HONDA

ユーザーの現実とメーカーの想いを橋渡し。HAWK 11(ホーク11)が持つ『万能さ』のキーマンがこの人だ!【HAWK 11を、知る / 開発インタビュー 商品性 編】

今回のインタビュー対象は『商品性』の担当者だという。商品性って何だ? けれど蓋を開けてみたら『これほど大事な仕事も無い』と思い知ることに……

ユーザーに最も近い目線でHAWK 11を見る

長くバイクの仕事をしていると、エンジニアを中心に様々な「つくるひと」たちと接する機会を得る。しかし、今回はちょっと特殊だと感じた。インタビュー対象の職域は商品性。HAWK 11の使い勝手などを担当した人物だという。

正直なところ、最初はちょっとわかりにくいと思った、が……話を聞いてみたら驚いた。我々ユーザーが「当たり前」だと感じていることは、実は「当たり前」じゃなかったのだ。

しかし、初見では商品性担当というのがどんな仕事かさっぱりわからない。そのため、まずは素直にその疑問をぶつけてみることにした。

 

門脇さん『いちばんユーザーに近い立場で仕事をしているつもりです。実際に乗ってみて「ここはやりづらい、操作しにくい」とかを洗い出して、開発メンバーに伝えていくのが私の仕事です。例えばサイドスタンドの出しやすさとか、そのバイク1台のすべての部分に関わっています。ツーリングを想定して、乗って、降りて、停めて。全部やります。』

 

なるほど。確かにそういう検証も必要だと思い納得。実際にバイクが出来上がったら、それに乗ってみてダメ出しをするような感じの仕事ということだろうか。

 

門脇さん『いえ、開発が進んでからでは遅いんです。色々なものが決まってからでは変更が効かなくなります。だからいちばん最初の試作車から乗り倒す。むしろ最初が肝心です。試作車は当然まだ、粗削りな部分が多いのですが、だからこそ初期段階から深く開発に関わっていくんです』

門脇さん『わかりやすい例として、よくあるのがデザインチームとの調整です。HAWK 11の場合、最初はもっとシートが狭くて薄くて小さくて。確かにそれはカッコいいんですけど、HAWK 11に乗るライダーのイメージは40代~50代のベテランのバイク乗りでしたし、ちょっと現実的じゃないなって。そこで「こうしたらもっと良いんじゃないですか?」という提案をします。でもデザイナーやエンジニアにも想いがあるから、そこのバランスを取る。ダメ出しっていうより想いを「実現」させられるように調整するんです』

 

正直言って、ナメていたかもしれない。商品性担当というのが、恐ろしく重要なポジションだということがわかってきた。我々のような一般ユーザーは「Hondaの製品なんだから、ある程度以上の品質は担保されている」と思い込んでいる人が(私を含め)大多数だと思うけれど、この人はその「品質」を護る立場にあるのだ。

門脇さん『この仕事は明確に数値的な基準が無いものを決めたりすることが多いので、担当者とじっくり話を重ねます。一度の説得でダメなら、納得してもらえるまで何度でも。HAWK 11の場合、最初はハンドルの角度に違和感があったんです。LPL(Large Project Leader)は1回ではウンと言ってもらえなくて。粘り強さも大事です 笑』

 

インタビューの最中、門脇さんは温和で優しい印象だったけれど、聞くところによると仕事の場では寡黙で、一本筋の通った人物と見られているようだった。

門脇さん『HAWK 11でイメージしたユーザーは様々なバイクを乗り継いできた大人のバイク乗りでしたから、ライディングポジションも疲れないように配慮しました。あのライディングポジションは、今回初のチャレンジでした。ちょうど椅子に座っているようなイメージを、そのままライディングフォームに落とし込んでいるんです。そのほうが腰にも負担が少ないというデータもありますので』

 

HAWK 11のライディングポジションといえば、ワインディングではスポーティなフォームがピタリと決まり、それでいて高速道路やクルージングなどでは手首に負担が少なく快適という魔法のようなポジション。その快適さの秘密は、実はこんなところにあったのだ。

門脇さん『他にも、色々あります。私の担当は「そのバイクに触れる人すべて」が対象なので、そこには整備する人や工場で組み立てる人たちも含まれているんです。さすがにエンジン内部まではありませんが、試作車を全部バラしたりもします。整備性とか量産のことも考えなければいけないので……』

 

あまりにも広い担当分野。しかもそれを感覚で判断しなければならないシーンも多い。これは何というか……粘り強さだけじゃなく、相当に「センス」も必要とされる仕事なのかもしれない。

言うなれば、門脇さんは防波堤だ。

 

このバイクに関わる人すべてが、なるべく負担の少ないように。ここまではOK、そうでなければ改善のため調整する。そのジャッジメントをする人物。そして、すべての制約条件をクリアし、HAWK 11を「Hondaのバイク」としての品質を担保した状態で世に送り出す。

 

この人がいたからHAWK 11は今のクオリティで世に送り出されたのだと言っても過言ではない。

今、HAWK 11が傍らにあるオーナーさんたち……メーカーの中には「常にユーザーに寄り添う」こんな立場の人がいるっていうことも、忘れないでおいてくださいね!

【文/北岡博樹(外部ライター)】

 

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