免許を取得して初めてのバイクにスーパーカブを選ぶ人が増えています。
1958年に最初のスーパーカブ、C100が誕生した時は、どんな人でも簡単に乗ることができるように…と設計されていました。
イージーな操作方法は、半世紀以上たった現在でも受け継がれ、更に扱いやすく進化しています。
だから初めてバイクに乗る人も、ちょっとした操作を覚えるだけで走り出すことができるのです。
今回は、スーパーカブ110を題材として、スーパーカブの基本的な操作方法について説明していくことにしましょう。
初めての人にも優しい簡単操作
最初にスーパーカブ110を運転するために、覚えておかなければいけない必要最低限な部分を説明しておくことにしましょう。
まず右手で操作するのはアクセル(スロットルグリップ)とフロントブレーキ。
アクセルはグリップを手前にひねると加速し、戻すと減速します。
フロントブレーキの操作は自転車と同じ。
強く握れば効きも強くなります。
右足で操作するのはリアのブレーキです。
左足ではギアチェンジを行います。
操作の仕方は後で説明しますが、前に踏み込むとギアが上がり、後ろを踏むとギアが下がります。
スーパーカブシリーズはホンダ独自のクラッチ機構によってクラッチレバーがないので、左手でのクラッチ操作をする必要はありません。
押し歩きでは少しだけ車体を傾ける
バイクに乗ると避けて通れないのが取り回し。
エンジンのかかっていない状態でバイクを移動させることです。
スーパーカブ110は、原付スーパーカブ50と車格、車重もあまり変わりません。
力の弱い人でも、比較的無理なく動かすことができるはずです。
大型のバイクだと「体全体でバイクを支えて・・・・」という感じになることもありますが、スーパーカブ110ならハンドルを持って移動させるだけ。
バイクが自分と反対側に傾いてしまうと支えるのが難しくなってしまうので、ほんの少しだけ自分の方に傾ける感じです。
必要以上に傾けなければバイクを支える力はほんど要りません。
バックさせるときは、片手でシート後ろにある荷台をつかむとバイクを押しやすくなります。
カゴや荷台に重い荷物を積んだ不安定な自転車を動かすよりは、はるかに簡単だと私、ライターの後藤は思います。
サイドスタンドとセンタースタンドを使い分ける
バイクを駐めるときに使うのはサイドスタンドかセンタースタンド。
サイドスタンドは簡単に引き出せるし、バイクを傾けて車体をあずけるだけなので、ほとんどの場合はサイドスタンドを使います。
サイドスタンドは乗車したままでも引き出しやすいようになっています。
センタースタンドはバイクを直立させるスタンドです。
バイクに荷物を積むときなどは、センタースタンドで直立させたほうが作業しやすいでしょう。
整備したり洗車をするときもセンタースタンドを使うと便利。
左右に傾かず、後ろのタイヤが浮き上がるので手で回すことができます。
センタースタンドをかけるには、少しだけコツが必要です。
バイクを力で持ち上げようとするとスーパーカブ110でもさすがに重さを感じます。
でもそこもキチンと考えて設計されていて、センタースタンドの左端の部分を強く踏むような力を加えることでテコの原理により、センタースタンドがかけやすくなるんです。
もう少し詳しく説明しましょう。
右足でセンタースタンドの飛び出している部分を踏み、右手でキャリアを持ちます。
眼の前に大きな隙間があって、その隙間の上下に右足と右手をかけているような状態をイメージしてみてください。
この隙間を広げるような感じで力を加えれば、大きな力を使わなくてもセンタースタンドがかけられるはずです。
右足や右手へバラバラに力を加えるのではなく、全身を使うのが1つ目のポイント。
2つ目は真上に引き上げるようにするのではなく、少しだけ後ろに車体を動かすように力を加えることです。
基本的にこのやり方はビックバイクも同じなので、スーパーカブで慣れておけば、後々ビックバイクに乗るときに役立つかもしれません。
クラッチ操作がないイージーな運転
バイクに跨るときは、足を後ろに持ち上げる人が多いかと思いますが、スーパーカブシリーズは、シート前にタンクがないので、前を跨ぐようにして乗ることもできます。
そのときの服装などでやりやすい跨り方をしてしまって大丈夫です。
乗車姿勢はこんな感じ。
シート高はスーパーカブ50より3mm高くなっているだけだから足つき性は良好です。
小柄な人でも車体を支えるのに不安はないでしょう。
