若い頃にバイクに憧れ、免許を取ったものの、仕事や家庭の事情で乗ることから遠ざかってしまった。
そんな経験を持つ人は少なくないでしょう。
今回紹介する渡辺さん(57歳)も、そのひとりです。
19歳で中型免許を取得し、何台かのバイクに乗ったものの、仕事、結婚、子育てに追われるようになり、バイクが好きだったことさえ忘れていたといいます。
ところが50代になって、長く眠っていた気持ちが再び動き出しました。
愛車となったNC750Xで2年間に約2万kmを走行。
そして現在は、CB1000Fとともに、新しいバイクライフを楽しんでいます。
昔はバイクの楽しさがわからなかった

渡辺さんがバイクを初めて意識したのは、幼い頃のこと。
叔父さんの影響があったといいます。
物心がついた頃から叔父がバイクに乗っていたんです。それを見ていて、なんとなく興味を持ったのが最初です
大学に入ると、バイクに乗る友人たちの影響を受け、19歳で当時の中型免許を取得します。
初めて乗ったのは、友人が所有していた原付スクーターでした。
50ccだからと少し甘く見ていたんですが、アクセルをひねったら思いのほか勢いよく走り出して、すごく驚きました

その後はVT250FやNS50F、タクト、NS250Fなど、さまざまなバイクに乗りました。
ただ、古い車両を修理しながら乗っていたため、思うように走れなかったのだとか。
乗っては壊れ、乗っては壊れという感じでした。走る楽しさを十分に味わう前に、経済的な理由などで乗らなくなってしまいました
就職後は多忙な仕事に加えて結婚、子育てと、生活の中心が大きく変わっていきます。
いつしかバイクの存在そのものが渡辺さんの日常から消えてしまったのです。
50代で再び動き出した、忘れていたバイクへの想い

転機が訪れたのは50代に入ってからでした。
自分自身の時間について考えるようになったといいます。
50歳を過ぎて、仕事と子育てに区切りがついた頃、何かやりたいなと思うようになったんです。自分は何が好きだったんだろう、何をしたかったんだろう、と考えていました
そんなとき、職場でバイクに乗る同僚が、休みを取ってツーリングに行ってきた話をしてくれました。
ああ、そうか。バイクっていう楽しみが、自分にもあったんじゃないか。そう思い出したんです
バイクのことを考えるようになったある日、近所を散歩していたら偶然通りかかったHonda Dreamに並ぶGB350が目に飛び込んできました。
何か感じるものがあり、インターネットでバイクについて調べるようになったのです。
そして、Honda DreamでCL250をレンタルしてみることにしました。
カーブを曲がったときに、「ああ、なんだ、こんなに楽しかったんだ」と気づきました。やっぱり自分はバイクが好きなんだということが分かってきました
長い間、心の奥にしまい込んでいたバイクへの想いが、レンタルバイクをきっかけに湧き出してきたのです。
自分に合うバイクを探し、大型免許も取得

渡辺さんはいろいろなバイクをレンタルし、乗り比べながら自分に合う1台を探していきます。
大型二輪免許を取得し、大型クラスの車種を乗り比べた結果、もっとも自然に乗れると感じたのがNC750Xでした。
何台も乗ってみて、まだバイクに慣れていない自分にはNC750Xが一番乗りやすいと思ったんです。初心者に優しいバイクという印象でした
特に気に入ったのは、2気筒エンジンが生み出す低回転からの力強さでした。
無理なく前へ進んでくれる感覚が、久しぶりにバイクに戻ってきた渡辺さんにとって大きな安心につながったといいます。
低速のトルクがあって、出だしが力強い。それがすごく気に入っていました。燃費がいいところも魅力でしたね
こうして選んだNC750Xが、リターン後に初めて所有する愛車になりました。
山道を走り、スクールで腕を磨いた

