大型アドベンチャーモデルのXL750Transap E-Clutchは、街乗りからツーリング、林道走行とさまざまな用途を1台でまかなえる車両です。Honda E-Clutchでクラッチレバー操作が省かれ、ビギナーでも安心して走り出せます。その魅力について前編と後編に分けてお伝えしていきたいと思います。
TRANSALPの歴史は1987年に始まった

HondaのTRANSALPシリーズは1987年に誕生しました。初代XL600Vは水冷4ストロークOHC・V型2気筒エンジンを搭載し、フロント21インチ・リア17インチのワイヤースポークホイールを履き、街乗りから林道ツーリングまで幅広く対応できる設計で、アドベンチャーモデルとして欧州で人気を博しました。軽快なハンドリングと十分な排気量を兼ね備え、長距離を走っても疲れにくい設計が特徴でした。

一方日本では600だと限定解除をする必要があり、1991年にはその必要がない、TRANSALP 400Vが投入されています。1994年には外観や使い勝手を向上させるなどのマイナーチェンジを受けました。
XL600Vはヨーロッパ市場では根強い支持を集め、進化を続けていきました。一方日本市場では、排気量の大きいアドベンチャーモデルの人気は高まらず、TRANSALP 400Vは姿を消しました。なおTRANSALPはTRANS(越える)+ALP(アルプス)=アルプス越えを意味します。オン・オフの走るステージを選ばず、長距離を走れるマシンとしての素性を表していたのです。
Honda大型アドベンチャーツアラー/デュアルパーパスの歴史
TRANSALPシリーズをはじめ、大型アドベンチャーモデルはヨーロッパ市場で進化してきました。日本市場にも一部導入されたモデルも存在します。1983年には空冷4ストロークV型2気筒エンジンを搭載したXLV750Rが登場。19Lの大型ガソリンタンクやフロント21インチ・リア17インチホイールを履いていました。

1985年には空冷4ストローク単気筒・591㏄エンジンをダブルクレードルフレームに搭載。フロント21インチ・リア17インチホイールを組み合わせたXL600Rファラオがリリースされています。

1988年には世界一過酷なラリーといわれるパリ・ダカールラリーで、1986年・1987年・1988年と3年連続優勝(二輪車部門)の偉業を成し遂げたワークスマシンNXR750で得た技術をフィードバックし、水冷4ストロークOHC・V型2気筒・647㏄エンジンを搭載したAfrica Twinが日本で限定販売(500台)されました。その後、排気量を742㏄に拡大するなどの熟成を重ねながら進化を続けましたが、つねに少量台数の限定販売となり、オンロードモデルの大排気量車ほど人気を集めることはありませんでした。

しかし、2010年代以降になると、大型アドベンチャーモデルの人気が日本市場で高まります。2016年にはCRF1000L Africa Twinが日本市場に投入され、一定の支持を集めました。以降、熟成を重ねつつCRF1100L Africa Twinへと進化し、バリエーションモデルも登場しています。

2023年にXL750 TRANSALPが登場
日本市場でも大型アドベンチャーモデルを相棒に選ぶライダーが増え、CRF1000L Africa Twin・CRF1100L Africa Twinの販売も好調。そんな中、リッター以下の排気量のアドベンチャーモデルを求める声も。そして2023年にXL750 TRANSALPが登場しました。

街乗りから世界一周まで幅広く楽しめる『ジャストサイズのオールラウンダーバイク』として開発され、新開発の754㏄並列2気筒エンジンは低速でも力強く、高速でもスムーズに走る特性を持ち、クラッチ操作も軽く快適に仕上げられています。車体はアドベンチャーモデルとしては軽量で、剛性の高いフレームに前後高性能サスペンションを組み合わせ、舗装路から未舗装路まで安定した乗り心地を実現。大型ウインドスクリーンで風を防ぎ、長距離走行でも疲れにくい設計となっていました。さらにスマートフォン連携や選べるライディングモード、トラクションコントロール、ウインカー自動消灯、急ブレーキ警告などの先進の電子制御機能を搭載し、快適で安全なツーリングをサポート。

2025年モデルではヘッドライトのデザインを変更し、スクリーンは中央部にインテークダクトが設けられ、走行風の巻き込みを軽減しつつ、快適性向上を追求。前後サスペンソンはさまざまなシチュエーションにおいて吸収性を高めるべく、セッティングを変更するなど、その魅力が高められています。そして2026年モデルでは新たにHonda E-Clutchモデルが投入されました。
2026年モデル・XL750 TRANSALP E-Clutchのディテール

