HAWK 11の意外なまでの「サーキット適性」の高さを発見した伊藤真一さん。
その走りっぷりの良さの秘密はどのようなところにあるのでしょうか?
【前編】からの続きです
誰でも乗りやすい、絶妙な車体まわりのセッティング
HAWK 11のライディングポジションは、実に自然ですね。セパレートのハンドルはやや高めの位置で、上体の前傾はそれほどキツくはありません。シートに座って、スッと手を伸ばすとそこにハンドルがある……という感じです。
最初に跨った瞬間には、1Gでリアが下がったときにリアサスペンションのストロークが感じられて、リアサスペンションの動きも自然で、好印象を覚えました。トップブリッジの位置はロードスポーツとしては高めで、1,510mmのホイールベースも長めと言えます。このようなディメンションだと、コーナリングでフロントがリアに遅れて曲がるという感覚が、強く出る傾向にあります。
しかしHAWK 11は、確かにフロントがリアに遅れて曲がりはするのですが、そのことを強く意識させられることはなく、不安感も感じられません。コーナリングではリア側がコーナリングフォースを支配している感じで、ハンドリングがクイックな感じは全くありません。
リーンアングル依存型というか、積極的に乗り手が荷重移動をさせる必要はありません。コーナリングでフロントブレーキを引きずって、荷重を前にかけるとかそういう操作は不要です。ホイールベースの長さからコーナーで描くRは若干大きいですが、前後タイヤの接地感が安定しているので変なクイックさはありません。
HAWK 11はフレームのベースがアフリカツイン系で、足まわりのベースがNT1100とのことですが、乗ってみた印象ではそれらがベースであることは言われないとわからないと思います。オンロードスポーツとして、非常にスポーツ性の高い、素直なハンドリングにまとめられています。
HAWK 11の車重は214kgですが、走らせていてもアフリカツイン系やNT1100よりも軽い感じはありますね。前後タイヤのグリップ感の良さもあって、気後れすることなくコーナーに入って行っても、勝手にセルフステアで曲がって行くような安心感があります。この安心感はコーナリングの快適さにもつながりますので、多くの人にその乗りやすさが歓迎されると思いますよ。
■80年代バイクブームを知る、今50代の人に最適な1台?
1,082ccの並列2気筒エンジンは、おっ!! と思わせる速さがあります。200馬力オーバーのCBR1000RR-Rみたいなスーパースポーツは、サーキットなどで走らせるとコントロールに高いスキルが必要となりますが、HAWK 11はハイパワー過ぎるという怖さを感じることなく、リッターオーバーのバイクならではの力強いトルクを楽しむことができます。
鈴鹿サーキットの、ストレート下ってからの1コーナーでは、シフトダウンするときにギクシャクするストリートバイクは多いですが、HAWK 11はバン! バン! と違和感なくきれいにシフトダウンが決まります。シフトの節度感は良好で、トランスミッションのギア比もちょうど良い設定で、鈴鹿サーキットを走らせていても変速操作が気持ち良く楽しめました。
あとマフラーの設計も秀逸で、アフリカツイン系やNT1100に比べると高回転域の音がとてもきれいに出ていますね。ブレーキは前後ともに制動力は必要十分で、レバータッチも非常に自然な入力ができ安心感があります。リアブレーキは取り付け位置がちょうど良いところにあり、コントロールのしやすさが光りました。
自分は今50代で、80年代のバイクブームから乗り続けてきたライダーですけど、若いころはオンロードスポーツ命!!みたいな感じでした。そういう自分のような、長年ハイパワーのオンロードスポーツバイクに好んで乗ってきたようなベテランライダーの方にも、HAWK 11は満足してもらえるお奨めの1台です。
最新のスーパースポーツはその性能を引き出すのにはかなりのスキルが求められますが、HAWK 11は頑張らなくても「十分に性能を引き出している」感覚を味わうことができます。そして実際に、サーキットを走っても不満を感じないくらいの速さがあります。自分と同世代の方々に、自信を持ってお奨めできるモデルですね。139万7,000円という価格設定も魅力的です。
鈴鹿サーキットの走行で、スポーツ、スタンダード、レイン、ユーザーの4つから選べるライディングモードは一番適したスポーツだけしか試しませんでしたが、HAWAK 11の走りのバランスの良さを公道というステージにて試してみたくなりました。その時が待ち遠しいですね!
【文/宮﨑健太郎(外部ライター)】