HONDA

部品点数300以上!? そのすべてを把握する男さえも『HAWK 11(ホーク11)』は魅了する【HAWK 11を、知る /組立ライン 編】

バイクは工場のラインで生産される。だけどラインの流れはどうやって、誰が決める? その『実際』は驚くべき事実の連続でした。

HAWK 11の生み出す現場を創造する

我々のような普通のライダーにとって、バイクの製造過程というのは、メーカーの工場でライン上の流れ作業の中で次々に組み立てられていくというイメージ。それ以上のことを深く考える機会なんて、ほとんど無いと思う。

けれど今回、HAWK 11が生産されている熊本製作所のラインを見学させてもらう中で、ふと思ったことがあります。

無数の部品が溢れかえる工場内で粛々と、あるいは整然と出来上がっていくHAWK 11。この作業って、どうやって、誰が決めているんだろう?

そこで話を伺ったのはHAWK 11の組立PL(Project Leader)を務める守田さん。組立PLっていうのは、ざっくり言えばHAWK 11の生産ライン上での組立プロセス(工程)を設計する人であり、それが工場のラインで作業できるように調整する役職のこと。

例えば開発側から仕様が降りてきた時、それが工場のラインでスムーズに生産できないものであれば仕様や部品の変更を要求する。だけど開発側にもこだわりがあるから譲れない部分は譲れない。それを現実的に判断して(ある程度、無茶ブリであっても)カタチにする。ある意味『理想を現実に落とし込む仕事』と言っていいかもしれない。

守田さん『HAWK11の部品は(大小合わせて)300点以上あるんですが、自分も12年くらいラインでやっていましたから、ネジひとつでもピッチとか見れば、だいたい見分けがつきます。それらを工程者(ラインで実際に作業する人)たちがわかるように工程表に落とし込んでいくのが仕事です。だけどこのHAWK 11は、自分にとってもちょっと想い入れがデカいバイクになりました』

守田悠太さん(組立PL)

熊本製作所にはいくつかの組立ラインがあって、その中には趣味性の強い大型バイクなどを製造する、いわば花形の「ファンライン」というものがある。その名の通りファンモデルを製造する組立ラインなんだけれど、守田さんはそこで長い期間、経験を積んできたそうだ。

守田さん『自分が組立PLを務めさせてもらえるようになって、初めて(自分が作業していた)ファンラインで流せたのがHAWK 11なんです。まず初めに製造部門の各PLたちと5人くらいでシミュレート組立というのをやるんですが、はじめて組み立てた時(HAWK 11を見て)カッコいいな!? と思ったんです。はじめてのファンラインでやらせてもらえる訳だし、このバイクは自分の仕事として流したい、完成させたいって思いました。』

そんな経緯もあってか、守田さんはHAWK 11のPLをやるなかでどんどん愛着が湧いていったそうだ。だから、通常の工程とは違う流れを組んでいるのだという。

大切な部品を絶対に傷つけたくない

守田さん『例えばフロントカウルですけど、通常だとヘッドライトなど細々した部品をカウル側に組み付けてから“フロントカウル一式”として車体に組み込むんです。そのほうが効率がいいですから。だけどHAWK 11のロケットカウルはできるだけ後のほうの工程で組みつけるようにしました。想い入れの強い、大切な部品を受け取っているんだから、絶対に傷をつけたくない。思ったんです。だけど作業は人がやることだから、どうしてもミスは出る。そのリスクを最小限にしたかったんです』

部品にはブレーキを含む重要な保安部品もあり、組立ラインの中では「それらがきちんと組まれているか」の確認作業も同時に行っている。その重要部品の確認に差し障りのない範囲で、可能な限りロケットカウルの装着は後工程に組み込む。効率こそが至上と思われる工場の製造ラインにおいても、HAWK 11はやっぱり特別で、効率だけを重視して組み立てられてはいなかったのだ。

 

守田さん『絶対に傷を入れたくないから、専用の外傷カバーをつくったりもしてます。身内の手作業で造ったものなんですけどね。それくらいに想い入れがあるというか……(動いている組立ライン上で)部品を見ると、開発・設計とのやりとりや、LPL(総指揮を執る役職/Large Project Leader)に怒られたことなんかも思い出されます(笑)。でも、すごく深くやりとりができて、自分としても成長させてもらえた。HAWK 11を担当できて本当に良かったです』

そんな守田さんから、最後にちょっと面白いこと……というか、その言葉に嘘がないことを示す事実を聞くことができたので伝えておきたいと思います。

守田さん『はじめて組み立てた時からカッコいいなと思っていましたし、PLをやって愛着も湧いちゃったし。自分でHAWK 11を買っちゃいました。先輩たちにHAWK 11に対する気持ちを話したら“この仕事をしていても、そう思えるバイクに出会えるのは一生に1度か2度くらいだぞ?”って言われて……妻にもお願いして(笑)今は納車待ちです!』

そう言ってパカッと無邪気に笑った守田さんから感じられるのは、HAWK 11というバイクに対する本物の愛情。ものづくりの情熱は開発者だけじゃない、製造の現場にも満ちていることを感じさせるものだった。

だからHAWK 11というバイクに乗る人、あるいは乗りたいと思っている人は安心していい。

 

あなたのバイクは、あなたと同じく、HAWK 11のことが『大好きな人』によって組み立てられているんですから。

【文/北岡博樹(外部ライター)】

 

 

 

一覧へ戻る

関連記事

    PICKUP