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模倣ではない。HAWK 11 (ホーク 11)のロケットカウルは『光』すらデザインされている【HAWK 11を、知る / 開発インタビュー③ ロケットカウル編】

HAWK 11のスタイリングの中核にあるロケットカウル。それは古き佳き時代を感じさせるものだけれど、実のところそのデザインは『過去の模倣』ではないところから生み出されていたんです。

そのロケットカウルは“何かの模倣”ではない

 

HAWK 11のスタイリング上で最も主張が強いもの。それは誰の目にも明らかなほどに『ロケットカウル』でしょう。

けれどロケットカウルそのものは、過去の名車たちや、近年のネオクラシックのムーブメントに乗って登場したバイクにも装着されているもので、言ってしまえば『前例』は他にもたくさんあります。

そこで「ちょっと失礼かな?」と思いつつ、HAWK 11のデザイナーの中心人物となったPL(プロジェクトリーダー)の田治 健太郎さんにこんな質問をしてみました。

モーターサイクルデザイン開発室・プロダクトデザインスタジオ・デザイナー/田治 健太郎さん

『HAWK 11のロケットカウルをデザインしていく中で“お手本にしたバイク”ってあるんですか?』

そして、そこから返ってきた答えは、なかなかどうして……驚きに満ち溢れたものだったんです。

田治さん『何かを参考にした、ということは無いんです。強いて言えば、自分たちで描いて決めたキースケッチ(※デザインの大元になるスケッチ)でしょうか。もちろんHAWK 11はロケットカウルが中心にあるバイクだし、それをデザインしていくにあたって旧車の勉強もしたんですけど、具体的に何かを参考にした、ということはありませんでした』

国内外にたくさんの前例があるにも関わらず、それらは基本的には参考にしていない。じゃあ、どうやってこのデザインは生み出されたと言うのか……

田治さん『HAWK 11は“バイクを乗り継いできた大人のライダーに向けたもの”というイメージが最初からあって、それが最後まで一切ブレていないんです。そこに向けてデザインチームで何案もスケッチを起こして、最終的にひとつに絞って。そこから足並みを揃えて一気に! という感じでした。ただ、ロケットカウルは古き佳き時代を感じさせるものですけど、そこに“新しいエッセンス”を採り入れたいという気持ちはありました』

実は田治さんは、過去にモデラ―(※クレイモデル担当者の名称)としてX-ADVやCB650Rなどを担当してきた人物。全身まるごと『革新』の塊のようなバイクのデザインに携わってきたデザイナーが、HAWK 11のデザインの中心人物だった、ということも驚きのひとつでした。

光と風景の写り込みまで『デザイン』する

田治さん『だけどやってみると、これが難しい。車体とのバランスやカウルの角度もありますけど、それ以上にHAWK 11のような「とりとめのない面」で構成されたデザインは光とか写り込みとか、そういうものを形にするのがすごく難しいんです。だからモデラ―は特に苦労したと思います。それらはすべて最初に決めたキースケッチに基づいてのもの、なんですけどね』

あくまで自分たちの起こしたキースケッチが原点。ある意味それは『Honda独自のロケットカウル・デザイン』と言ってもいいのかもしれません。だからこそ、と言うべきか……そこにかけた情熱は極めて真っ直ぐなものでした。そして、その情熱の発露のひとつがロケットカウルの素材にFRP(繊維強化プラスチック)を採用していることです。

『従来の製法(ABS樹脂のインジェクション成型)だと、このロケットカウルは4つくらいの部品に分かれて構成されることになると思います。だけど、それじゃ我々がキースケッチでイメージした光とか風景の写り込みを表現できない。だからFRPで単体のパーツにしてもらったんです』

これもHAWK 11の大きな特徴のひとつ。正直な話、FRPでの一体成型はコストもかかるし、時間もかかる。量産に向いているとは言えません。だけど、マーケティングありきではない「日本専用モデル」としてはじまったHAWK 11だからこそ、それが実現できたのだそうだ。

……と、そこでひょっこり、面白い話が出てきたので閑話休題。それはカラーリングについての話でした。

田治さん『ところでHAWK 11のカラーなんですけど、ネイビーのほうは初めから決めていたんです。自然との一体感というか、緑や光の写り込みを美しく見せる色として。だけどもうひとつのブラック。こっちはもっと“モダン”というか、HAWK 11の「造形」を際立たせる色だと思っています。HAWK 11に「新しさ」を感じられる色として、個人的には、けっこうブラックが好きなんですよ』

HAWK 11(ホーク 11)のロケットカウルは完成されている

田治さん『このHAWK 11はLPL(Large Project Leader/総責任者)が決断力のある人だったし、そのおかげで制約も少なく、最後までブレずにやりきることができたと思っています。試作車が出来上がった瞬間に、あまりにもイメージ通りすぎて「ホントに(キースケッチ)そのまんまできちゃったよ!?」って驚きましたからね。その後にメディア向け試乗会が山中湖で行われて、陽の光と緑の中にHAWK 11がズラッと並んでいるのを見て、嬉しかった。ロケットカウルのリフレクション……正直、グッときました』

デザインチームとしても、HAWK 11ほどイメージを限りなくそのまま実現できることは滅多に無いのだという。つまりそれはデザイナーのセンス、そして閃きをそのままカタチにできた、ということに他ならない。そしてHAWK 11のロケットカウルが他とは違う最大の理由も田治さんは教えてくれました。

田治さん『普通、ロケットカウルって“ベースになるバイク”が他にあって、そこに“後付け”される場合がほとんどなんです。だけど、HAWK 11は違う。この1台しかない。そして、はじめからロケットカウルありきでデザインをしています。だからこのロケットカウルは完成されてる。やりきった。自分としては、そう思っています』

Hondaデザイナー陣の目指した『今のバイク』としてのロケットカウルは、既存の何にも属さない。

既にHAWK 11をオーダーして、9月の発売日後にオーナーとなる予定の人は、今から楽しみにしていてください。

だってこのバイクは、陽の光を浴びて、自然の中を走る時にこそ最も美しく輝く。そういうデザインが与えられている、と言うのですから。

【文/北岡博樹(外部ライター)】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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