無骨で流麗、ワイルドでセクシー。そんな“二律背反”ともいえる要素を両立させ、日本はもちろん、いまや世界中で愛されるブーツブランド『ローリングダブトリオ』。
自社ファクトリーを持ち、熟練した職人の手仕事で作られるローリングダブトリオのブーツは、バイカー、ワーカーはもちろん、ファッショニスタにも愛用者が多く、ファッション業界で熱い視線を注がれている。
一見すると、共通点があまりないように思われる「ブーツ作り」と「バイク開発」。今回は、両者の根底に息づく“クラフトマンシップ”に光を当てる。
プロダクトに最も必要な要素、それは「カッコよさ」。
若かりし頃からバイクに乗り、自らの手で一台組み上げてしまうほどのバイク好きで知られる、ローリングダブトリオ代表・徳永勝也さん。
江戸時代から履物の聖地と知られ、ローリングダブトリオの本拠地でもある東京・浅草にHAWK 11を持っていき、徳永さんに見てもらうことに。
開口一番、徳永さんは感嘆の声を上げた。
「すごくバランスの取れたデザインですね、カッコいい!」
徳永さんがローリングダブトリオを立ち上げたのは2007年のこと。「靴はセクシーでなければならない」をポリシーに、幾多の名作を生み出してきた。
「靴には、履き心地や歩き心地などいろんな性能が要求されますが、一番大切なのは『カッコいいこと』、これに尽きます。カッコ悪い靴なんて、履きたくないじゃないですか。バイクだって同じ。どんなに速くても乗り味が楽しくても、色気のないカッコ悪いバイクには乗りたくない」
跨ったりエンジンを覗き込んだり、様々な角度からHAWK 11をチェックする徳永さん。
「バイクの“顔”は、正面とは限らないと思うんです。後ろからのスタイルとか、少し下からの角度がカッコいいとか。靴も同じです。それぞれ、いちばん美しい角度があるんです」
徳永さんから見て、HAWK 11の気になるポイントは?と聞くと、「ロケットカウルですね」と即答した。
「ロケットカウルを付けたHondaの心意気に、拍手を送りたいですね。幅広く、万人に受けるものではなく、『こういう人に乗ってもらいたい』という想いが感じられるプロダクトには“魂”を感じます。僕が靴をデザインする時も、いつも『どういう人に履いてもらいたいか』を意識していますね」
「同じエンジン」で作るということ
アフリカツインのエンジンとフレームに、ロケットカウルを組み合わせて作られているHAWK 11。このことに話が及ぶと、徳永さんは靴作りを例に挙げて、熱っぽく語ってくれた。
「靴を作る際、そのデザインのベースとなる “木型”を使います。その木型に沿って、靴作りがスタートするわけです。同じ木型を使って、異なるモデルを作ることもあります。例えば、サイドジップのキャスパーと、編み上げのコペンというモデルは、同じ木型、同じ製法を使って作られています。
こうした制約の中でモノを作るということは、口で言うほど簡単ではないんです。アフリカツインと同じエンジン・フレームでHAWK 11を開発したわけですよね? これはすごいことだと思います。悪路を走るアフリカツインと、オンロード用のHAWK 11、この両極にあるモデルを作ってしまう……これは、キャスパーの木型でマウンテンブーツを作るようなもの。僕にはできません(笑)」
所有欲を満たす仕掛けが、HAWK 11には散りばめられている。
HAWK 11に跨ってライディングポジションを取り、じっと何かを見つめる徳永さん。その視線の先には、ミラーステーあった。
「このミラーステーやヘッドライトステーは、バイクを操縦するライダーにしか見えない箇所じゃないですか。ライダーにしか、自分にしかわからないポイントって、嬉しいですよね。所有欲を満たしてくれます。僕も靴を作る際に、自分にしかわからないドキドキするポイントを織り込むんです。そんなポイントが、HAWK 11にはたくさんあります。例えばロケットカウル裏のFRPのざらつき。メーカーの人はあまり見られたくない箇所かもしれませんが(笑)、僕にはすごく愛おしいんです」
HAWK 11を前に、いろいろと興味深い話を聞かせてくれた徳永さん。
ブーツとバイク、プロダクトの違いはあれど、モノ作りという観点においては、実は共通点も多い。モノ作りに対する熱き想いがあれば、プロダクトの垣根など、いとも簡単に乗り越えてしまうのだ。
ローリングダブトリオのブーツを履いて、HAWK 11を駆る。
そんな贅沢なバイクライフを愉しんでみてはいかがだろうか?
『月刊Lightning』編集部・ 小川高寛
浅草にある、ローリングダブトリオの直営ショップ『THE BOOT SHOP』。
東京都台東区花川戸2-2-6 EBISUビル1階
TEL:03-6802-8083