エンジンをスタートするところまではスクーターと一緒です。
キーを回してセルボタンを押すだけ。
このとき、ギアが入っているとエンジンをかけるセルモーターが回らないので、ニュートラルになっていることを確認してください。
ニュートラルだったら、メーターパネルに緑色のランプがついているはず。
もしもニュートラルランプが消えていたらギアが入っているということなので、シフトペダルを動かしてギアをニュートラルにします。
ちなみにエンジンがかかっていない時にシフトチェンジしようとすると、ギアが入りにくい場合があります。
これはギアの歯車同士が当たっているから。
もしもシフトペダルを踏んでもギアが変わりにくいようだったら、バイクを少し動かしてみてください。
ギアが少しだけ動いたら変速できるようになるはずです。
エンジンがかかったらギアを1速に入れます。
スーパーカブ110にはクラッチがないので、クラッチ操作をする必要はありません。
シフトペダルの前側を一つ踏んだらカチャンと音がして緑色のニュートラルランプが消えます。
これで1速に入りました。
スーパーカブ110の場合、ギアが何速に入っているかメーターに表示されるようになっています。
後はスロットルを開ければクラッチが自動的につながり、バイクが動き出します。
とても簡単です。
走り出したらシフトチェンジ
アクセルは右手で操作します。
ひねると加速して、戻すと減速。
1速で加速していくと回転が上がってくるので、シフトペダルの前側を踏み込んで2速に入れます。
ギアが上がるとエンジンの回転が低くなり、バイクのスピードが上がるのが分かることでしょう。
構造はまったく違いますが、自転車の変速機と似たようなシステムだと考えておけば良いでしょう。
スーパーカブ110には、ギアチェンジをしたときのショックをやらわげる2段クラッチが採用されていますが、ギアを上げるときは、アクセルを一度緩めてシフトペダルを踏み込み、変速が終わってからアクセルを開けるようにしたほうが、よりスムーズに変速できます。
こうやって加速しながらギアを上げていくと最終的にギアは4速まで入ります。
スーパーカブ110は、ロータリーというシフトパターンになっています。
4速に入っている時、更にシフトペダルの前を踏み込むとニュートラルに入るのです。
これの何が便利かというと、街中などストップアンドゴーが多いとき。
止まるとき、普通のバイクなら1速まで一つずつシフトダウンしなければならないのですが、ロータリーミッションなら、このときにシフトダウンの必要がありません。
交差点などで止まったら、そのままシフトペダルを踏み込めばニュートラルになるからです。
スタートするときは、もう一度シフトペダルの前側を踏み込めば1速に入るのでシフトする回数が大幅に減ってスマートな運転が可能です。
ホンダ独自の機構によって走行中は4速から踏み込んでもニュートラルに入らないようになっているので、不用意な操作で走行中にニュートラルになって慌てる心配もありません。
交差点を曲がるようなときは完全に止まらず減速するだけなので、速度が低くなるのに応じてシフトダウンを行い、エンジンが適切な力を出せる回転数にする必要があります。
ギアを落としたい場合は、シフトペダルの後ろ側を踏んでください。
踵で踏んでも良いですし、足を離してつま先で踏むのでもかまいません。
ブレーキは前後同時に使うのが基本
ブレーキ操作は一般的なバイクと同じ。
ハンドル右側にあるブレーキレバーでフロントブレーキをコントロール。
右足のペダルでリアブレーキを調整します。
減速するときは前後同時に使うのが基本。
片方だけだと制動力が低下してしまったりする可能性があるからです。
スーパーカブ110の場合、フロントブレーキにABSが装備されているので、強く握ったときにフロントタイヤがロックしてしまうことを防止して、安定したブレーキングをサポートしてくれます。
ウインカーは左手の親指で操作。
ホンダのバイクは、ウインカースイッチが低い位置にあるので、手を大きく動かさなくても操作しやすくなっています。
曲がり終わったら、ウインカースイッチを元に戻しておくことをお忘れなく。
以上がスーパーカブの基本操作です。
クラッチがないのでイージーに乗れますが、それでいてマニュアルミッションの楽しさも感じられるのがスーパーカブの素晴らしいところ。
走る喜びを存分に楽しんでみてください。
【文/後藤武(外部ライター)】