメカニズムを知ることが目的ではないので、細かい部分は省いていきますが、まず一般的なブレーキレバーについて。
このレバーを指で握るという操作。
実はこの時点で、レバーの形状によって『テコの原理』が働き、握った力を何倍にも増幅させています。普段、何気なく握っているレバーですが、実はその形状に既に秘密があったんです。
そして、テコの原理によって増幅された力は、写真のマスターシリンダーに伝わり、中に入っているブレーキフルード(ブレーキオイルと言われたりもしますが、成分的にオイルではないためフルード(液体)が正解)を押し出します。
押し出されたブレーキフルードは、ブレーキホースを伝って、ブレーキキャリパー内にある(先述の)ブレーキパッドを押し出す。
そして、この「マスターシリンダーがブレーキフルードを押す」→「ブレーキホースを伝ったブレーキフルードがブレーキパッドを押し出す」という一連の流れの中において、中学校の理科で習った『パスカルの原理』を利用し、さらにその力を増幅させているんです。
つまり指でブレーキレバーを握った力は、レバーの『テコの原理』と、油圧を利用した『パスカルの原理』で二段階に増幅。そうすることではじめて、ブレーキパッドがディスクローターを強烈に押さえつける力を発生させている訳なんです。
厳密に言えば、この『力の増幅』はブレーキキャリパー内にあるブレーキローターを押さえるためのピストンの数や、ダブルディスク化によって、さらに増幅されますが、基本的にはこの『テコの原理』と『パスカルの原理』が制動力を生み出す基本的な仕組みだと思っておいてください。
ブレーキは『消耗する』ということを知っておく
ところで今回、このブレーキの仕組みを『なんとなく』でいいから知っておいて欲しいと思った理由は、それだけ大きな力を生み出すブレーキのシステムだけに「使えば使うほどに消耗する」という認識を持ってほしかったから。
超高速で回転するブレーキローターを押さえつけるブレーキパッドは、当然、どんどん削れて無くなっていきます。そして押さえつけられる側のブレーキローターも同じく、削れて薄くなります。
さらに言うとブレーキフルードも湿気や熱が原因で劣化して、その性能を低下させていくんです。
ブレーキはメンテナンス・消耗品交換が何より大事
バイクは走る性能以上に止まる性能が重要です。当たり前の話ですが、どれだけ高性能・高出力なバイクだって、止まること(減速すること)ができなければ、走らせることはできません。
つまり、バイクライフを楽しむには『ブレーキが正常に作動すること』が大前提のひとつなんです。
そのために大事なのは、プロの目で、継続的に状態をチェックすること。
ブレーキシステムは重要保安部品ですので、中途半端な知識で触れることはおすすめできません。
大切なあなたの愛車、最後にブレーキの点検をしたのはいつですか?
パッドやローターだけじゃなく、ブレーキフルードの交換、してますか?
すこしでも不安があるようだったら、早めに愛車を買ったお店などに相談してみてくださいね!
【文/北岡博樹(外部ライター)】