こんにちは、Honda モトクロスPR担当です。
今回は全日本モトクロスのスタート直前に見られる、ライダーとメカニックによる「儀式」について紹介いたします。
『儀式』に必要な装備、その名は【ホールショットデバイス】
直訳すると「スタートで一番取る装置」
そう、スタートでライバルの前に出るためにつけている装備になります。
【注:レースにおいて、1番に第1コーナーに侵入することを「ホールショット」といいます】
最近では、MotoGPでも使用されているようですが、モトクロスでは2002年ごろから装着車が増え始め、今は全日本レベルではほとんどのライダーがつけている装置になります。

後ろ側の輪っか部分をフロントフォークに取り付け、前のボタンのような部分をフォークガードに取り付けます。
何のために取り付ける?!
一言でいえば「フロントフォークの動きを制限して、無駄に動かないようにする」ための装置です。
モトクロッサーのフロントサスペンションは、大きなジャンプに耐えるため、フロントフォークが大きく動きます。
でこぼこの道を走ったり、ジャンプで着地する分には非常に役立つ、この動きがスタートの時は、邪魔になります。
簡単に言うと、車体が無駄に動かないことで・・・
①リヤタイヤに力を集中させて、路面を強く引っかく力を強くなる
②フロントがふわふわしないので、アクセルに集中できる
結果「ライバルより早く前に出ることができる」わけです。
どうやってセットする?!
ホールショットデバイスは2つのパーツに分かれます。
上側のフロントフォークに取り付ける「引っかかる側」と、下側に取り付ける「プッシュピンが出る側」の2種類です。
普段は、ご覧の通り2つのパーツは離れています。

SHOWAロゴの下にあるのが「ひっかかる側」、白いフォークガードの真ん中右側にある銀色の部分がプッシュピンです。
スタート前に、フロントフォークを縮ませて、ピンを押し出すことにより、フロントフォークが短く縮まったまま固定されます。

SHOWAロゴの下にあるデバイスと、白いフォークガードの右側にあるセットピンが、合体して、フォーク自体が押し縮められているのがわかりますか?
作動の様子をまとめると、こんな感じです。
先日の練習会で、スタート練習を繰り返していた、Bells Racing 柳瀬大河選手が
デバイスを取り付ける際の動画をご覧ください。
このように、ライダーはブレーキを握ってフォークを下に押し付ける、
メカニックはハンドルを押し下げると同時にピンを押し、デバイスをセットします。
2人の息が合わないと、4,5回入らなくて疲れてしまう、、、なんてこともあります。
どうやって外れるの?!
ホールショットデバイスがセットされた状態でスタートすると、先ほども言いましたがフロントフォークは動きを制限され、伸びません。
そのまま、1コーナーに侵入、、、、
①ブレーキを強くかける
②フロントフォークが限界まで下がる
③デバイスが引っかかっている位置より下がると、デバイスのピンが外れる
④通常のサスペンションストロークに戻り、ジャンプが可能になる。
と、なります。
もし、外れなかったら?
きちんとサスペンションセッティングされた状態であれば、外れないことはまずありません。
それでも、何らかの理由(ゴミが噛んで外れない、強いブレーキが掛けられない等)で外れない場合は、ゆっくり走ってジャンプでサスペンションを縮めるか、ブレーキを強くかけて外すしかありません。
もちろん、こんなことをしていたらライバルは遥か遠くへ行ってしまいます。
私は5年間全日本モトクロスの担当をしておりますが、外れない車両を見たのはたったの1度だけ、トップレベルのライダーがなぜかペースが上がらず下位に沈んでいた原因が「デバイスが外れない」でした。
スタート前のデバイスセットから見えること
全日本モトクロス選手権のスタート前、ライダーがスタートゲートに入る時にデバイスをセットします、
この時、デバイスの取り付け位置が高い=より縮めないとセットできない、ライダーは、メカニックと2人がかりで全体重をかけてセット。
逆に低い=ほとんど縮めないでもOKなライダーは、一人でセットできる事もあります。
【参考】セットが低いライダーとして、IB-OPENで活躍中の大塚貴斗選手のセットは、こんなにあっさり、、、
スタートゲートの後ろ側で行われる、ライダーとメカニックの動きも全日本モトクロス観戦のみどころの一つです。
HondaGOバイクラボでは、全日本モトクロス観戦のみどころを紹介していますので、他の記事もぜひご覧ください。
全日本モトクロス選手権 次戦のご案内
9月11日、12日に開催予定でした全日本モトクロス選手権 第5戦近畿大会は延期となってしまいました。
次の開催予定は、10月9日(土)、10日(日)、熊本県HSR九州で開催されます全日本モトクロス選手権 第6戦HSR九州大会となります。
CRFシリーズの生産されているHonda熊本工場の敷地内にある、まさに「CRFの生まれ故郷」で行われるレースになりますので、Hondaライダーの応援をよろしくお願いいたします!
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