バイクを乗り継いできた大人のライダーは、愛車との付き合いかたを心得ているもの。ほんのひととき、許された自由を満喫するためにHAWK 11で走り出す。
大人は、それほど暇じゃない
年を重ねてみないとわからないもの、というのはけっこう多い。そして、そのひとつに『自分の時間が取れないこと』がある。
仕事は昔と違って責任のある立場だし、やることも多い。だからと言って休日が暇かと言えば、平日にできない家のことをこなしたり、家族サービスだってある。それが嫌な訳じゃないんだけど、大人に『自由』なんて、言うほどは存在しないのだ。
そんな毎日の中で『若い頃はカネは無かったけど、勢いと時間だけはあったよナァ……』なんて振り返ってみたこともあるかもしれない。
だけど、いまは違う。
なかなか乗る時間も取ってあげられなかった愛車を断腸の想いで手放し、HAWK 11に乗り換えた。
それからというもの……なんだかちょっと、自分の暮らしが変わってきたように思っている。
仕事は家に持ち帰らない。週末の予定は『今週はどうしようか?』なんて、さりげなく話を振って、先に家族と話し合っておく。
おかげで家族と話す機会も増えたんだけど、そうやって何とか捻出するのは、休日の午前中。
たった半日の自由時間だ。
HAWK 11(ホーク 11)は『自由』を濃くしてくれる
まぁ、その半日だって毎週末のように手に入る訳じゃないし、時間も限られているから、向かう先はいつも同じ。最近のお気に入りは箱根エリアの芦ノ湖スカイライン。
その時間が平日から待ち遠しくて……当日の朝は高速道路に飛び乗るのが常。急いでいるとか、時短のためっていうより、本音として『一刻も早くワインディングに辿り着きたい』っていう理由だけで高速道路を使っていることは、誰にも言っていない。
そして、その瞬間から、ココロが踊り出す。
HAWK11っていうバイクは見た目には『かなりの前傾姿勢』なんだけど、これが不思議なことに一定のペースで流すような高速道路のクルージングでも苦しくない。と言うか、むしろ楽しい時間だったりもする。
1100ccの豊かなトルクはのんびりと走っている間は、その余裕でライダーを包み込んでくれるし、大型トラックや観光バスなどに前を塞がれてしまった時は、アクセル操作一発でスルリとかわせる。
マフラーからのサウンドも、パルス感のあるエンジンの存在感も、そのすべてが心地いい。
そして、お目当てのワインディングへ辿り着いたら、ひとつ深呼吸して……一気に駆け上がる!
ちなみに箱根エリアなら王道でターンパイク箱根っていう選択肢もあるんだけど、芦ノ湖スカイラインを好む理由はそのテクニカルさ。
ターンパイク箱根も悪くないけど、あちらは少々ハイスピードになりすぎるきらいもあって、個人的にはHAWK 11には芦ノ湖スカイラインが適していると思っている。
そもそもが若い頃と違って、別にトバしたい訳じゃない。陳腐な言い方かもしれないけど『バイクと対話する』というのが近いイメージで、車体を安定させつつ、タイヤと相談しながら思い描いた走行ラインに乗せていく。
だけどそれも上手くいくことばかりじゃなくて『ミスったなぁ』とか『お、今のは良かったかも?』なんてヘルメットの中でひとりごと。
スピードじゃない。だけどHAWK 11は、それが最高にオモシロい!
HAWK 11(ホーク 11)で得られるもの
そうして、ひと通り走ると、ようやく『我に返る』というか、風景にも目をやる余裕が出てくる。
もういい年だっていうのに……我ながら成長してないな、なんて思ったりもするけど、そういう自分も実は嫌いじゃなかったりするから困りもの。普段の生活の中で、忘れがちになる自分らしさを思い出す。そういう時間を、HAWK 11が与えてくれているんだと思う。
ひと息つくのは、山を駆け下った湖畔にて。それもなるべく人が少ない、静かな場所のほうがいい。
何があるって訳でもないんだけど、缶コーヒーを片手に、風の音しか聞こえないような自然の静寂の中に身を置く。すると不思議なもので、さっきまでの『とにかく走りたい』という熱はどこへやら。自分の中で、何かが『整う』ように感じられて、その時間も実に得難い。
その後は自然に『さて、帰るか』自然に思えるんだけど、この時にも『早く帰らなきゃ』と時間に追われるような焦りが生まれないのが不思議なところ……
むしろ家族を思い出して『早く帰ってあげなきゃな』なんて殊勝なことを考えてみたりもする。
たった半日だけど、この時間を許してくれる家族に感謝を。
あとはそう……
この短い自由の中で、気持ちを満たしてくれた相棒をねぎらって。
洗車くらいしてやれる時間が取れたなら、この週末は完璧かな。
【文/北岡博樹(外部ライター)】