NC750Xを手に入れた渡辺さんは、時間があればツーリングに出かけました。
とにかくたくさん乗って、早くスキルを身につけたいという気持ちが強かったんです。時間があれば山道に出かけていました
走行経験を増やす一方で、ライディングスクールにも通いました。
ホンダが主催するスクールには、通算で8回ほど参加。
走ることと、基本を学び直すことを続けた結果、NC750Xの走行距離は2年間で約2万km。
タイヤもその間に3回交換したといいます。
若い頃は、バイクの楽しさを十分に知る前にやめてしまいました。でも今は、乗ること自体が本当に楽しいんです
NC750Xは、長いブランクを埋めるだけでなく、渡辺さんに走る楽しさと、自分の技量が高まる喜びを教えてくれた存在となったのです。
CB1000Fに心惹かれる

乗りやすく、力強く、燃費もいいNC750Xには大きな満足を感じていました。
それでも、いろいろなバイクの情報に触れるうち、渡辺さんの心に別の思いが芽生え始めました。
NC750Xの2気筒エンジンは、低速から力があって本当にいいと思っていました。でも、自分の胸に手を当てて考えてみると、どうも4気筒エンジンの音に惹かれているんだな、と気づいたんです
そんなとき、モーターサイクルショーで目にしたのがCB1000Fでした。
ひと目見て気になりだした渡辺さんは、CB1000Fのデータを調べることにしました。
大きさや重さ、シート高を見て、これなら自分でも乗れるんじゃないか、という気持ちになってきました。価格も、もしかしたら何とかなるかなと
購入を決意するうえでもうひとつ大きかったのが、年齢に対する思いでした。
あと何年バイクに乗れるかは分かりません。もし今このクラスのバイクに乗らなかったら、もう乗れなくなってしまうかもしれない。乗るなら今のうちかな、という気持ちがありました
NC750Xで距離を重ね、スクールに通ってきたことで、今なら大排気量のバイクに向き合えるのではないかという自信も生まれていました。
最後に背中を押したのは、インターネットの動画で聞いたCB1000Fの排気音でした。
排気音を聞いて、もうハマってしまったんです。最後のひと押しでしたね
渡辺さんはCB1000Fを試乗せずに注文したといいます。
スクールで乗ったCB400 SUPER FOURが、とても乗りやすくていいバイクだったんです。同じCBの名前が付くバイクなら、排気量は違っても自分の好みに合うのではないかと思いました
想像以上の乗りやすさ

実際にCB1000Fに乗ってみると、足つきや乗車姿勢は想像していたとおりでした。
一方で、渡辺さんが意外に感じたのは、その扱いやすさです。
初めてのリッターバイクなので、大丈夫かなという不安もあったんです。でも、ゆっくり走っている分には、NC750Xより乗りやすいかなと思うくらいでした
4000rpm以下で走るような日常的な場面では、身構える必要がなかったそうです。
その穏やかな一面が、予想以上の安心感につながりました。
ほかのホンダ車でも感じていたことなんですが、ライダーへの思いやりがあるというんでしょうか。アクセルの反応やブレーキの効き方、サスペンションの沈み方、曲がるときの感覚などに、そういうことを感じるんです

穏やかで扱いやすい一面がある一方、4気筒エンジンの回転数を高めたときには、NC750Xとはまったく異なる世界が待っていました。
まだ慣れていないので、そんなに回しているわけではないんですけど、それでも高回転まで回して加速すると、宇宙船がワープするような感じなんです。今までのバイクでは経験したことのない加速です
普段は穏やかに走れ、必要な場面では力強さを発揮する。
その懐の広さも、CB1000Fの魅力として受け止めているようです。
バイクに求めるものがすべて詰まっている

渡辺さんにとって、CB1000Fはどんなバイクなのでしょうか。
バイクに、こうあってほしいと思うものが、すべて詰まっている感じです。本当に気に入っています
まだ購入から日が浅く、天候や仕事などの都合もあって、思うように乗れなかった時期もありましたが、最近では比較的近い場所へのツーリングを中心に楽しんでいます。
バイク自体の慣らしは終わりましたけど、人間とバイクとの関係は、まだこれからです。少しずつお互いを知って、人車一体になっていければと思っています
理想的なバイクともいえるCB1000Fを得て、渡辺さんのバイクライフはますます充実したものになっていきそうです。
【文/後藤武(外部ライター)】

















