長年にわたりロードレースの世界で奮闘する岡崎静夏さんですが、オフシーズンのトレーニングにモトクロスを取り入れるなどの経験から、“土の上”も得意。フルサイズトレールモデルのCRF250Lも、颯爽と乗りこなしていました。
じつは気軽さもあるオン・オフロードモデル
前回で少し触れたのですが、8月上旬に開催された鈴鹿8耐で、私は岩田悟選手、高橋裕紀選手、小山知良選手を擁するチームATJのピットクルーを務めました。担当したのは、フロントのアクスルシャフト。もちろん本番に向けて事前に実車で練習したし、自宅では素早くシャフトを抜き取る動作のトレーニングもして臨んだのですが、私がミスすればチーム全体に迷惑がかかるので、自分が走るレースのときよりプレッシャーを感じました。
チームは、トップ10まで約1分差の総合成績10位。なにはともあれ、皆さんお疲れさまでした!
なんてロードレースの話題とはカテゴリーがガラリと変わりまして、今月の私が相棒に迎え入れたのは、オフロード系のCRF250Lです。初代登場から10年以上の歴史があるこの車種は、’20年末のフルモデルチェンジでエンジン、車体ともに刷新。そして’23年型では最高出力や最大トルクを維持したまま最新の排ガス規制に適合化させ、ナックルガードを標準装備しました。
仕様は2タイプあり、スタンダードのCRF250Lは830mmのシート高によりツーリングや市街地走行での扱いやすさも重視。対してCRF250L〈s〉は、前後サスの伸長によりサスストローク量や最低地上高を増やしてオフロード走破性をより高め、シート形状も専用化してオフロード走行時のライディングポジションの自由度を向上させた仕様となっています。
私が今回乗ったのはスタンダード。’23年型での熟成時にこちらの仕様のみ車体色も変更され、洗練されたグレーを新採用しています。
モタードっぽい雰囲気でオンもオフも気軽に!
オンロードでのCRF250Lは、ライダーが積極的にスポーツしたくなるようなフィーリングではないとはいえ、公道を普通にツーリング、あるいは移動する程度なら、もちろん何の問題もありません。〈s〉仕様よりも短めの前後サスは、公道の舗装路を走らせたときに硬すぎず柔らかすぎず、ゆったり走らせたときに適度なピッチングがあり、初心者でも操縦しやすいと感じるかも。私自身は、横から見たときの車体姿勢を含め、どこかスーパーモタード系のモデルに近い印象を受けました。
ただし、実際にはスーパーモタード系よりはオフロード走行を意識した設計。走るのが舗装路オンリーで、高速道路をよく使うとか長距離ツーリングが多いとかなら、タイヤ銘柄の変更は検討してもいいかもしれません。というのも、純正装着されているIRC製GP-21/22は、けっこう本格的なブロックパターンで、舗装路での快適性や安心感やノイズなどの点では、どうしても一般的なオンロードタイヤに劣るからです。とはいえ、本格的なブロックパターンタイヤを履いていることが、河川敷や林道などの砂利道やダートを簡単に楽しめる走行性能につながっていることも事実。自分がどのような使い方をするかでタイヤ銘柄を選ぶと、よりCRF250Lの長所を引き出せると思います。
エンジンパワーは、オフロードでちょうどよく、極低回転域でトコトコ走ってもエンストしそうな気配がなく、それでいてスロットルを大きく開けたときにドカンと出力が立ち上がりすぎないので、手の内でコントロールできる感触。オフロード走行経験が少ない人でも、恐怖心は少ないと思います。そのぶんオンロードでは、とくにスゴさを感じることはありませんが、だからこそ操縦しやすく気軽だし、公道の法定速度を考えたらこれでも十分な性能です。
オフロードバイクなので装備は比較的シンプルですが、後輪のABSをキャンセルできるスイッチを搭載している点が高評価。これのおかげで、未舗装路で積極的にリヤタイヤをロックさせる操作も可能です。
〈s〉仕様やモトクロッサーに近い設計のフルサイズオフ車と比べれば、足着きを含むオンロードでの扱いやすさに優れ、でも旅先の林道を気軽に走れてしまうのがいいところ。ホンダはこのマシンを「オン・オフロードモデル」と表現していますが、まさに2ウェイに楽しめ、どちらのシーンでも過不足なく気軽さも感じられる、ちょうどいいレベルにあります。
こんなに遊べるバイクが62万円台なんて、とてもお買い得。抜群のコスパだと感じました!
CRF250L:SHIZUKAの評価
1)スタイリング:’23年型に採用されたグレーの新色なら、普通のツーリングウエアなど、バリバリのオフロード装備以外でも似合うので使いやすそう!
2)スポーツ性:未舗装路では、気負わず楽しんでいたらいつの間にかスポーツライディングになっていた……という感じ。カリカリすぎないのが魅力。
3)ツーリング:高速道路を長距離巡航するよりも、一般道中心で楽しむのがオススメ。できることなら、林道などのダート区間も旅程に加えたいところ!
4)街乗り:ハンドル幅や荷物積載性、足着き性などのネガティブ要素があるとはいえ、日常の市街地移動は何も問題なく余裕でこなせますよ!
5)コストパフォーマンス:高速道路もダートも走れて、この時代にこの価格というのは超リーズナブル。「とりあえず1台買っておこうか……」というレベル!?
SHIZUKAのお気に入りポイント
最新型が採用するシックな車体色
’23年型の新色となるグレーは、〈s〉に継続採用される従来のレッドと比べて落ち着いた雰囲気。派手な車体色が好みではない人にも受け入れられやすいと思います。いい意味でHonda色が濃すぎないし、私自身、このグレーは好き!
軽二輪クラスでもABSがカット可能
ビッグアドベンチャー系では後輪のアンチロック機構をキャンセルできる機能を備えた車種も珍しくないですが、250ccクラスでこの機能を標準装備してくれているのが好印象。オフロードで、リヤをスライドさせながら走れます!
●まとめ:田宮 徹 ●写真:楠堂亜希
※当記事は(株)内外出版社ヤングマシン掲載記事(2023年10月号)の内容を編集・再構成したものです。