クルーザーのRebel 1100とロードスポーツのHAWK 11は同じエンジンのバイク? いえいえ、実はけっこう中身が違ったりしているんです!
HAWK 11(ホーク 11)とRebel 1100(レブル1100)のエンジンは同じじゃない
2021年の3月に新解釈のクルーザーとして誕生し、Honda大型バイクラインアップの中でも一躍、人気車種となったRebel 1100。バイクに詳しい人ならばご存じでしょうけれど、Rebel 1100のエンジンも基本的にはCRF1100L Africa Twin系のエンジンを搭載しています。
じゃあ、Rebel1100とHAWK 11は同じエンジンなのか?と言われると『実はけっこう中身が違う』っていうこと、ご存じでしょうか?
HAWK 11は、その開発段階において『エンジンのフルスペック最高出力102馬力をキープすること。馬力を下げるのはもってのほか』という約束事がありました。
それはエンジニアとHondaの高い技術力によって実現されている訳ですが、つまるところ『オンロードスポーツ』として強いこだわりを持って設計されています。
だけどクルーザーという、ある意味、特殊なカテゴリに属するRebel 1100は違う。
エンジンの外観こそ基本的に同じですが、Rebel 1100のエンジンは『クルーザーらしさ』を重要視して開発・設計されているんです。
それが証拠に、という訳ではないですが……
Rebel 1100:最高出力 87PS/7,000rpm / 最大トルク10.0kgf・m/4,750rpm
HAWK 11:最高出力 102PS/7,500rpm / 最大トルク10.6kgf・m/6,250rpm
エンジンスペックもかなり違います。
Rebel 1100はクルーザーとしてバルブタイミングの最適化、つまりカムシャフトや、低速の力強さを出すためにフライホイールも変更されていて、言ってしまえばHAWK 11とは全然違うフィーリングのエンジンになっています。
ちなみに数字だけ見るとRebel 1100のほうがHAWK 11よりも劣っているように見えますけど、それは間違い。これは低~中速域の力強さにエンジン特性を大きく振った結果で、仮に『よーい、ドン!』で競争したら、ストレートの短距離走ならばRebel 1100が頭ひとつリードする結果になるでしょう。
アクセルをワイドオープンした時に感じる荒々しいまでの加速、大排気量2気筒エンジンならではワクワク。ある意味、Rebel 1100っていうのは、その楽しさを感じることに特化したバイクになっているんです。
なんて言いつつ、Rebel 1100も『クルーザー』という既存の概念からは想像できないほどのスポーティさを兼ね備えている訳ですが……
エンジンに対する考え方の違い
とは言え、クルーザーとしてのスタイルを踏襲する以上、Rebel 1100のコーナリング性能には自ずと限界があります。
ですがそもそもの話、純粋なオンロードスポーツとして設計されたHAWK 11とクルーザーのRebel 1100のコーナリング性能を比較すること自体がおかしな話なので、そこを深掘りはしません。
じゃあ、同じ1082ccの直列2気筒エンジンを持つHAWK 11とRebel 1100の違いは何か?
個人的には『エンジンの位置づけ』がその答え、だと思っています。
Rebel 1100は大排気量2気筒エンジンの溢れるトルクを楽しむバイク。コーナーはRebel 1100なりのスポーティさを駆使してクリアし、その先に見えたストレートで怒涛のトルクを解放する。その瞬間の昂揚感こそが真骨頂!
誤解を恐れずに言えば『エンジンそのものを楽しむバイク』といった感覚があるバイクです。
対してHAWK 11は、どこかピンポイントのシチュエーションでエンジンが強烈に主張してくるタイプじゃありません。コーナーへの進入から立ち上がりまで、その一連の動作の中において、車体とエンジンが絶妙にバランスしながら走るバイクです。
なのにHAWK 11を走らせていると、不思議なほどにいつもエンジンの存在を意識させられる……これも主観的な話で申し訳ないのですが、HAWK 11は『走りのすべての土台としてエンジンが存在している』といったような感じでしょうか。
これはもちろん『どちらかが優れている』といった優劣の話じゃありません。人それぞれの趣味嗜好というか、単純に『好み』の問題。
けれどもし、貴方が『バイクでスポーツすること』に重きを置くライダーなのであれば……その心に響くのは、きっとHAWK 11のエンジンフィーリングでしょう。
豊かなトルクと不等間爆発のもたらすパルス感、そして2気筒エンジンとは思えない高回転域での伸びやかさと突き抜けるサウンド。
そのすべてに、走りを愛するライダーとしての本能が刺激される。それだけは、間違いないことですから。
【文/北岡博樹(外部ライター)】