セルスターターやキルスイッチ、クラッチにアクセルなどなど……はじめてバイクに触れる時って、何をどうやって操作すればよいのかわかりませんよね。
今回はこれからバイク免許の教習所へ通う人に向けて、実技講習までに知っておきたいバイク各部の名称やその役割を解説します。
実技講習がスムーズになる「バイク各部の基本項目」を知っておこう!

(写真はイメージです)
バイクの教習所へ通って、晴れて免許を取得することができれば、いよいよ憧れのバイクライフがスタートします。
バイクの教習所では、交通教本などを使って交通ルールなどを座学で学ぶ「学科教習(クルマの免許があれば免除)」と、実際に教習所内のコースでバイクの運転技術を学ぶ「実技講習」のそれぞれの教習を受けて卒業検定に合格する必要があります。
そこでこの記事では、これからバイクのMT車(マニュアル・トランスミッション車)の免許を取りに行く人に向けて、実技講習の前に知っておきたいバイクの基本操作とその役割について解説したいと思います。
今回はトラディショナルなデザインが人気のHonda「GB350」を使って、一般的なバイク各部の名称やその役割について解説します!
キーシリンダー(イグニッション):バイクの主電源を入れるための鍵穴
キーを差し込んでバイクの主電源を入れる場所のことを「キーシリンダー」または「イグニッション スイッチ」などと呼ばれます。
車種によってはこのキーシリンダーの位置が異なる場合もありますが、一般的な車両は概ねメーターパネル下のハンドルトップブリッジ辺りに搭載されていることがほとんどです。
一般的にはキーを差し込んで時計回りに回せばバイクの主電源をONにすることができるようになっています。しかし、クルマと違いキーを回すだけではエンジンは始動せず、後に紹介する「セルスターターボタン」を押すことでエンジンが掛かる仕組みになっています。
また、ほとんどの車種ではこのキーシリンダーに一体型で盗難防止用の「ハンドルロック機構」が備わっています。ハンドルを左に切って、キーをさらに左に回す(押し込みながら回す場合もあります)とハンドルを動かすことができなくなり、キーが無ければハンドルロックを解除できない仕組みになっています。
サイドスタンド(センタースタンド):バイクを駐停車させるための装置
「サイドスタンド」とは、駐停車の際などにバイクを自立させておける装置のことで、単純に“スタンド”と呼ぶこともあります。
足でスタンドレバーを簡単に上げ下げできるようになっています。
このサイドスタンドには、ほとんどの車種に誤発進や思わぬ転倒防止などを避けるためにサイドスタンドスイッチという安全装備が備わっています。サイドスタンドをしまい忘れて発進しようとするとエンジンが停止するセーフティ機能もありますので注意して下さい。
またバイクによっては、車体を垂直に立てられる「センタースタンド」と呼ばれるスタンドが備わっている車種もあり、写真のGB350はセンタースタンドとサイドスタンドの両方が装備されています。
センタースタンドはリアタイヤ(後輪)を浮かせて垂直にバイクを停車させることができるので、メンテナンス時や長期保管の際に、利用しやすいスタンドになっています。
セルスターター(セル):エンジンを始動させるボタン
バイクのエンジンを始動させるためのボタンが「セルスターター」です。
“セルフ・スターター”の略で、単純に「セル」と呼ばれることもあるこのボタンは、バッテリーの電力を使ってエンジン付近に搭載されている「セルモーター」を回すための機構になります。
先ほど紹介したようにキーでバイクの電源をONにしてからこのボタンを押せば、キュルキュルッ…とセルモーターが回り始めてエンジンが始動する仕組みになっています。
キルスイッチ:エンジンを緊急停止させるボタン
通常、バイクのエンジンを切る時は、基本的に先ほどのキーリンダーをOFFにしてエンジンを停止させますが、直ちにエンジンを止める必要がある時などに使う緊急停止ボタンが「キルスイッチ」です。
通常はバイクのハンドルの右側に目立つように“赤いボタン”で配置されていて、押すだけで点火系統への電気供給を遮断させてエンジンを停止(ただし主電源は入ったまま)させることができます。
近年の車両は写真のGB350のようにセルボタンとキルスイッチが一体型になっているタイプも増え、下側に押すとセルスターターが始動し、上側に押すとキルスイッチが作動するデザインのものもあります。
キルスイッチは、うっかりバイクを倒してしまったり、走行中からの転倒時など緊急用として使うものなので、普段はあまり使わないかもしれません。ですがイグニッションをオンにしているにも関わらずセルボタンを押してもエンジンがかからない場合などは、キルスイッチが何かの拍子でOFFになっていないかを確認してみてください。
フロントブレーキレバー:前輪のブレーキ制御を行う装置
一般的なバイクではハンドルの右側に備わっているレバーが「ブレーキレバー(フロントブレーキレバー)」です。
レバーを手前に引く(握る)ことでバイクのフロントタイヤ側のブレーキが作動します。
バイクは前輪と後輪で別々のブレーキ機構を備えているのが一般的ですが、その中でもフロントブレーキレバーは制動や速度調整をメインで行うためのとても重要なパーツになります。
はじめはフロントブレーキレバーをどのくらい握ればどのくらいブレーキが効くのか、感覚を確かめながらゆっくり丁寧なレバー操作を行うようにするとよいでしょう。
フットブレーキ(リアブレーキ):後輪のブレーキ制御を行う装置
