CBシリーズの代表であるCB1300シリーズ。
1992年に登場したCB1000 Super Four以降、30年以上にわたって多くの方々から愛されてきましたが、2025年のファイナルエディションで惜しまれつつも生産が終了することとなりました。
今回はそんな名車CB1300シリーズのルーツをたどってみることにしましょう。
CBの誕生

最初にHondaにとってCBがどんな存在なのか、ご説明いたします。
量産モデルにCBの名前が誕生したのは1959年。
Benly CB92 Super Sportでした。
当時は実用的なバイクが多かったのですがBenly CB92 Super Sportは4ストロークOHC 2気筒125ccエンジンを搭載した本格的なスポーツバイク。
北野元選手が浅間火山レースで優勝するなどしてその性能の高さを証明しました。
Benly CB92 Super Sportから少しして250ccの本格的スポーツモデル Dream CB72 Super Sportも登場。
当時のことをリアルに知っている人たちにお話を聞くと、CBは高性能ロードスポーツの代名詞という存在で、ライダーたちの憧れだったそうです。
世界の頂点にたった『Dream CB750 Four』

CBの名前を不動のものとしたのは1969年に登場したDream CB750 Fourでした。
量産の二輪車としては世界初のOHC 750cc4気筒エンジンを搭載したこのバイクは、2気筒エンジンが主流だったバイクの常識を覆し、世界中で爆発的な人気となりました。
圧倒的な動力性能によって生まれる余裕の走りや堂々としたその佇まいは世界一のバイクにふさわしいものでした。

ナナハンという言葉も生まれて、その後のビックバイクの人気を牽引する存在となります。
1980年代になると高性能化が求められるようになり、カウルが装着されたハイパフォーマンスマシンが主流になっていきました。
その結果、Dream CB750 Fourのように普遍的かつスタンダードなマシンは姿を消していくことになったのですが、このマシンの作り出したCBの世界観が、後のCB1000 Super FourやCB1300 Super Fourの誕生につながっていくことになるのです。
CBのフラッグシップモデルが復活

次世代のCBフラッグシップモデルを作ろうという動きが自然発生的に出てきたのは1980年代後半のことでした。
Hondaの社員の中にはDream CB750 Fourなど、往年のCBに憧れて育ってきたエンジニアたちがいました。
デザイナーの一人が描いたスケッチがキッカケとなり、自分たちが乗りたいと思えるようなマシンを作りたいという想いが一つにまとまっていきました。こうして次世代を担うCBのフラッグシップモデルの開発がスタートすることになったのです。
・心臓部には、水冷・4サイクル・DOHC・直列4気筒エンジンを搭載
・その体格はあくまでもセクシー&ワイルドであること
・走る者の心を魅了する感動性能を有すること
このコンセプトが「PROJECT BIG1」という設計思想になります。

ここから生まれたのがCB1000 Super Fourでした。
ですが、正式に発売となるまでにはかなりの時間がかかったそうです。
フラッグシップモデルでありながら、先端技術が使われていないという理由で販売する決定が下されなかったのです。
しかし、開発したエンジニアたちは簡単に引き下がりません。
直接お客様の声を聞きたいと考え、1991年の東京モーターショー(現ジャパンモビリティショー)にCB1000 Super Fourを参考出品。
これが大きな反響となったことから正式に発売されることが決定されました。
CB1000 Super Four T2が追加

CB1000 Super Fourは発売直後から好調なセールスを記録。
1994年には足回りなど各部を充実し、ビキニカウルを装着したCB1000 Super Four T2が追加されました。
CB1300 Super Fourの誕生

1996年には日本のバイク業界を大きく変える出来事がありました。
大型二輪免許が教習所で取得できるようになったのです。
その影響もあり、国内ではビックバイクの人気が急激に高まっていきました。
そんな状況の中でCB1300 Super Fourはモデルチェンジを受けることになりました。
1. 所有する感動
2. 跨った瞬間の感動
3. 太い走りの感動
4. 余裕の感動
5. 操り、征服する感動

5つの感動性能を追求し、水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ直列4気筒1300ccを搭載した CB1300 Super Fourが1998年に誕生します。
CBシリーズとしては最大排気量のフラッグシップモデルにふさわしい堂々としたスタイリングでありながら、取り回しの良い車体やトルク感あふれるエンジン特性などにより、走る喜びが十分に感じられるビックバイクになりました。

