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新品タイヤの『皮むき』が必要な理由を知ってる?タイヤを交換したら“慣らし走行”をする理由をメーカーに聞いてみた!【脱! バイク初心者 虎の巻】

新品タイヤに交換した後は「皮むき」ともよばれる慣らし走行をすることが奨励されています。
では、何故新品タイヤは慣らし走行が必要なのでしょうか? 今回はタイヤの皮むきについて解説します。

タイヤの「皮むき」って?

愛車のタイヤを新品に交換すると、見た目も乗り味も良くなって気持ちいいですよね。

でも、交換後すぐに交換前と同じペースで走るのはちょっと待って!

もしかしたら「新品にしたのに何故?」と思われる方がいるかもしれませんが、バイク用品店などの店頭で見かけるタイヤを思い出してみてください。ご自身の愛車が履いているタイヤと違って、なんだか表面がツヤツヤしていませんか?

店頭に陳列された新品タイヤ。表面がツルツルとしていて艶があります。

実はこの状態の新品タイヤには「皮むき」ともよばれる慣らし走行が必要なんです!

ではどうして新品タイヤには慣らし走行が必要なのでしょうか?

タイヤの慣らし走行が必要な理由

ということで今回はバイクのタイヤを製造・販売する井上ゴム工業(IRC)さんにタイヤの皮むきについて質問してみたところ、以下のような回答をいただきました!

Q.新品タイヤに交換した際に行う「皮むき」はどうして必要なのですか?

A.タイヤの地面に接するトレッド表面を実際の路面に慣らし、本来のグリップ力を発揮させるために皮むき(慣らし走行)が必要になります。

たしかに、新品タイヤって最初は表面がツルツルですよね。

製品写真からも新品タイヤの表面は凹凸が少なく艶があるのがわかります(写真はIRC「RMC810」)

この状態だと、タイヤ表面と実際の路面との形状に大きく差異があり、本来のタイヤのグリップ性能を発揮することができません。そんな状態でタイヤに強く負荷をかけるようなコーナリングや急ブレーキ、急発進は想像するだけで危険だとわかります。

そのため、タイヤの表面を実際の路面に慣らすために慣らし走行が必要となるのです。

上写真はCT125・ハンターカブに標準で装着されているIRCのGP5。
左の写真が、ある程度慣らし走行を終えたタイヤで右が新品タイヤです。右の写真の新品タイヤは、トレッド表面に艶があるのに対し、ある程度走った左側のタイヤは表面が削れて細かな凹凸ができ、艶がなくなっています。

写真ではわかりづらいかもしれないので念のため「実際の路面に表面を慣らす」イメージについてもう一歩踏み込んで聞いてみました。

Q.「タイヤの地面に接するトレッド表面を実際の路面に慣らし、本来のグリップ力を発揮させるため」とのことですが、「表面を慣らす」というのは下の図のような認識で合っていますでしょうか?

A.この、イメージで合っています。

とのことで、上図をイメージすると「タイヤの慣らし」について理解しやすいかもしれません。

また、タイヤは型にゴムを押し付けることで成形されます。その際、成形されたタイヤを型から剝がしやすくするためにメーカーによってはシリコンを主成分とした「離型剤」という薬剤が型に塗られています。新品タイヤの表面のツルツルとした艶はこれが原因の場合もあります。

型から剥がしやすい=滑りやすいというワケで、離型剤が付着した状態もスリップの原因。この離型剤を落とすのも慣らし走行に含まれます。

では「皮むき」と呼ばれる「慣らし走行」はなにをすればいいんでしょうか?

慣らし走行は何をすればいい?

タイヤの表面を実際の路面に慣らす、ということですが実際にはどのようにすればいいのか。

実は難しいことは何もなく『走り始めてから100kmほどは急のつく操作を避けて走るだけ』でした!

上記で皮むきについて質問した井上ゴム工業さんの製品をはじめ、各タイヤメーカーでは概ね100km以上の走行を推奨しています。
※各メーカーごとに推奨する慣らし運転の速度や距離が異なり、冬用タイヤの場合200km以上の場合もあります。

走っているうちにタイヤの表面は自動的に削れるため、難しい作業をする必要はありません。

逆に「表面を削らなきゃ!」と装着後すぐに深くバンクさせたりすると、かえってスリップする危険が高まります。トレッド面の端から端まで表面を慣らしたい場合は、徐々にバンク角を増やすなど慎重な運転を心がけましょう。

また、タイヤ表面に離型剤が残っている場合でもパーツクリーナーなどのケミカルで脱脂するのはあまりおすすめできません。

表面の離型剤の油分はとることができますが、タイヤの性能を保つのに必要な油分まで取り除いてしまいタイヤの寿命低下などに繋がってしまうのでやめておいた方が賢明です。

慣らし走行をしていれば自然と表面の離型剤も落ちていくので焦らずにタイヤを慣らしてあげましょう。

そして、新品タイヤによっては下写真のようなタイヤからピョコピョコと飛び出す“ヒゲ”のようなものがありますよね。

正確には「スピュー」と呼ばれるタイヤを製造する段階で発生する突起で、製品によってはあらかじめカットされているものもありますが、写真のように残った状態で店頭に並ぶものも多くあります。

もしかしたらこのスピューによる走行性能の影響を気にされる方もいるかもしれんませんが、IRCさんに伺ったところ、これに関しても特に注意することはなく、慣らし走行で自然と取れるのを待てばいいとのことでした。

新品タイヤは十分に慣らし走行を行って安全で楽しいツーリングを!

上記で紹介した通り、新品タイヤに交換した後の慣らし走行期間中は丁寧な運転を心がける必要があります。

タイヤが新品になると、嬉しくて思いっきり走りたくなってしまうかもしれませんが、タイヤの皮むきが終るまでは少しの間、我慢です……。

安全に楽しくツーリングが楽しめるよう、新品タイヤはしっかり“慣らし走行”を行いましょうね!

【文:石神邦比古(外部ライター)】

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