満を持して正式発表された『GB350 C』 がスタイリングとして完璧な統一感を有していることは先にお伝えしたとおり。しかし、スタイリングというものは細部へのこだわりの積み重ねがあって、はじめて生まれるものです。
ここからは2回に分けて、そのディテールに迫ります。
スタイリングの美しさは細部のデザインによって決まる
神は細部（ディテール）に宿る、というのは近代建築家の三大巨匠のひとりに数えられるドイツの「ミース・ファン・デル・ローエ」が残した有名な言葉のひとつ。現代では、細部に至るまで手を抜かず造られたものは美しい、あるいは創り手の想いは細部にこそ現れるといった意味合いで使われますが、『GB350 C』というバイクはまさしくそれです。
ベースモデルとして既に人気を博している『GB350』もしくは『GB350 S』とはまったく違うものを。デザインを担当した人物のこだわり、そして、そのこだわりを量産車として実現した技術。どちらが欠けても『GB350 C』というバイクの美しさは成立しなかったことでしょう。
ここからは、そのディテールをフォーカスしていきます。
ヘッドライト
現代の最新バイクとして、スタンダードのGB350同様にLEDヘッドライトが採用されているものの、美しい曲線を描くクロームメッキのヘッドライトカバーによって印象は一変。そもそもヘッドライドの形状が違うのでは？ と思えるほどのクラシカル感を手に入れています。
特にヘッドライトカバー上部の曲線美は秀逸。LEDウインカーの形状はスタンダードのGB350と同じにも関わらず、ヘッドライトカバーとの一体感により専用デザインに見えてくるほどです。
セパレートシート
スタンダードのGB350やGB350 Sと大きく違うのがセパレートタイプとなった『GB350 C』専用シート。
表皮は味わいのあるブラウンが採用され、ホワイトのパイピングがあしらわれているのが特徴。シート自体の肉厚さがさらなるクラシカル感につながっているのも見逃せない部分です。
パッセンジャー用のグラブバーには車体のムードを崩さないスチールパイプ製を採用。パッセンジャーシートが肉厚で、座面も十分な広さが確保されていることからタンデムも快適に楽しめることが伺えます。後部座席上面がフラットなので、先のグラブバーと合わせてツーリングシーンでは安定して荷物の積載もできそうでした。
ライダーズシートは鞍型に近いデザインですが前方に向かって違和感のない曲線でシェイプされ、ライダーの足つき性にも配慮。所有する満足感とバイクのシートとしての機能性を両立させています。
メーターパネル
メーターの文字盤デザインもCタイプ専用のものに変更。クラシカルな意匠でありつつ、クラシカルすぎないバランス感が見事です。細かい変更点のように思えますが、乗るときはいつも目に入るものであるため、オーナーになった人にとっては「他のGB350シリーズとは違う特別感」を味わうことができるディテールのひとつと言えます。
スチール製サイドカバー
セパレートタイプのシート変更に合わせてサイドケースのデザインも一新。『GB350 C』の全体シルエットはフロントからリアにかけてなだらかにスラントしていますが、その優しいスラントをサイドカバーがさらに強調させているように感じます。サイドケース自体の形状にもクラシカル感を演出しつつ、ディテールが全体に影響を及ぼすデザインの妙には敬服するしかありません。
サイドケース自体の素材も、樹脂ではなくスチールに変更され、重厚感の演出にひと役買っています。小さな部分であるにも関わらず「Cタイプ専用の立体エンブレム」は、オーナーとなる人物の所有感を強く刺激してくるでしょう。
燃料タンク
燃料タンクというのは、バイク全体の印象を決定づける重要なディテールのひとつです。
しかしながら燃料タンクはコストのかかる部品でもあるため、量産車としては変更したくない部分でもあります。けれど『GB350 C』はそのコストを顧みず、クラシカルスタイルとの調和を優先。ある意味では、バイクの『顔』と言えるほど印象の強い燃料タンクにまで手を加えているところに、Hondaが『GB350 C』に本気だということを窺い知ることができます。
美しい曲線を描く燃料タンクは車体後方に向かってやさしくスラントし、クラシカルスタイルの全容を整えています。また、デザインに合わせたCタイプ専用タンクパッドが、いっそうのクラシカルを強調しています。
GB350 Cは『同じ』じゃない。
コスト面の問題を顧みず、細部までクラシカルスタイルを貫く「徹底」によって生み出されているのが『GB350 C』の美しいシルエットです。
Cタイプが持つ美しさの理由、すこしだけでも伝わったでしょうか？
CタイプはGB350シリーズの中の1台ですが、その違いは圧倒的……
次回はクラシカル感の決め手とも言える水平基調のマフラーや重厚感を決定づける前後ディープフェンダーなどのディテールに迫ります。
【文／北岡博樹（外部ライター）】
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