1999年には前後サスペンションに調整機構が追加されました。
センタースタンドも新たに装備して整備性が向上しています。

2000年9月に発売したモデルでは、フロントブレーキやリアホイールなど足回りの軽量化を図り、車両重量で5kgの軽量化を実現しています。
日本市場向けのビックバイクへ大変身

2003年、CB1300 Super Fourは大きな変更を受けます。
日本人ライダーの使い方を考え、先進の軽量化技術を盛り込んだCB1300 Super Fourが誕生したのです。
20kgもの軽量化を施し、三次元点火時期制御システムとPGM-FI(電子制御燃料噴射装置)の採用で鋭いスロットルレスポンスとスムーズな吹け上がりを両立させていました。
このモデルに乗ったときの感動を私、ライターの後藤は今でもはっきりと覚えています。
それまでのビックバイクは、動きも安定志向でどっしりしたバイクが多かったのです。
ところが新型CB1300 Super Fourは、1300ccの車体とは思えないほど軽快にバンクして向きを変え、低回転からでも大排気量エンジンのトルクを生かして矢のように加速していきました。
初心者には乗りやすく、上級者の技術が加わるとさらに自由自在感が増していくようなマシンだったのです。

当時、開発にあたったエンジニアの方とお話をしたとき、この気持ちよさの秘密をお伺いしました。
日本の道路を日常的に走る際に、低い速度でもビックバイクを操る楽しさを感じられるように、テストコースではなく一般公道で走ることを想定したテストが繰り返されたんだとか。
この後、CB1300 Super Fourは熟成を重ねていきますが、この感動性能の素晴らしさは変わらずに受け継がれていくこととになります。
CB1300 Super Bold’orが追加

2005年にはCB1300 Super Fourをベースに新設計のハーフカウルを装備し、高速走行時の風圧軽減と走行安定性を向上させたCB1300 Super Bold’orが登場します。

また、ABS搭載のCB1300 Super Four<ABS>とCB1300 Super Bold’or<ABS>を新たにタイプ設定しました。
熟成を重ねてビックバイク売上No1

CB1300 Super FourとCB1300 Super Bold’orは、国内のビックバイク販売台数で国内一位となる人気バイクになりました。
2008年には平成19年国内二輪車排出ガス規制に対応するためエキゾーストパイプにキャタライザーを装備。
エンジン回転の安定性を向上させるIACV(Intake Air Control Valve)を採用し、シート、ハンドル周りなどを変更します。
CB1300 SUPER TOURINGを追加

2009年にはCB1300 SUPER TOURINGが追加されました。
ワイドなウインドスクリーンがライダーへの風圧を軽減し、リアの両サイドには容量29Lのパニアケースを標準装備。
アップハンドルの採用によってゆとりのあるポジションを実現するなど快適なロングツーリングを実現するため数々の専用装備を採用したマシンです。
ブレーキシステムは、前・後輪連動ブレーキシステムとABS(アンチロック・ブレーキ・システム)を組み合わせたコンバインドABSを標準装備していました。

CB1300 Super FourとCB1300 Super Bold’orは、リアカウルを落ち着きのあるデザインに変更。
LEDのテールランプを採用してライディングポジションは、スポーティーな走行と快適なクルージングを両立させるためにハンドル形状を変更。
それまでのモデルに比べて14mm手前、23mm上方に移動させた形状になりました。
また、新形状のシートとスリムなサイドカバーを採用し、サスペンションのセッティング変更することで、座り心地を損なうことなく足着き性を向上させています。
モデルチェンジで大きく進化

2014年にCB1300 Super FourとCB1300 Super Bold’orはモデルチェンジを受けます。
このモデルチェンジにあたって、開発コンセプトを“威風堂々”感動のCBフラッグシップスポーツと定め、5つの感動を追求することにしました。
1. 所有する感動
2. またがった瞬間の感動
3. 太い走りの感動
4. 操る感動
5. 余裕がもたらす感動
1996年CB1300 Super Fourが開発されたときの5つの感動に似ていますが、少し変更されました。
時代の流れに沿って、CB1300シリーズの進化を観ていくととても興味深いものがあります。