- 2025年モデルでデュアルプロジェクターヘッドライトになり、フロントマスクの精悍さが増しました。スクリーンは中央部にダクトを設けることで、快適性が向上。なお、素材には環境にやさしいバイオエンジニアリングプラスチックDURABIOが使用されています
- ハンドルバーはテーパータイプで、高めのハンドルポストに組み合わされています。メーターは5.0インチTFTフルカラー液晶マルチインフォメーションディスプレイが採用されています
- メーターはさまざまな情報が表示されます。左ハンドルスイッチのボタンを使って切り替え可能。メイン画面も好みに応じて3パターンから選択できます。さらにBluetooth で連携しナビゲーションなどを表示できるHonda RoadSyncも装備しています

- 好みに合わせてあらかじめ設定された出力特性を選べる「ライディングモード」を装備。パワー(P)・エンジンブレーキ(EB)・HSTC/ウィリーコントロール(T)の制御レベルを組み合わせた、「SPORT」「STANDARD」「RAIN」「GRAVEL」に加え、任意の制御レベルを選択保存可能な「USER×2」の各モードを選択できます
- クラッチレバー操作なくシフトチェンジできるE-Clutchが装備されました。DCTと違い、任意で従来のようにクラッチレバーを使った操作も可能。スイッチボックスの縦型ボタンでメーターまわりの操作をし、ホーンの上にあるボタンでライディングモードを切り替えます
- ダイレクトなスロットルレスポンスを追求し、ワイヤーを介さない「スロットルバイワイヤシステム」が採用されています。右スイッチボックスにはセル/キルボタンとハザードランプのスイッチが装備されています
- ガソリンタンクの容量は16Lになります。WMTCモード値(22.7㎞/L)で計算すると、航続距離は363.2㎞。ちなみに今回の試乗ではさまざまなシチュエーションを約400㎞走行し、燃費は23.8㎞/Lでした
- シートはライダーとタンデマー一体型ですが、トレールモデルのようにフラットな形状ではなく、ライダーとタンデマーの間に段差が設けられています。肉厚で座り心地がよく、長時間走行にも適しています。シート高は850㎜
- リヤキャリアは標準装備になり、タンデマーが体を保持するためのグラブバーとしても活用できます。トップケースを装着する場合には、別途ベースを用意する必要があります
- メインキーを使ってシートを取り外すことができますが、シート下に収納スペースはありません。ただし、車載工具とETCの車載器が装備されています
- ステップのペグには振動軽減のためのラバーが装着されていますが、取り外すことができます。外すとオフロード走行時にブーツとのグリップが向上。またブーツと接触するメインフレーム部分には樹脂製カバーが組み込まれています

- ダート走行をすると、フロントタイヤが小石などを巻き上げ、ラジエターコアに当たることがあり、それによりラジエターが破損することも。そのため簡易的なコアガードが装備されています
- ダートを走るとエンジン下部が岩などに当たることもあります。その際クランクケースをガードするためのアルミ製スキッドプレートが装備されています。なお、2025年モデルまではオプション扱いでした
- エンジンは新設計の水冷4ストロークOHC4バルブ並列2気筒754㏄を搭載。低〜中回転域での力強いトルクを発揮し、さらに、高回転域まで余裕が感じられ、スムーズに吹け上がる出力特性に仕上げられています。クラッチレバーの操作荷重軽減とシフトダウン時の後輪のホッピングを抑制するアシスト&スリッパークラッチを採用しているのもポイントです
- エキゾーストシステムはトレールモデルのようなアップタイプではなく、ダウンタイプとなります。サイレンサーは異形断面&デュアルエンドとなっており、車体全体の雰囲気にマッチしています

- リヤブレーキにはφ256㎜のシングルディスクが採用され、ABSも組み込まれています。ただし、リヤのABSに関してはライディングモードのUSERで解除することが可能
- アルミスイングアームとリンク式ショックユニットを組み合わせたリヤサスペンション。2025年モデルでセッティングが見直されています。リヤのホイールサイズは18インチで、標準タイヤはメッツラーのKAROO STREETを履きます
- 倒立フロントフォークも2025年モデルで仕様変更を受けています。ホイールは21インチのワイヤースポークタイプで、タイヤは90/90-21サイズになります。前後ともにチューブタイヤとなります
- フロントブレーキはφ310㎜のダブディスクに、片押し2ポットキャリパーを組み合わせます。オンロードでは必要十分の制動力が確保され、コントロール性も良好。リヤと違ってABSの解除はできません
【文:吉田 朋(外部スタッフ)・写真:関野 温(外部スタッフ)】

















































