アフリカツイン(CRF1100L AfricaTwin)系のエンジンとフレームに、ロケットカウルを組み合わせる? そのバイクはHondaの大型ロードスポーツとして成立するのか?
HAWK 11(ホーク 11)は『味わい系バイク』なのか?
『へぇ、こういうバイクなんだ……』
発売に先駆けて行われたHAWK 11の試乗会で、実車に触れて、そして走らせた第一印象は軽い驚きでした。
独特の雰囲気を持つロケットカウルに、排気量1082ccの直列2気筒エンジンを搭載。普通に考えると、近ごろ人気のネオクラシック/ネオレトロのムーブメントに乗った『テイスティ系のバイク』に思えます。ハンドルを握って、エンジンに火を入れて感じるサウンドやエンジンの鼓動感は、まさにそれ。味わいを予感させるものでした。
ところが……走り出した直後の第一印象として最も強く響いたのは、驚いたことに『車体の動き』だったんです。
先入観は良くないですけどバイクのキャラクターとして、先に感じた音や鼓動感のこともあり、鷹揚なハンドリングと共に雰囲気を楽しむバイクなんだろうと予想していたんです。だけど、どうやらそうじゃないみたい……
予想外にヒラリと軽い
ライディングモードは『STANDARD』で、慎重にクラッチミート。
大排気量の2気筒エンジンだから、一気にトルクが出ることを警戒していたけど、流石に最新の電子制御スロットル(スロットル・バイ・ワイヤ システム)を搭載しているだけあって発進に気難しさは一切無し。緻密に管理されたパワー&トルクは気軽に、それでいて力強さを感じさせつつ走り出します。
腹に響くような低い排気音、不快感を切り捨てながらも身体を揺さぶるエンジンの鼓動、発進に使う極低回転のすこし上から溢れ出るパワー感。それらすべてに味わいがあって『うん、いいね』ってヘルメットの中で笑顔がこぼれる感じ。
テイスティなバイクが好きな人なら、これこれ! こういうの! って嬉しくなっちゃうと思います。
だけどそれは、発進から真っ直ぐに走っていた時の感想。『さて、HAWK 11はどんな動きをするバイクかな?』って、探りを入れるつもりでバイクを軽く曲げてみた瞬間に……
『え……っ!?』
動きが、軽い? 想像よりもはるかに軽快に、スッとバイクが動いたんです。ライダーの意志を受けたバイクが、ほとんどタイムラグ無しで動き出す感覚。誤解を恐れずに言えば、それはスーパースポーツのそれに通じるダイレクト感でした。
HAWK 11(ホーク 11)の走りには『奥行き』がある
もちろんスーパースポーツ同然、というものじゃありません。
前後のサスペンションは、ゆったりと流して走る時には快適そのもの。足まわりがガチガチなんてことは無く、むしろ『乗り心地がいい』と言える優しさを感じます。そこだけで言えば、HAWK 11は事前に持っていたイメージ通りのバイクです。
だけど、ハンドリングの軽快さ。そして動きの正確さが、単なる『味わい系バイク』とは大きく違う。
レトロ感の漂うケットカウルのスタイルからは想像もつかないほどにスポーティー。見た目との落差があまりにも大きくて、一瞬、戸惑うほどです。
ただ、残念なことにこの日は雨上がりで路面はハーフウェット。日陰にはまだ重く濡れているところもあって、思いきりHAWK 11の走りを堪能できた訳じゃありません。
それでも、感じるものがあるんです。これは間違っても『雰囲気だけのバイク』じゃない。
ワインディングをマイペースで流せば、HAWK 11は深い味わいと共に、バイクで走ることの醍醐味を満喫させてくれます。そういう走りをしているぶんにはライダーのスキルを問わず『豊かさ』を堪能できる。
でもそれだけじゃ終わらない。HAWK 11には『その先』があるんです。
そして、それはライディングモードを『STANDARD』から『SPORT』から切り替えた瞬間に確信へと変わりました。
このバイク、ひと筋縄じゃいかないかも!? それまで感じていた優しさが一瞬で吹き飛ぶほどの豹変。まさかこっちが本領か?と思うようなHAWK 11の二番底。続編では、まずそこをお伝えさせて頂きたいと思います!
【中編】に続く
【文:北岡博樹(外部ライター)】