トランスミッションは従来モデルの5速から6速に変更されています。
PGM-FI(電子制御燃料噴射装置)のセッティングを変更して新形状の小型マフラーを採用。

足回りでは新デザインの10本スポークアルミキャストホイールが採用されました。
軽快感があるだけではなく、運動性能向上にもつながる装備です。
幅をさらにスリム化したサイドカバーによって足つき性も向上。
両モデルともにABS(アンチロック・ブレーキシステム)を標準装備しています。
CB1300 Super Bold’orに関しては、ハンドル位置の変更で、さらにアップライトなライディングポジション。
フロントカウルがシャープな新デザインとなってLEDヘッドライトを採用しています。

また、両モデルにETC車載器と、グリップヒーターおよび専用インジケーターランプを標準装備したCB1300 Super Four E PackageとCB1300 Super Bold’or E Packageが追加されました。
各部を熟成してさらに魅力的に

2017年にCB1300 Super FourとCB1300 Super Bold’orはエンジンと車体を大きく進化させます。
エンジンの最高出力は7kW向上して81kWへアップ。
クラッチレバーを握る力を軽くするとともに、シフトダウンの強いエンジンブレーキによる後輪ホッピングを低減するアシストスリッパークラッチを採用しました。
チューニングを施した前後サスペンションによりニュートラルなハンドリング特性となり、フロントブレーキキャリパーのピストン径を最適化したことでブレーキ性能も向上しました。
CB1300 Super Fourには丸形LEDヘッドライトとシャープなデザインの小型バータイプLEDウインカーを採用。
ETC車載器、スポーツグリップヒーター、電装品の充電に便利なアクセサリーソケット(シート下)に装備しています。

2020年にはスポーティーで上質な走りを追求したCB1300 Super Four SPとCB1300 Super Bold’or SPが追加されました。

オーリンズ社と共同開発した専用フロントフォークとリアサスペンション、ブレンボ社製のラジアルマウント式モノブロック対向4ポットキャリパーをフロントブレーキに採用しています。
スロットルバイワイヤを採用

2021年にはCB1300 Super Four、CB1300 Super Bold’or、CB1300 Super Four SP、CB1300 Super Bold’or SPに、スロットルバイワイヤシステム(TBW)が採用されます。
スロットルグリップ操作を電気信号に変えることにより、緻密なスロットルバルブの制御を可能となりました。

走行状況や好みに応じてSPORT、STANDARD、RAINの走行フィーリングを選択できるライディングモードとHonda セレクタブル トルク コントロール(HSTC)、クルーズコントロール、急制動時にハザードランプを高速点滅するエマージェンシーストップシグナルなどもこのモデルから採用されました。
ついにファイナルモデルが登場

そして2025年、ついにCB1300の長い歴史が幕を下ろすことになりました。
CB1300 Super Four Final Edition、CB1300 Super Bold’or Final Edition、CB1300 Super Four SP Final Edition、CB1300 Super Bold’or SP Final Editionが発表されたのです。
ファイナルエディションは初代モデルをイメージしたカラーリングを採用し、
燃料タンク上部に“Final Edition”のステッカーを配置。
ゴールドカラーのドライブチェーンが奢られています。
シルバーカラーのスイングアーム、トップブリッジ、ステアリングステムも初代を彷彿させます。

CB1300 Super Four Final EditionとCB1300 Super Bold’or Final Editionは、精悍な印象のグラファイトブラック1色のみの設定。
フロントフォークのボトムケースをバフクリア塗装仕上げにしています。

オーリンズと共同開発した専用フロントフォークとリアサスペンション、ブレンボのフロントキャリパーを採用したCB1300 Super Four SP Final EditionとCB1300 Super Bold’or SP Final Editionは、PROJECT BIG-1の象徴的なカラーである「パールサンビームホワイト」の1色設定。
どのモデルも名車CB1300シリーズのフィナーレを飾るのにふさわしい佇まいになっています。
多くのライダーにビックバイクを操る楽しさを教えてくれたCB1300シリーズがラインナップから姿を消していくのはとても寂しいのですが、CB1300シリーズが追求し続けてきた”感動性能”は、これからもHondaのバイクに受け継がれていくことでしょう。
【文/後藤武(外部ライター)】



















