ひねって飛ぶ、かっこいい言い方は最後にお教えします!
みなさん、こんにちは
全日本モトクロス PRブース担当です。
今回は、モトクロスのジャンプの中でも高等テクニックである、空中でひねりを加えて飛ぶ動作について解説・・・する前に、そもそも「なんでひねって飛ぶの?」という所から、お話しましょう。
ライダーはジャンプしたくない?!
モトクロスレースにおいて、ジャンプの際に求められることはなんでしょうか?
まずは、Honda Dream Racing Bells 大城 魁之輔選手の見事なジャンプをご覧ください。
今のモトクロッサーは非常に性能が高いので、誰でも(度胸さえあれば…)これくらいのジャンプを「飛んでしまう」事はできます。
が、しかし、これはレース。
『空中に居る時間はロス』という観点で、見てみましょう。
大城選手が飛ぶ瞬間、バイクを下方向に逃がしつつ、前に送りだすような動作をしていませんか?
こうする事で、少しでも低く飛び、一刻も早く着地して、加速する、これを積み重ね、レースを戦っています。
以前、IA1クラス 20年シーズンチャンピオン 山本 鯨選手もインタビューで、
「空中にいる時は、一刻も早く着地したいと常に思っています」と語っていました。
スピードが乗れば、高く遠くへジャンプせざるを得ない、でも低く飛ぶためにスピードを殺したら遅い…
この二律背反と戦っているうちに、ある方法が生み出されました。
バネの力を横に逃がせないか?
モトクロッサーのサスペンションには大きなジャンプの着地に耐えられるように、ストロークの長い、強力なバネが組み込まれています。
ジャンプ台に侵入すると、バネは押し縮められ、ジャンプする時に「びよ~ん」と上方向に伸びます。
その力をどこかに逃がしたい…。先ほど申し上げた通り、もうライダーの身体で逃がせる場所はありません。
そこで『横』に逃がす事にしました。
そう、ジャンプする瞬間に車体が傾いていれば、バネが伸びる力の一部は地面に伝わらないので、低く飛ぶ事ができます!
クラスも車両も違うので、一概には比べられませんが、山本選手のジャンプの方が勢いがあるにも関わらず、低く飛んでいるのが分かりましたか?!
こうして、一秒でも速く走る為に、ライダーはひねって飛んでいるのです。
でも、全員がひねって飛んでないのはなぜ?
そう、思ったあなた、鋭いです!
全日本モトクロスレースを見ていても、ひねって飛んでいるライダーと、まっすぐ飛んでいるライダーが混ざっている場合があります。
こうして、同じ場所のジャンプを見てみると、ひねるライダー、ひねらないライダー、右にひねるライダー、左にひねるライダー、色々いるようです。
ひねらない理由にはいろいろとありますので、挙げていきますと…
①テクニックとリスク
最初に「高等テクニック」と書いた通り、ひねって飛ぶのは高度なジャンプテクニックを要求されます。
当然、失敗した場合は転倒する事もあるので、敢えてリスクを取らずにまっすぐ飛ぶ選手もいます。
②着地の路面状況と加速体制
まっすぐ飛んでいないという事は、着地をまっすぐに合わせる為に車体を戻さないといけません。
特にレース中に着地ポイントが荒れている場合、しっかりとまっすぐ降りないと転倒のリスクがあります。
そして、着地した後にすぐに加速する必要がある為に、下手に斜めを向いたまま着地するよりも、まっすぐに飛んで、しっかり降りて、一刻も早く加速する方が、ライバルと競っている時は有利な場合もあります。
③他のライダーとの兼ね合い
レースですので、飛ぶ時にライバルが並んでいる場合もあります。
ひねって飛ぶという事は、横に広がる事になるので隣のライダーに接触してしまう事もあり、それを避けるためにまっすぐ飛ぶを選ぶ事もあります。
④体力不足
とにかく体力を消耗するモトクロスのレース、ひねる動作をする事で、更に疲れます。
そのため、体力に自信がないライダーはタイムを削る為に、ひねらずに体力の消耗を抑える様に走る場合もあります。
モトクロスは、路面状況が刻々と変わる競技なので、ジャンプの着地点の路面変化など色々な条件が重なって、ひねったり、ひねらなかったりするんですね。
【ウイップ】と【スクラブ】
「ひねって飛ぶ」飛び方は大きく分けて2つの呼び名があります。
モトクロス関係者に聞いても、明確な線引きはないようですので、私が思う、ウイップとスクラブの違いをお伝えします。
大きなジャンプで一発大きくひねる【ウイップ】

こんなカメラ目線で大きくひねるのは「ウイップ」。大きくリードした選手がフィニッシュジャンプで見せてくれるとかっこいいです!
フリースタイルモトクロスに、ウイップコンテストなんて種目がある様に、大きなジャンプで大きく車体を振るテクニックを「ウイップ」と呼ぶ事が多いようです。
低いジャンプを舐めるように低く飛ぶ【スクラブ】
ウイップが“魅せ”要素の大きいジャンプであるのとは対照的に、スクラブはタイムを削る為に「少しでも速く走りたい」という気持ちがあふれている走り方だと思います。

大城選手の「スクラブ」。ジャンプ直前にバイクをひねって車体全体が斜めに傾いた状態ですが、バイクはまっすぐ進んでいます。 どうして元に戻れるのか…できるようにならないと説明が付きませんね。
スクラブの得意なライダーは、ジャンプ台の「リップ」と呼ばれる飛び出し口に、ステップをこすりつけながらジャンプしていく事もあります。
ただ飛ぶだけでも心臓バクバクなのに、ジャンプ台の前でほぼ「転倒」しているくらいに車体を倒して飛ぶなんて…モトクロスライダーは本当に超人です。

世界チャンピオンのティム・ガイザー選手のスクラブ。ジャンプ台を舐めるように低く飛んでいますね。
いかがでしたか?
全日本モトクロスを観戦する際には、ウイップやスクラブを得意とする選手を探してみるのも、面白いかもしれませんね!
全日本モトクロスは少し長い夏休みですが、Hondaサポートライダー達は次戦、名阪スポーツランドで開催される全日本モトクロス第5戦 近畿大会に向け、テクニックを磨いています。
もちろん、かっこいいジャンプも披露してくれるでしょう!
みなさん、Hondaライダーへの応援、よろしくお願いいたします!