Hondaが自ら言うようにHAWK 11というバイクは万人受けするバイクじゃない。でもだからこそ、それを選ぶ人には『個性』がある。
ロケットカウルが好きでなければ始まらない
先の【総集編②】でお伝えした通り、HAWK 11は公道を走る大排気量スポーツとして、ひとつの理想ともいえるパフォーマンスを備えている。だけど我々バイク乗りが愛車に求めるのは、スペックや単純な速さじゃない。
大事なのは『そのバイクを愛せるかどうか』だ。
そして、HAWK 11というバイクの場合、なにはともあれスタイリングの中核を為すロケットカウルのスタイルが好きでなければはじまらない。好き嫌いもあるとは思うけれど、それは厳然たる事実だと思う。
しかもHAWK 11は伝統的、あるいは懐古主義的なバイクじゃない『Hondaの最新オンロードスポーツ』であるため、いわゆるヴィンテージ系バイクとは一線を画するデザインが与えられている。当然そこには賛否はあって『ロケットカウルのバイクはこうでなければいけない』といったような作法を重んじる人には相容れない部分もある。
だけど、それだってすべてHondaは想定していた。
このバイクはデザイン部門のプロジェクトリーダーの言葉を借りるならば『ロケットカウルは古き佳きものだけど、HAWK 11のロケットカウルは何かの模倣ではない』とのことで、実際の話としてもHondaはHAWK 11に対して、ひと言もクラシカルとかレトロなどの表現をしていない。あくまで純粋に『新型ロードスポーツ』というスタンスを貫いています。
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それに車体色だってそう。イメージカラーのホークスアイ ブルーなんて、どう考えても懐古的なバイクに採用されるような色じゃない。だけどHAWK 11にはしっくりきている。そのことからもこのバイクが『新しいもの』であることがわかります。
そしてそのブルーは昨年2022年、その年の車両の優れたカラーデザインを顕彰する「オートカラーアウォード 特別賞」をHondaのバイクとして初めて受賞するという快挙を成し遂げてもいるんです。
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それらのこだわりや想いが、言葉ではないもので伝わるのか……HAWK 11のデザインは、刺さる人には思いきり深く突き刺さります。
光や映り込みの美しさにこだわるため、量産に向いているとは言えないFRP(繊維強化プラスチック)素材でロケットカウルを一体成型していることも刺さる理由のひとつだけれども、走りに出た先でバイクを停めてふと目をやると、独特の美しさと凛とした佇まいを感じさせてくれるのがHAWK 11の特徴のひとつ。
ただ、それを実現するためには製造の現場にもなかなかの苦労があったようで……工場全体の管理から組立ライン、塗装に至るまでHAWK 11は『普通じゃないこと』だらけ。私(北岡)も長くバイクの業界に身を置いていますが、こんなに色んな人々の想いが込められた量産車なんて、ついぞ聞いたことがありません。
だけどそれを、なんだか楽しそうに話す製造部門の人たちのこと、すごく印象に残っています。
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HAWK 11は『自分』を確立している人のバイクだと思う
なんだか話が逸れてしまったけれど、つまるところHAWK 11というバイクを『愛車』として選ぶ人というのは、きちんと自分らしさを持っている人物なんだろうと思っています。だって、そうじゃなきゃ『やっぱり一般ウケするほうが……』とか、他人の目や評価を気にすると思うから。
だけどそうじゃなくて『俺はこれが好きなんだ!』を貫ける人、そういう人が選ぶバイクなんです。
であれば、その信念を持ってオーナーになった人が、このバイクを溺愛しないはずがない。他と違うこと、マイノリティであることも含めて、すべてを愛せる。胸を張って。
はじめにも言いましたけど、HAWK 11は万人受けを狙ったバイクじゃありません。ひと握りの、大人の趣味人へ向けて作られたバイクです。
いま既にHAWK 11を愛車として傍らに置く人、そしてこれからそのオーナーにならんとする人。その人たちにとってのHAWK 11はきっと『他には替えられない存在』なんだろうと思います。
HAWK 11の登場時には『このバイクは上がりのバイクです』なんていうHonda側からも話があって、はじめは『こんなに強烈な走りの“上がりのバイク”がある訳ないだろ!?』なんて思ったりもしましたが……発売から半年、すこしその気持ちにも変化が出ました。
これに乗ったが最後、HAWK 11が好きすぎて、他のバイクに興味が持てなくなる。
そうであるならば、それは確かに“上がりのバイク”と言えるのかもしれません。ただしそれは『体力がうんぬんで』といった消極的な理由じゃなく『このバイクに一生でも乗り続けたい』という情熱によるもの。
今のHandaのバイクラインアップの中にあって、最も強い個性と最上級クラスの走りのパフォーマンスを与えられた公道のピュアスポーツ。このバイクは後に『名車』と呼ばれる可能性を秘めている、と私は本気でそう思っています。
【文/北岡博樹(外部ライター)】
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