通常のHondaとは違うアプローチでスタートしたHAWK 11を、造り上げるにあたって目指したもの。
それは、日本のバイク文化を築いてきた『大人のライダー』にむけてのメッセージなのかもしれません。
半日の自由を楽しむための大型スポーツバイク
その発案から開発過程に至るまで、これまでのHondaのやりかたとは違うアプローチでスタートしたHAWK 11。今回は、このバイクが生み出される過程において守られてきたポリシーについて、すこし触れてみたいと思います。
このバイクは、Honda社内のとある人物が『アフリカツインのエンジンでワインディングを楽しみたい』という夢を持ったところから始まりました。そのことはHAWK 11に興味のあるライダーなら既にご存じのことかもしれません。
だけど一個人の想いを実現させ、製品化するというのは『バイクメーカー』にとっては大きなチャレンジ。『マーケティングありき、グローバル展開が前提』の企画開発が主流となる昨今においては、プロダクトアウト的なこのバイクの開発にGOが出たこと自体が、ある意味奇跡でもあるんです。
そんな中に開発責任者を務めたLPL(Large Project Leader)の後藤悌四郎さんは「そんな夢も叶えられない現状を変えなければいけない」と声を上げ、市場規模や販売台数のポテンシャル、ターゲットユーザーを思い切って割り切ることで『実現できる!』という結論を導き出します。
これまで日本のバイク文化を築いてきたベテランライダーのために。そして、忙しい大人が半日の自由を見つけ、出かけて楽しいと思えるバイクを。
HAWK 11というのはそんな風に、Hondaのバイクとして前例のないレベルで『大人の、つかの間の至福』のためにピンポイントで開発されているんです。
HAWK 11(ホーク 11)を支える3つの土台
その過程の中でHAWK 11はディメンション、パワーユニット、スタイリングの3要素を突き詰めて開発。
その時のLPL後藤さんの方針は『シンプルになるまで考えたら、余計な迷いなど入り込む余地など与えず突っ走る!』という爽快なもので、開発に携わったエンジニアやデザイナーが『迷いは無かった。開発は一気に進んだ』と口を揃えることからも、その考えが徹底されていたことがわかります。
まず、バイクのキャラクターを決定づけると言っても過言ではないディメンション(バイクの操縦に影響する各部のサイズや配置)については、あくまで『スポーツバイクのライディングポジション』であることを追求。
驚きべきはCBR1000RR(2008年式)との比較において、ハンドル位置こそ高めに設定されているものの、着座位置からのハンドルまでの距離、シート高、ステップの位置や高さなどがほとんどスーパースポーツ同様となっていること。アドベンチャーカテゴリーのアフリカツイン(CRF1100L)シリーズのフレームを使いつつも、HAWK 11が紛れもない『スポーツバイク』を目指していることが伺えるポイントです。
そして、6速マニュアルトランスミッションオンリーの設定となる1100cc直列2気筒エンジンは、このエンジンが持つ魅力を一切スポイルすることなくフルスペックで搭載。それでいて低~中回転域のトルクに厚みを持たせることで“HAWKらしさ”にもこだわっているんです。
『速くない、でもすこし速い』
そのコンセプトをブレることなく忠実に守り抜いた。それがHAWK 11のエンジンとなっています。
また、HAWK 11は普遍的な美しさを感じさせるロケットカウルのスタイリングにも妥協なし。このバイクのオーナーとなった大人のライダーが、走り終えた後に愛車を眺め、心が満たされるよう、光や風景の写り込みにまで配慮したデザインが為されています。
それらすべては『大人の、つかの間の至福』のために。
みなさんもご存じのとおり、HAWK 11は単純にスピードを求めたバイクではありません。
『楽しさは、数字じゃない』
豊富な経験から、その本質へと辿り着いたベテランの琴線にすら触れる1台。それは『心の贅沢』とも言えるバイクです。
【文/北岡博樹(外部ライター)】