先ほどのフロントブレーキは前輪の制動力を調整するレバーでしたが、こちらの「フットブレーキ(リアブレーキ)」は右足で踏み込むことで後輪(リアタイヤ)のブレーキを作動させるための機構です。
通常、右側のステップ(フットペグ ※足を置く場所)位置の前方にブレーキペダルが装着されており、ハンドル右に搭載されているフロントブレーキと一緒に使うことが多いです。バイクを停止させるだけでなく車速のコントロールにも使用します。
また、坂道発進などフロントブレーキレバーが握りにくい状態でアクセルを回さなければならない時などに使うこともあります。
バイクのリアタイヤはエンジンのパワーがミッション(ギア)やチェーンなどを伝って直接回転させている「駆動輪」になります。一般的にリアブレーキはフロントブレーキほどの制動力は得られません。しかし、速度調節や走行中の車体を安定させやすいブレーキなので、フロントブレーキとリアブレーキを上手に使い分けられるようになるのが理想的です。
スロットル(アクセル):エンジンの回転数を制御する装置
「スロットル(アクセル)」は、一般的にハンドル右側に搭載されていてバイクの発進や速度調整を行う機構です。
このスロットルを回すことでエンジン内にガソリンと空気の混合気が送り込まれ、エンジンの回転数が上がっていく仕組みになっています。
ギアを1速に入れ、後述のクラッチレバーの操作と連動させつつ、ハンドル右側の「スロットル(アクセル)」を回せば、エンジンのパワーが後輪に伝わってバイクが動き始めます。
発進する時はライダーから見て、スロットルを手前に回し、奥側に手首を戻すとOFFにできます。
一般的なバイクはハンドル右にフロントブレーキのレバーが搭載されているのは先述の通りですが、バイクはこのスロットル操作やブレーキ操作、後述するクラッチレバー操作を連動させて運転する乗り物なので、慣れるまではゆっくり丁寧なスロットル操作を心掛けたいところです。
クラッチレバー:動力をミッション(ギア)に伝達・遮断させる装置 ※MT車の場合
ハンドル左に搭載されているレバーが「クラッチレバー」です。
“クラッチ”とは、いわゆる「動力伝達装置」のことで、エンジンで発生した動力をミッション(ギア)に伝えたり、切り離したりするための装置です。
このレバーを握ることでクラッチが切れると、動力を遮断させることができ、離すことでミッションに動力を伝えることができます。
バイクをゆっくりスタートさせたり、低速でコントロールするには「半クラッチ」が必要になります。
半クラッチとは、その名の通り半分クラッチが繋がった状態のことで、エンジンの動力をいきなり全て伝えるのではなく、徐々に伝えていくための操作方法となります。
▼クラッチ操作をもっと詳しく知りたい方はこちら!
シフトペダル:ギアを足でチェンジさせる装置 ※MT車の場合
一般的なマニュアルトランスミッション(MT)のバイクは、ギアチェンジを足で行うための「シフトペダル」が左足側に備わっています。
ほとんどのバイクでは、後述するニュートラル(N)の状態から、ペダルを踏み込むと1速に入り、2速以上はペダルを蹴り上げることでギアチェンジさせていく『リターン式』が採用されています。
クラッチレバーを握り、シフトペダルを足のつま先で上下させることでギアチェンジができるようになっていて、各ギアは1速から2速、3速〜と段速を上げていくほど速いスピードに対応します。
ちなみに写真のGB350は、トラディショナルなデザインになっているため、シフトペダルの後ろ側にもペダルがある「シーソーペダル」が採用されています。後ろ側のペダルをかかとで踏み込むことで前側のペダルとは逆の操作ができるようになっています。
※一般的なロードスポーツ車には後ろ側のペダルはありません。
ニュートラル:ギアが何も繋がっていない状態
「ニュートラル」とは、バイクのギアが何も繋がっていない状態のことを指します。
バイクの教習所では教官から説明を受けるときなどに「ニュートラルにしてエンジンを停止して下さい」と指示を受けることが多いので必ず覚えておきましょう。
バイクは先ほど紹介したシフトペダルを足で操作する際に、1速と2速の間にあるのがニュートラルポジションとなります。
一般的なマニュアルトランスミッションのバイクは各ギアの順番が『1速←N→2速→3速→4速→5速→6速』に配置されており、「N」の位置にシフトペダルを合わせるとクラッチレバーを操作しても動力が伝達されないフリーの状態にすることができます。安定した場所での駐停車やバイクを押して歩くような場面ではギアをニュートラルの位置に合わせるとよいでしょう。
一般的なバイクはギアがニュートラルに入ると、メーターパネルに「N」のマークが緑色に点灯する仕組みになっているので安心です。
また、近年のバイクは写真のGB350のように「ギアポジション・インジケーター」が備わっているバイクも増え、走行中に現在のギアが何速に入っているかひと目でわかる車種も増えています。
はじめはシフトペダルをニュートラルの位置に入れる感覚にちょっとしたコツが必要になる場合もありますが、クラッチ操作と同じで何回も操作して慣れることも大切です。
これらの基本項目を覚えて“バイクを操る楽しさ”を体感しよう!
いかがでしたか?
まずはこれらの基本項目とその役割を知っておくことがバイクライフをはじめる第一歩。
これからバイクの免許を取りにいきたい!っと思っている人は、教習所に行く前に、是非覚えておいてくださいね!
また教習所を卒業された後に「まだバイクに乗るのに不安だな・・・」という方には、
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【文:岩瀬孝昌(外部ライター)】