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世界中の旅人と冒険者に愛されるトランザルプはどんなマシン？新型まで受け継がれたアドベンチャーDNA

公開日 2023.02.27 / 最終更新日 2023.05.08

最近は大型のアドベンチャーモデルやデュアルパーパスモデルが人気になっています。
高い高速巡航性能とオフロードでの走破性を両立させ、多くの荷物を搭載して、どんなシチューエーションでも快適に走ることができる万能マシンだからでしょう。
実をいうとホンダは80年代半ばに、このコンセプトでマシンを作っていました。
それがTRANSALP（トランザルプ）600Vです。

雄大なスケールでツーリングするマシン

トランザルプとは、アルプスのような標高の高い山々を越えていくこと。
そんな雄大なスケールでツーリングをするバイクとして開発されました。
高速道路だけでなく、峠道や市街地から未舗装路まで様々なシチュエーションを快適に走ることが想定された、当時としてはまったく新しいスポーツバイクだったのです。
V型２気筒583ccの力強いエンジンにオフロードの走破性を高めるサスペンションと車体を組み合わせ、高速巡航を快適にする大型のカウリングを装備しています。

ワークスマシンNXR750から受け継いだもの

トランザルプの開発にあたっては当時パリ・ダカールラリーに参戦していたワークスマシンNXR750の技術がフィードバックされました。
パリ・ダカールラリーは砂漠を中心に10000km以上を走破するという世界で最も過酷なラリー。
ここに満を持して投入されたのがホンダのワークスマシンNXR750です。
NXR750には様々な技術が投入されていましたが、外観で目立つのはフレームマウントされた巨大なカウリング。
空力を考えただけではなく風や砂、突然の障害物からライダーを守るための装備でした。
オフロードレーサーにフレームマウントのカウルが装着されたのはNXR750が初めてでしたが、これ以降ラリーマシンではフレームマウントのカウリングがポピュラーになるほど効果がある装備でした。
長く過酷なラリーのために速く走るだけでなく、ライダーを疲れさせない快適性も考慮されました。
NXR750は、高性能なエンジンや車体性能、信頼性の高さなどでデビューから4連覇を達成するという無敵ぶりを発揮します。
この究極の条件下における快適性がトランザルプに与えられることになったのです。

ヨーロッパのオーナー達が語るトランザルプの魅力

低中速の扱いやすさを重視したエンジンと乗り心地、ハンドリングのすべてを高いバランスで追求したトランザルプはヨーロッパで大人気となりました。
2007年には排気量を拡大しインジェクションシステムPGM-FIが採用されたXL700Vトランザルプが誕生する等々進化し続け、多くの人に愛されています。

トランザルプ愛好家達が1万人以上集まっているSNSのグループ（HONDA XL 650 V TRANSALP）でオーナー達に感想を聞くと、いかにこのマシンが愛されているかが伝わってきました。
オーナー達から寄せられた写真とコメントの一部を紹介しましょう。

「とても良くできたマシンで、タンデムで荷物を積んで状態でも快適に移動し、どこへでも行くことができました。車体も安く、整備も簡単で自分で修理することも容易です」
「過小評価されていると思うくらいに素晴らしいバイクです」
「価格が安いのに良く出来ていて、これまでの旅で私を失望させたことは一度もありません。隣町へいくのも地球の裏側に行くのも、同じように走ってくれるバイクです」

フランス人アウトドアマンがトランザルプを愛する理由

フランス人のQuentinさんは、奥さんと共に夫婦で2台のトランザルプを所有し、その様子を自身のSNS（@quent_srd）で発信しています。
アクティブに様々なアウトドアを楽しみ、刺激を求めて旅を続けるQuentinさん夫妻にとってトランザルプは欠かせない相棒だと言います。

「トランザルプはスイスアーミーナイフのように何をしても優秀で、どこまで走っても快適です。オフロードも、旅行も、通勤も、高速道路も、二人乗りも、すべてこれ一台でこなすことができます。何でもできるんですよ。スポーツバイクのように刺激的な速さがあるわけではありませんが、そこも良いところだと思っています」

「私がこのバイクを選んだ理由には、ホンダの伝説的な信頼性があります。自分で修理ができ、ほとんど故障しません。フランスでトランザルプはとても人気があり、現在では当時の新車よりも中古の方が高く売られているような状態です」

「昨年の夏、このバイクでスロベニアのオフロードを走りに行きました。たった1日でイタリアを高速道路で横断し、オーストリアとスイスの小さな道を通って帰ってきました。3000kmを走りましたがオイルレベルを1回確認して、チェーンに注油を1回しただけです」

「低重心で、小柄な人にとっても足つきが良いというのも重要な点です。うちの奥さんは小柄ですが、やはりトランザルプに乗っています。私のバイクはエンデューロのオフロードコースに挑戦するために車高を8cm上げてもらいました」
ハードに使い倒すライダーであればあるほどトランザルプの真価が理解できるのかもしれません。

雄大な旅をするライダーに向けた新型トランザルプ

トランザルプは、ホンダの最新技術によって大きな進化を遂げることになりました。
2022年のミラノショーでXL750トランザルプが発表されたのです。
初代トランザルプ同様、目指したのは「雄大なスケールのロングツーリングを快適に楽しめるモデル」です。

エンジンは755cc270度クランクの直列2気筒で、扱いやすい中速トルク特性と高回転のパワーを両立。
軽量なスチール製ダイヤモンドフレームとSHOWAのSFF-CAフロントフォークとハイブリッド構造のスイングアームにプロリンクサスペンションを組み合わせることによって、軽快で扱いやすいハンドリングと高い安定性を実現しています。
21インチのフロントホイールを採用しているのは、オンロードでの走りだけではなく、オフロードの走破性も確保している証拠でしょう。

新型のXL750トランザルプに関して前述のQuentinさんがコメントしてくれました。
「新しいトランザルプは古いトランザルプのスピリットをリスペクトしてくれていると思います。シンプル＆ベーシックは万能ですね。デザインはレーシングマシンのような麗美なものと少し違いますが、それもトランザルプのアイデンティティのひとつ。アフリカツインとトランザルプは違うのです。ホンダが「小さなアフリカツイン」ではなく、本物のトランザルプを作ってくれたことに感謝します」
多くの人達の旅を支えてきたトランザルプ。
そのDNAは新型のXL750トランザルプへ確実に受け継がれています。